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感動のドイツ・レクィエム・・・チェン・レイス&ノット&東響@ミューザ川崎シンフォニーホール 2016.4.23

期待して出かけたコンサートでしたが、その期待を大きく上回る演奏に大いに満足しました。そもそも、このコンサートはプログラムが素晴らしいんです。シェーンベルク、ベルクという新ウィーン楽派とその前の世代のブラームスのいずれも声楽作品を揃えた以下のプログラムです。

  指揮:ジョナサン・ノット
  ソプラノ:チェン・レイス
  バス・バリトン&語り:クレシミル・ストラジャナッツ
  混声合唱:東響コーラス
  管弦楽:東京交響楽団

  シェーンベルク:ワルシャワの生き残り
  ベルク:「ルル」組曲

   《休憩》

  ブラームス:ドイツ・レクイエム


この魅力的なプログラムを見て、くらくらっときたsaraiは即、チケット購入を決意しました。だって、ウィーンならともかく、日本でこんなプログラムありなのって感じですからね。それにおまけですが、美貌のソプラノのチェン・レイスの実力も聴いてみたくなりました。ルルとドイツ・レクィエムを歌うので実力が問われます。

で、今日の演奏ですが、まずは後半のブラームスのドイツ・レクイエムの出来が最高に素晴らしく、第6曲の後半で盛り上がるところでは感動一歩手前までいきました。その前の第5曲ではソプラノのチェン・レイスはその美貌だけでなく、歌唱の素晴らしさでも感銘させてくれました。往年のアメリカ出身で早逝したアーリーン・オジェーの最高の美声に迫るような潤いのある歌声です。ちなみにsaraiは生で聴くことのできなかったアーリーン・オジェーにはまりかかっているところです。R・シュトラウスの《4つの最後の歌》とか、このブラームスのドイツ・レクイエムとかは最高に素晴らしいです。そのアーリーン・オジェーの最高の美声を彷彿とさせてくれたのが今日のチェン・レイスです。ところでチェン・レイスはイスラエル出身の歌手で主にウィーンで活躍しているようですが、Chen Reissと綴ります。10月のサントリーホール30周年記念ガラコンサートにもウィーン・フィルとともに舞台に立つようですが、そのパンフレットには、チェン・レイスではなく、ヘン・ライスと表記されています。日本での表記は統一してもらいたいものです。実は後で書きますが、彼女とお話しする機会があったので、どちらの表記がより正しいのか伺えばよかったと今頃、悔やんでいます。
ともあれ、ドイツ・レクイエムは第7曲もうっとりするような美しい演奏ですっかり聴き惚れてしまいました。バリトンのクレシミル・ストラジャナッツも美声を聴かせてくれましたし、東響コーラスは若干、もう少し迫力があればとも思いましたが、素晴らしく美しい歌唱を聴かせてくれたことは間違いありません。よほど、指揮者のジョナサン・ノットがこの曲をしっかりと仕上げたのでしょう。大変、満足しました。
実はドイツ・レクイエムは生で聴くのは初めてなので、力を入れて、予習に励みました。聴いたCDは以下です。

 1948年 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団・合唱団、ケルスティン・リンドベリ=トールリント(S)、ベルンハルト・ゼンナーシュテット(B)
 1951年 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウィーン交響楽団、ウィーン・ジンクアカデミー、イルムガルト・ゼーフリート、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
 1958年 オットー・クレンペラー指揮ウィーン・フィル、楽友協会合唱団、ヴィルマ・リップ、エバーハルト・ヴェヒター
 1961年 オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団・合唱団、エリーザベト・シュヴァルツコップ(s)、ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ(br)
 1978年 ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団・合唱団、エディト・マティス、ヴォルフガング・ブレンデル
 1980年 ベルナルト・ハイティンク指揮ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場合唱団、グンドゥラ・ヤノヴィッツ、トム・クラウゼ
 1981年 セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル、同合唱団、ミュンヘン・バッハ合唱団員、アーリン・オジェー、フランツ・ゲリーセン
 1987年 カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場合唱団、バーバラ・ボニー、アンドレアス・シュミット

フルトヴェングラーの2枚とクレンペラーの旧盤がモノラルです。また、1951年のフルトヴェングラーは第1,3,4,5楽章のみの演奏です。この中で1枚選ぶのなら、やはり、クレンペラーの2枚のうちのどちらかになりますね。全体的にはウィーン・フィルのほうがモノラルながら音質も素晴らしく、音楽的にはよいのですが、やはり、歌手の魅力でフィルハーモニア管を選ぶことになりそうです。ジュリーニ&ウィーン・フィルもバーバラ・ボニーの素晴らしい歌唱もあり、よいのですが、前述のとおり、ソプラノ歌手で選ぶなら、アーリン・オジェーが歌ったチェリビダッケ&ミュンヘン・フィルも魅力があります。実は聴いた8枚はすべて素晴らしかったので、もっと聴きたいところです。とりあえず、ケーゲル指揮ライプツィヒ放送交響楽団のCDが出番待ちの状態です。

さて、順番が逆になりましたが、前半の新ウィーン楽派の2曲にも触れておきましょう。特にシェーンベルクの《ワルシャワの生き残り》が出色の出来でした。あまり、聴き込んでいない曲なんですが、パーフェクトとも思える演奏でした。ホロコーストを題材にした曲ですが、今日のプログラム解説には、シェーンベルク本人が「我々の時代を美学的・音楽的に表したもの」と語っており、語り手が情景を描写する単なるメロドラマなどではないと断じていました。そこでsaraiもあえて、凄惨なナチスのユダヤ人収容所の状況を語るシュプレッヒシュテンメの内容よりも音楽美に重点を置いて鑑賞しました。今日的にも先鋭な音楽ですが、その時代の限界状況を音楽で描いた作品は既に古典としての美しさにもあふれています。終盤の激しい一撃の後の男性合唱の迫力には身震いしてしまいました。シェーンベルクの声楽作品は素晴らしいです。それにやはり、指揮のジョナサン・ノットは現代音楽(シェーンベルクはもう古典ですが)にその手腕が活きるようです。

今日のコンサートでの問題なのがその後に演奏されたベルクの「ルル」組曲 です。演奏は悪くはなかったんです。実際、とても楽しんで聴けました。しかし、昨年、アムステルダムのネーデルランドオペラで凄いオペラ版の「ルル」を聴きましたから、どうしても比較して聴いてしまいます。何せ、そのときのオーケストラはロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団だったんです。厚みのある響きとベルクの《ウィーンの熱》を感じさせる究極のオーケストラ演奏でした。これに対抗できそうな演奏があるとすれば、多分、ウィーン・フィルくらいでしょう。それでも対抗できるかどうか分からないほどの凄みのある演奏でした。今日の東京交響楽団の演奏はすっきりとした美しい演奏で、これはこれで評価できる演奏ではありました。でも、これがベルクかと言うと、何か違和感を感じます。なんだか日本人的な感性によるベルクなんです。ヨーロッパ的に演奏されるベルクはもっとねっとりとした熱を帯びています。話は飛びますが、都響でマーラーの名演を聴かせてくれたベルティーニが都響のマーラーを評して、「日本人的感性のマーラー」と語ったことを思い出します。間違っているかもしれませんが、今日のベルクを聴いて、これがそのことかと思い至りました。一言で言えば、実にきちんと揃ってはいるけれどもおとなしい演奏なんです。演奏者個々の自己主張を抑えて、チームプレーに徹した演奏です。ヨーロッパのオーケストラはその点、個々の自己主張を展開する中でハーモニーを形成するという感じで、悪ければ、ハーモニー崩壊の危険もありますが、スリリングでぎりぎりの演奏で面白く聴けるものです。もちろん、オーケストラは指揮者が鼓舞しますから、カリスマ的な指揮者が振れば、状況は変わりますが、少なくとも、今日のベルクは美しいけれども内面的なテンションの低い演奏に聴こえました。まあ、失礼ながら、コンセルトヘボウと東響を比較してはいけないとは思いますけどね。これって、悪口ではなく、東響のテクニックは素晴らしく、あくまでも高いレベルの音楽表現の違いについての素人の感想なんです。ところで、ルルを歌ったのはソプラノのチェン・レイスですが、彼女は美貌という点でルルを歌う資質に恵まれています。真っ赤なドレスに赤い口紅でファム・ファタール風に装って、歌の表現も激しくて、ルルの雰囲気を醸し出していました。でも、saraiはそういうルルでもピュアーな声の響きを期待してしまいます。残念ながら、チェン・レイスのルルはsaraiの好みには合いませんでした。昨年聴いたエルトマンのピュアーな高音が忘れられません。
ということで今日の演奏の中では、ベルクの「ルル」組曲はもうひとつでした。面白く聴けましたけどね。

最後に、素晴らしかったドイツ・レクィエムを聴き終えて、コンサートホールのロビーを出ようとしたときのことをおまけにしましょう。
配偶者がトイレから出てくるのを待って、ロビーをうろうろしていると、何とCD販売コーナーにチェン・レイスのサイン会の文字があります。彼女の美貌と美声でにわかにファンになったsaraiです。心ときめくものがあります。販売スタッフのかたに「どこでサイン会をやるんですか?」って聞くと、彼の指差す先にはごく短い行列があります。いつもサイン会の長い行列を恨めしく眺めるsaraiですが、さすがに驚きます。「ええっ、あれだけしか並んでいないの!」って言うと、彼は苦笑するだけです。これはチャンスです。チェン・レイスが歌ったドイツ・レクィエム(ズビン・メータ指揮イスラエル・フィル)のCDを思わずつかんでしまいます。ところでこのCDで歌っている合唱団の名称はガリー・ベルティーニ・イスラエル合唱団でした。日本人にも懐かしい響きですね。
行列の最後尾、と言っても10数人しか並んでいませんが、ともかく並びます。結構、待たされましたが、美貌のチェン・レイスが現れます。行列はすぐに進んで、saraiの番になります。サインしてもらうCDを差し出して、彼女に話しかけます。「ウィーン国立歌劇場であなたの美しい声が聴きたいけど、来シーズンは何を歌うの?」。(ウィーン国立歌劇場のHPで彼女が来シーズン出演することは知っていました。)

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彼女は驚いたように「本当にウィーンまで来てくれるの?」。(ウィーンはsaraiのホームグラウンドですから、都合のつけようはあります。)

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「ウィーン国立歌劇場の来シーズンは・・・」って、固まってしまいます。あれあれ、すぐには思いだせないんだ。しばらく考えて「アルチーナのモルガーナ、アラベラのズデンカ、マルツェリーネ・・・フィデリオのね」。また、「本当にウィーンに来てくれるの?」。美しい目で見つめられると、「もちろん」としか言えません。

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すると「では、ウィーンで会いましょうね」って優しく微笑みながら、握手してくれました。舞台同様、実に表情の豊かなかたです。

美人と話ができて、上機嫌になったsaraiを配偶者が優しく見ていました。なお、携帯で写真を撮ってくれたのは配偶者です。ありがとう。

ところで、家に帰って調べると、確かにアルチーナとアラベラは合っていましたが、フォデリオはイスラエルでの公演の間違い。ウィーンでは、ヘンゼルとグレーテルのグレーテル役を歌うようです。行くなら、来年3月のアラベラがよさそうです。アラベラを歌うのはカミラ・ニュルンド、マンドリカはボー・スコウフスです。




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ジャンル : 音楽

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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai

まさにマーラー6番な状況です笑

04/11 17:51 kico

お互い、残念でしたね。今年でヨーロッパ遠征を終わりにする予定でしたが、悲劇的な状況になりました。天はまだ我に旅を続けよというご託宣を与えたのでしょうか。1年延期

04/11 03:13 sarai

以前にもコメントさせていただいた者です。来ましたね、楽友協会からのメール。私たちはとりあえず1年延期としましたが、どうでしょうね。困っている人が多い中贅沢な悩み

04/11 00:33 kico

お返事ありがとうございます。
本当に!私もレイルジェットや美術館の手配もしているので、祈るような気持ちです。

03/10 19:06 kico
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