快演!ブルックナー7番byラトル+ベルリン・フィル@ウィーン・コンツェルトハウス 2013.6.3
そして、超ド級とも言っていいブルックナーを聴くことになりました。音楽との出会いはそういうものでしょう。
実はsaraiは結構、ベルリン・フィルを低く評価し過ぎているきらいがあって、実際に自分の耳で生演奏に接してみて、驚いてみたりします。マーラーの交響曲第9番もそうでした。やはり、ベルリン・フィルは恐るべきオーケストラです。ウィーン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ管と肩を並べるアンサンブル力を持っています。
また、ラトルについても同じことが言えます。ラトルは日本では評価のあまり高くない指揮者ですが、ハイティンクと同様に大変な実力を持った指揮者です。日本では、正統的な指揮、すなわち、楽譜に忠実な指揮をする指揮者は好まれないように感じます。カリスマ的な指揮もsaraiは好きですが、あまり恣意的な演奏はせずに、その音楽の果実は聴衆の心・魂に委ねるタイプの指揮もsaraiは好きです。歳を重ねるとともに後者のタイプの指揮者に傾倒するようになってきました。ラトルの誠実な指揮もこれから注目していきましょう。
コンサート前半のブーレーズ、もちろん、ノン・トナールの音楽ですが、映画音楽でもノン・トナールの氾濫する今、素直に耳にはいってくる美しく、繊細な音楽です。また、こういう曲はベルリン・フィルが実力を発揮して、見事に演奏します。ノタシオンは12曲からなるピアノ曲集だそうですが、そのなかから、5曲が組曲のようにオーケストラ曲になっています。全部で15分くらいの短い曲ですが、それぞれ、個性を持った曲から構成されます。最初のノタシオンⅠは音響の空間を形成するような色彩を帯びた曲で、武満にも通じる雰囲気を感じます。武満の空間の広がりに対して、凝縮感のある味わいです。ベルリン・フィルの冴え渡る響きにうっとりとしてしまいます。次のノタシオンⅦは捉えどころがなく、もうひとつ。saraiの感性には響いてきません。ノタシオンⅣはリズムのノリのよい曲です。ノン・トナールとなると抽象絵画を思わせるところもありますが、リズムは具象絵画の世界で、聴きやすい感じです。指揮のラトルの棒さばきも普通にリズムを刻んでいるように見えます。ノタシオンⅢは、ウーン・・・頭に残っていません。どんな曲だったんでしょうね? 最後のノタシオンⅡは激しいリズムと大音響でド派手な曲で、とても面白い。今や、トナーリティがなくたって、それもひとつのトナールのように聴けなくもない感じです。無調音楽の古典化ですね。ブーレーズの音楽を初めて、ちゃんと聴きましたが、なかなか面白く、心に響いてきます。これから、コンサートで聴ける機会も増えていくでしょう。
後半はトナール音楽の代表のような、後期ロマン派のブルックナーです。交響曲第7番はある意味、ブルックナーの音楽の頂点を極めたような音楽です。第8番、第9番はもう彼岸の音楽でしょう。
この第7番をこれ以上、美しく演奏できないほどに見事に演奏してくれました。何と言っても、響きの厚みが凄い。ずっしりと重低音がハーモニーの底で響いてきます。また、ラトルのテンポ感の自然なことも素晴らしい。まさに早過ぎず、遅過ぎず、このテンポしか、ありえないという感じです。だからと言って、退屈な演奏ではありません。細部まで磨き上げられた光沢に満ちた演奏、そして、全体の骨組みのきっちりした演奏。
このところ、この交響曲第7番は素晴らしい演奏を聴き続けています。まずは一昨年のプレートル指揮ウィーン・フィル。そして、昨年のティーレマン指揮シュターツカペレ・ドレスデン。いずれも圧倒的な演奏でしたが、今夜の演奏もそれらに匹敵する素晴らしい演奏でした。
音響的に言えば、今夜の演奏が最高でしょう。完璧な響きです。コンツェルトハウスの大ホールがベルリン・フィルの凄まじい大音響をしっかりと受け止めたことも大きいと感じます。
最後に、今日のプログラムをまとめておきます。
指揮:サイモン・ラトル
管弦楽:ベルリン・フィル
ブーレーズ:ノタシオン(オーケストラのための)
ノタシオンⅠ
ノタシオンⅦ
ノタシオンⅣ
ノタシオンⅢ
ノタシオンⅡ
《休憩》
ブルックナー:交響曲第7番ホ長調
今秋のベルリン・フィルの来日公演では、このプログラムが予定されています。必聴です! サントリー・ホールでどう響くのでしょうか?
↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね
いいね!

- 関連記事
-
- 最高のラブコメ!《メリー・ウィドウ》@ウィーン・フォルクスオーパー 2013.6.4
- 快演!ブルックナー7番byラトル+ベルリン・フィル@ウィーン・コンツェルトハウス 2013.6.3
- ガランチャの美し過ぎる?カルメン@ウィーン国立歌劇場 2013.6.2