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感動の第9番、ティーレマン+ウィーン・フィル:ベートーヴェン・チクルス④@サントリーホール 2013.11.17

ベートーヴェン交響曲チクルス4日目です。期待を上回る空前絶後のチクルスが完了し、満足と感謝の気持ちで一杯です。

第9番、やはり、素晴らしかった。第3楽章のしみじみとした風情に心がピュアーになり、第4楽章は何度も感動の大波に襲われました。それでも、まだ、ティーレマンは余力を残していると感じました。大変なポテンシャルを持った天才指揮者です。彼はまだ、さらなる高みに上っていくことが予感されます。しかし、saraiはこれでベートーヴェンは完了してもいいと満足の境地です。万全の予習をして、その努力に対して、素晴らしい贈り物をいただいたという感覚です。音楽・演奏に完璧など、ありようもないのですが、今回のチクルスはあえて、完璧と評価してもいいと思っています。奇数番号の交響曲はすべて、感動がありました。偶数番号(第1番も含めて)の交響曲はすべて感銘を受けました。つまり、4日間とも、すべて、感動と感銘の毎日だったということです。これは完璧と言ってもいいのではないでしょうか。些細な技術的ミスはまったく気にしない性質なので、ティーレマンウィーン・フィル(殊更、コンサートマスターのライナー・キュッヒル)が何を表現しようとして、どう達成したか、その芸術性、精神性のみを受けとめたいと思います。もう、これ以上のものは今後聴くことはないでしょうし、その必要もないほどの満足感です。
その上で、今回のチクルスの最高の演奏と感じたのは、自分でも驚くことに、チクルス2日目の交響曲第5番ハ短調《運命》です。50年目の邂逅と銘打ちましたが、初めて、クラシック音楽をちゃんと聴いたのが50年前に聴いた《運命》。その環が閉じたような思いに駆られています。この演奏だけは、決して、今後とも、ティーレマンが超えることはないでしょう。奇跡のような音楽でした。熟成して、どうにかなるような類の音楽ではありませんでした。

さて、今日のコンサートに話を戻しましょう。

今日のプログラムは以下です。

指揮:クリスティアン・ティーレマン
管弦楽:ウィーン・フィル

ベートーヴェン交響曲チクルス第4日

第8番ヘ長調Op.93

《休憩》

第9番ニ短調Op.125《合唱付》

今日の演奏について、軽くおさらいしておきます。

まず、第8番です。

この第8番は、ある意味、今回のチクルスで一番、感銘が小さかったというのが正直なところです。素晴らしい演奏でしたが、このチクルスでは、ほかの曲はもっと素晴らしかったという感じ。もっと、素晴らしい演奏ができたのではという感じが残りました。どこにも不満はないのですが、もっと、強烈なインパクトが欲しかったという贅沢な感想です。もちろん、第4楽章などはぞくぞくするほどのワクワク感はありました。ウィーン・フィルの美しい響きが聴けただけでよしとしないといけませんが、ティーレマンの強力な押しが欲しかった・・・

次は、第9番です。

第1楽章、堂々とした音楽。けれども、ここでは感動にまでは至れません。

第2楽章、重厚なスケルツォ。ここでも感動にまでは至れません。

第3楽章、何という深く、しみじみとした音楽でしょう。こういう響きはウィーン・フィルの独壇場です。心に響いてきて、様々な思いに駆られます。その思いに対して、この音楽が優しく、すべてを包み込んで、それでよかったんだよと語りかけてくれます。心の平安です。そして、希望、生きる力を与えてくれます。ベートーヴェンは天才ですが、それでいてヒューマンさを併せ持っています。この楽章は人間が創造した最高のものです。

第4楽章、ともかく、ウィーン楽友協会合唱団が素晴らしい。この第9番を初演した団体はその伝統を引き継いでいるのでしょう。大変な実力を持っています。ウィーン・フィルの後ろに立っているのに、オーケストラの音響を突き抜けて、素晴らしいコーラスが響いてきます。管弦楽のフガートの後、歓喜の主題が高らかに歌われると、感動の大波に襲われました。2度目の感動の大波はソプラノ合唱に導かれた2重フーガの合唱です。清らかにして、力強い、その合唱は何という高みに連れていってくれるのでしょう。最後の大波はもちろん、フィナーレ。最後の4重唱が終わった後の管弦楽と合唱の上り詰めていく力の凄まじさ。もう、たまりません。

これでチクルス完了。最後にえりちゃさんに謝辞。こんな素晴らしいチクルスのチケットをシベリア上空にいたsaraiに代わって、予約してくれたこと、感謝しても、しきれません。その価値はえりちゃさん、ご自身が一番、お分かりでしょう。何といっても、4日間、隣り合った席で感動を分かち合ったのですからね。

最後の最後ですが、今日の2曲の予習について、リンクを張っておきます。何かのご参考になればと思います。なお、第9番については、最後の予習で、フルトヴェングラーの戦後のCDを2枚追加して聴きました。その感想も付け加えました。最晩年(1954年)のバイロイト音楽祭は音は最低ですが、演奏は最高でした。

交響曲第8番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第9番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここに書きました。



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この記事へのコメント

1, michelangeloさん 2013/11/18 00:37
sarai様

感動のレポート、心待ちにしていました。海外でもティーレマン氏の実演に沢山触れられるsarai様のベートーヴェン・ツィクルス、最後の最後まで目が離せず楽しみにしていました。

私はミューザ川崎にて1日早く聴いて参りましたが、第8番にしても第9番にしても非常に似通った印象を持っております。ホールも日時も、違うことを承知の上で。今回とても興味深かったのは、ティーレマン氏のアイデンティティーが色濃く滲み出る日と、ウィーン・フィルが強く姿を現す日があったこと。

熱気に包まれた開場ですれ違うことが出来ませんでしたが、同じ日・同じ時に交響曲第5番ハ短調《運命》の奇跡に遭遇できたこと、人生最大のギフトだと思っています。大変貴重なベートーヴェン・ツィクルス体験談を語って下さり、感謝致しております。ありがとう御座います。

2, saraiさん 2013/11/18 02:02
michelangeloさん、こんばんは。

まだ、音楽を聴き始めて、そんなに日が経たないのに、非常な慧眼には頭が下がります。おっしゃる通り、ティーレマンはウィーン・フィルの自律性に委ねるときと、ティーレマン節を奏でる場合が極端ではありましたね。それだけ、ティーレマンがそれぞれの音楽を鋭敏に描き分けようとしていたのでしょう。全般に奇数番号は彼の強い意志が働いていたように感じました。ある意味、フルトヴェングラー的でしょうか。
そうですか。第5番に共鳴したのですね。今、思っても、あの第5番は身震いします。ブログ読了、ありがとうございました。
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       ティーレマン,        ウィーン・フィル,

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