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トッパンホール室内楽フェスティバル:2日目@トッパンホール 2016.5.16

トッパンホールが15周年シーズンの特別企画として、6回にわたる室内楽フェスティバルを開催中です。ヴァイオリニストのクリスティアン・テツラフを中心にピアノのラルス・フォークト、妹のチェリストのターニャ・テツラフ、ヴィオラのレイチェル・ロバーツなどテツラフ・ファミリーを中心としたメンバーで、ブラームス、シューマン、シューベルトというロマン派の作曲家の作品を取り上げています。実はsaraiはまだ、彼らの演奏は聴いていなかったので、ちょうど良い機会なので聴いてみることにしました。6回のうちの3回、クリスティアン・テツラフを中心に聴いてみます。今日は室内楽フェスティバル自体は2回目ですが、saraiはこれが最初に聴くコンサートです。

今日のプログラムは以下です。

  ブラームス:チェロ・ソナタ第2番 ヘ長調 Op.99
     チェロ:ターニャ・テツラフ
     ピアノ:ラルス・フォークト

  シェーンベルク:浄められた夜 Op.4
     ヴァイオリン:クリスティアン・テツラフ
     ヴァイオリン:久保田 巧
     ヴィオラ:レイチェル・ロバーツ
     ヴィオラ:原 麻理子
     チェロ:ターニャ・テツラフ
     チェロ:マリー=エリザベート・ヘッカー


   《休憩》

  シューマン:ピアノ三重奏曲第1番 ニ短調 Op.63
     ヴァイオリン:クリスティアン・テツラフ
     チェロ:ターニャ・テツラフ
     ピアノ:ラルス・フォークト

最初はブラームスのチェロ・ソナタ第2番。saraiは耳馴染みのある曲ではありません。手持ちのCDで予習しておくことにします。フルニエかデュ・プレかビルスマかロストロポーヴィチですが、今回のコンサートのチェリストは女性なので、デュ・プレ&バレンボイムを聴くことにします。デュ・プレの演奏は女性と思えないくらいダイナミックで熱い演奏です。一方、今日のターニャ・テツラフは演奏はスケール感のあるものですが、アタックは柔らかくて、深々とした響きに満ちた演奏。とてもよい演奏に感じました。ややもすると、チェロは気迫だけが先走ってしまう演奏が多いのですが、彼女の演奏は知情意のバランスのとれた温かみのある演奏で、熱くなるべきところはしっかりと熱い演奏になっていて、気持ちよく聴けました。

次のシェーンベルクの《浄められた夜》はある意味、衝撃的な演奏。やはり、シェーンベルクは天才的な作曲家であったことを再認識させられました。まずは6人の弦楽器奏者がステージに現れるところでビックリします。リーダーのクリスティアン・テツラフ以外はすべて女性。それも色とりどりの鮮やかなドレスを身にまとっています。ステージが妙に華やぎます。低弦から静かに曲が始まりますが、どんどん曲が進行するにつれて、6人の弦楽器が多様な響きでそれぞれの個性を発揮します。この曲はこんな曲だったのかと驚かされます。いわば、アンチ・アンサンブルとも思えます。アンサンブルが合っていないのではなく、あえて、和声感を出さないような演奏です。とても新鮮に感じます。終盤に至って、これが見事に和声感のある演奏に収束していきます。シェーンベルクが後期ロマン派の絶頂、そして、黄昏に放った作品は和声を超えた和声の音楽だったんですね。この表題音楽のメロドラマに惑わされて聴いていた自分の不明さに今更ながら気づかされます。それにしてもこの演奏をリードしていたクリスティアン・テツラフの抑制した知的な演奏表現には脱帽です。彼の演奏でシェーンベルクの何たるかを教えられた思いです。もちろん、この後期ロマン派の傑作は色んな解釈があるでしょうが、テツラフの卓越した音楽解釈は素晴らしいとしか言いようがありません。

休憩後のシューマンのピアノ三重奏曲第1番はさらに素晴らしい演奏。クリスティアン・テツラフのヴァイオリンに魅了され尽くしてしまいました。彼が支配した演奏と言えるでしょう。それにしてもシューマンの作り出した素晴らしい音楽に感銘を受けました。特に第3楽章のインティメットな音楽・・・それを繊細な表現で聴かせてくれたクリスティアン・テツラフのヴァイオリン。そして、第4楽章はシューマンらしい祝祭的な主題に満たされた音楽をテツラフを主体としたトリオが華やかに盛り上げます。久しぶりに素晴らしいシューマンの室内楽を満喫しました。圧巻の演奏でした。

次は第3回目のコンサートを聴きます。クリスティアン・テツラフのブラームスが楽しみです。


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ジャンル : 音楽

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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

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《あ》さん、saraiです。

結局、最後まで、ご一緒にブッフビンダーのベートーヴェンのソナタ全曲をお付き合い願ったようですね。
こうしてみると、やはり、ベートーヴェン

03/22 04:27 sarai

昨日は祝日でゆっくりオンライン視聴できました。

全盛期から技術的衰えはあると思いましたが、彼のベートーヴェンは何故こう素晴らしいのか…高齢のピアニストとは思えな

03/21 08:03 

《あ》さん、再度のコメント、ありがとうございます。

ブッフビンダーの音色、特に中音域から高音域にかけての音色は会場でもでも一際、印象的です。さすがに爪が当たる音

03/21 00:27 sarai

ブッフビンダーの音色は本当に美しいですね。このライブストリーミングは爪が鍵盤に当たる音まで捉えていて驚きました。会場ではどうでしょうか?

実は初めて聴いたのはブ

03/19 08:00 

《あ》さん、コメントありがとうございます。
ライヴストリーミングをやっていたんですね。気が付きませんでした。

明日から4回目が始まりますが、これから、ますます、

03/18 21:44 sarai

行けなかったのでオンライン視聴しました。

しっとりとした演奏。弱音はやはり美しいと思いました。
オンラインも良かったのですが、ビューワーが操作性悪くて困りました

03/18 12:37 

aokazuyaさん

コメントありがとうございます。デジタルコンサートホールは当面、これきりですが、毎週末、聴かれているんですね。ファゴットのシュテファン・シュヴァイゲ

03/03 23:32 sarai
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