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美しく凄絶な第4番!!シベリウス・ツィクルス②:カム&ラハティ響@オペラシティコンサートホール 2015.11.27

音楽は不可思議なものです。人間の成せる業なので、それも当然なのかも知れず、それが音楽の持つ魅力なのでしょう。何故、こんな謎めいたことを書くかと言えば、昨日から今日への演奏の精度と質の変化=向上が甚だしいからです。昨日はちょっと抑えて書きましたが、最初に演奏された交響曲第1番はかなりひどいアンサンブルで言っては悪いですが、田舎の下手なオーケストラという感じだったんです。それが昨日の後半の第2番では、フィルハーモニア管弦楽団に近いレベルの演奏になり、今日の前半の第3番では、ヨーロッパの1流オーケストラと肩を並べ、後半の第4番では天下のウィーン・フィルやベルリン・フィルでもこんなシベリウスは演奏できまいというパーフェクトな演奏レベルまで駆け上がったんです。これって何?

今回のツィクルスでsaraiが一番期待していたのは実は今日のプログラムでした。なかでも交響曲第4番はsarai的にはシベリウスの芸術の頂点だと考えており、もしかしたら、凄い演奏を聴かせてくれるんじゃないかと密かに期待していました。そして、実際、凄い演奏でした。第1楽章、チェロで始まる暗い音楽がその皮切りです。チェロの独奏も美しく沈み込んだ響きです。暗い想念に満ちた音楽が連綿と続きます。暗いのですが、美しい音楽でもあります。そして、シベリウスの内面をさらけ出すような音楽は聴く者の心に迫ってきます。きれいごとの音楽ではなく、矛盾をはらんだ人間性に根差した音楽です。カムはそのあたりを見事に表出させていきます。カムの指揮に応えるラハティ交響楽団の美しさとインパクトを兼ね備えた響きの素晴らしさは超絶的とも言えます。低弦の迫力ある響き、高弦の澄み切った響き、そして、特筆したいのは木管の素晴らしさです。昨日と同じメンバーの演奏とは到底思えません。超1流オーケストラに拮抗する演奏です。
こういう素晴らしい演奏を聴いていると、難解である筈のこの音楽がするっと心にはいってきます。人間の苦悩や束の間の心の安寧が共感を持って、受け入れられます。第1楽章と第2楽章は切れ目なく演奏されましたが、カムのこの表現はとてもよいと思います。暗い想念に満ちた第1楽章と明るさを取り戻した第2楽章は違和感を感じるものですが、続けて演奏すると、第2楽章の前半の束の間の安寧は続く暗い想念へのほんの休息だったことがよく分かります。
この交響曲第4番の最高の聴きどころは長大な第3楽章です。カム&ラハティ交響楽団の演奏は最高でした。基本的に美しい響きなのですが、シベリウスの心の独白が綿々と綴られ、色んな感情に揺さぶられる心情の吐露が見事に表現されます。よく解説でこの楽章を牧歌的と表現する評論家の方がいますが、一体、どこが牧歌的でしょう。シベリウスがほとんど唯一と言っていい自己の内面を曝け出した深い精神性のドラマです。ある意味、このとき、シベリウスは音楽的に相容れなかったマーラーの音楽に最も近づいたときでもあります。誤解を恐れずに言えば、シベリウスはこの第4番の音楽の方向性を極め、精神性の高い音楽を創り上げていけば、真の大芸術家に成り得たと思います。シベリウスの音楽の価値を批判しているわけではありませんが、シベリウスは美しい音楽を書いた音楽家であって、ベートーヴェン的な意味で重い精神性を高め上げた芸術家ではなかったというのがsaraiの偽ざる意見です。そして、唯一の例外がこの第4番だと思います。そういう意味でこの作品はベートーヴェン的な意味で高い芸術性の作品だと思います。その深い精神性を湛えた第3楽章をカム&ラハティ交響楽団は見事に演奏しました。終盤盛り上がるところは慟哭にも思え、saraiは感動してしまいました。そして、切れ目なしに第4楽章に移ります。アイロニーにも満ちた第4楽章も第3楽章と合体することで、意味するところが違ってきます。第3楽章の内面性・精神性のエピローグのように感じます。ここでもラハティ交響楽団の精度の高い演奏は続きます。美しいフィナーレまで完璧な表現でシベリウスの最高傑作の最高の演奏が聴けました。CDで聴くベルグルンドの3種の演奏がこれまでの最高の演奏だと思っていましたが、はるかに凌駕する演奏に驚愕しました。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:オッコー・カム
  ヴァイオリン:ペッテリ・イーヴォネン
  管弦楽:ラハティ交響楽団


  シベリウス: 交響曲第3番 ハ長調 op.52
  シベリウス: ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47
   《ソリストアンコール》
     イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 op.27-3《バラード》


   《休憩》

  シベリウス: 交響曲第4番 イ短調 op.63

   《アンコール》

  シベリウス: 悲しきワルツ op.44-1
         ミュゼット(組曲「クリスティアン2世」op.27 より)
         鶴のいる風景 op44-2

第4番以外の演奏にも軽く触れておきましょう。

最初に演奏された交響曲第3番は素晴らしく美しい演奏。ベルグルンドのヨーロッパ室内管弦楽団に肉薄する高いレベルの演奏でした。

ヴァイオリン協奏曲は若手ヴァイオリニストのイーヴォネンの活き活きした演奏が素晴らしいものでした。ラハティ交響楽団の演奏も見事でした。CDに録音されたカヴァコス+ヴァンスカ&ラハティ交響楽団の演奏を彷彿させる演奏です。イーヴォネンの今後に期待しましょう。

最後のアンコールは今日も素晴らしいものばかり。《悲しきワルツ》は今年聴いたサロネン&フィルハーモニア管弦楽団の最高の演奏を上回ったかもしれません。

明後日のラストコンサートは最後の3つの交響曲を聴きますが、この勢いで突き進みそうです。シベリウス・ツィクルスと言うよりも、シベリウス・フェスティバルという態を奏してきました。楽しみは倍化します。アンコールも楽しみです。最後は《フィンランディア》でしょうね。


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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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aokazuyaさん

コメントありがとうございます。デジタルコンサートホールは当面、これきりですが、毎週末、聴かれているんですね。ファゴットのシュテファン・シュヴァイゲ

03/03 23:32 sarai

DCHは私も毎週末、楽しみに聞いています。
・スーパースターには、ファゴットのシュテファン・シュヴァイゲルトの名も挙げたいところです。
・清水直子さん後半のみ登場、D

03/01 19:22 aokazuya

金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai
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