fc2ブログ
 
  

レジス・パスキエ&金子陽子 デュオ・リサイタル@横浜上大岡ひまわりの郷 2016.5.15

音楽とは不思議なものです。今日のコンサートは本編の演奏よりも短いアンコール曲のほうが心に響いてきました。それも名も知らぬ作曲家の作品だったんです。アンコールの前にヴァイオリンのレジス・パスキエからアンコール曲についてのコメントがありました。それも彼自身の思い出話を含むもので、異例なことですね。その話をかいつまんで紹介しましょう。まずは聴衆は英語は分かるか、フランス語は分かるかという自明の問から始まります。もっともフランス人としては自明な問いかけではなかったのかも知れません。ゆっくりした英語で彼はさらに問いかけます。自分の音楽教師はナディア・ブーランジェだが、彼女のことをみなさんは知っていますか? 実はsaraiも初めて聞く名前だったのですが、ほとんどの聴衆も知らなかったようです。すると、パスキエは自分が小さな子供の頃にナディア・ブーランジェのもとをレナード・バーンスタインが訪れた思い出を語ります。ナディア・ブーランジェはそれほど著名な音楽教師だったことを言いたかったようです。実際、後で調べてみると彼女に師事した音楽家は実に多彩な顔触れです。特にピアソラへの影響が知られているようです。ともあれ、アンコール曲はそのナディア・ブーランジェの作った曲かと思っていると、そうではなく、彼女の妹のリリ・ブーランジェの短い作品だということで彼のお話は終わります。もちろん、saraiはその作曲家の名前も初耳です。
そのアンコール曲ですが、フォーレを思わせるようなフランスの香り高い音楽です。パスキエの演奏と言ったら、それまで本編で弾いていたウィーンの作曲家の作品とはうって変わって、実にナイーブな感覚の演奏です。思い入れの深い作品のようです。とても素晴らしい演奏にうっとりと聴き入ってしまいました。こういう演奏をするんだったら、本編もラヴェルとかドビュッシーとかフォーレとか言ったフランス音楽を聴かせてくれたらよかったのにと思ってしまいました。この作品を作曲したリリ・ブーランジェはとても才能に恵まれた作曲家で若くしてパリ音楽院で女性として初めてローマ大賞を受賞した人でしたが、幼い頃から臓器不全に冒されていて、24歳で夭折してしまったそうです。パスキエは日本の聴衆にこういう素晴らしい作曲家がいたことを紹介しようとしたんでしょう。素晴らしいアンコール曲の演奏に本編の演奏のとき以上に熱くなって拍手を送りました。きっと、パスキエはリリ・ブーランジェの姉のナディアから直伝でこの曲を学んだに違いありませんね。とてもよいものが聴けて、満足です。

肝心の本編の演奏ですが、モーツァルトもベートーヴェンも真面目できっちりした演奏で文句の付け所はありませんが、saraiとしてはもっと柔らかいウィーン風の演奏が好みです。シューベルトも同じ感想ですが、それでも、最後の幻想曲は名曲ですから、第2楽章の美しさには聴き入ってしまいました。それにしても幻想曲は演奏上、大変な難曲であることも分かりました。それに晩年のシューベルトはどれも長いですね。

今日のプログラムは以下です。

  ヴァイオリン:レジス・パスキエ
  ピアノ:金子陽子

  モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第41番 K.481
  ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第7番 Op.30-2

   《休憩》

  シューベルト:ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ 第1番 D.384
  シューベルト:幻想曲 D.934

  《アンコール》

  リリ・ブーランジェ:ヴァイオリンとピアノのための夜想曲 ヘ長調

実はレジス・パスキエの演奏はこの同じホールで5年ほど前に聴いています。そのときのブログの記事を読んでみると、まったく今日と同じような感想だったので思わず笑ってしまいました。やはり、フランスものがよいようです。それに硬質な演奏はバルトークにむいているようです。そのときの記事はここです。


↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!



関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

コメントの投稿

非公開コメント

人気ランキング投票、よろしくね
ページ移動
プロフィール

sarai

Author:sarai
首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

来訪者カウンター
CalendArchive
最新記事
カテゴリ
指揮者

ソプラノ

ピアニスト

ヴァイオリン

室内楽

演奏団体

リンク
Comment Balloon

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

もろともにあはれとおもへ山ざくら 花よりほか

通りすがりさん

コメント、ありがとうございます。正直、もう2年ほど前のコンサートなので、詳細は覚えておらず、自分の文章を信じるしかないのですが、生演奏とテレビで

05/13 23:47 sarai
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR