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ブルージュ散策:グルーニング美術館のヤン・ファン・エイクの名画

2015年7月1日水曜日@ブルージュ/6回目

ブルージュBruggeで一番楽しみにしていたグルーニング美術館Groeningemuseumに入館します。今回の旅のメインテーマはフランドル絵画、なかんずく、ヤン・ファン・エイクの作品を見ることです。
まずはブルージュのシティ・カードを提示して、無料チケットをゲット。

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館内マップもいただきます。2番の展示室にヤン・ファン・エイクとメムリンクがあるようです。

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ヤン・ファン・エイクの絵に急行しますが、その前に何とボッシュの絵に目が留まります。これは見逃せません。そう言えば、ボッシュもフランドルの画家のひとりですね。

これがヒエロニムス・ボッシュの《ヨブ トリプティーク(3連祭壇画)》です。画題になっているのは旧約聖書のヨブ記です。ヨブは裕福で家族にも恵まれ、神への忠誠も厚かった人物でした。しかし、その忠誠心が神の使いのサタンによって試されます。財産と家族を失い、さらに悪性の皮膚病を患います。それでも忠誠心を失わなかったヨブは再び、神によって、2倍の財産とよき家族を与えられて、140歳の幸福な一生を過ごしたというものです。この作品は一見して、そのヨブ記が描かれていることは分かりません。ボッシュが深い含意を込めて描いたのでしょうか。作品自体もボッシュらしさはあまり感じられませんね。もしかしたら、工房の作品でしょうか。

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ちょっと寄り道をしてしまいましたが、ヤン・ファン・エイクの名画《ファン・デル・パーレの聖母子》と対面。昨日の《神秘の子羊》と同様に実に細密な表現に驚かされます。この作品はブルージュの聖職者ヨリス・ファン・デル・パーレがヤン・ファン・エイクに依頼して制作されたものです。オーク板に油彩で描かれています。中央に聖母子を配し、その右側に依頼主のファン・デル・パーレが跪き、その彼を守護聖人の聖ゲオリギウスが聖母に紹介するようなポーズをとっています。聖ゲオリギウスは聖母に敬意を表して、兜を上げています。聖母の左側には、ブルージュ聖堂参事会の守護聖人である聖ドナトゥスが描かれています。何といっても、画面全体に人物も衣装も背景も緻密に描かれていることが素晴らしいです。そして、あまりの緻密さ故か、立体的にも感じてしまいます。恐ろしいほどの完成度を誇る作品です。

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この絵にしばらく見入ります。その間、何人もの鑑賞客が通り過ぎていきます。誰もいなくなったとき、真正面から、この絵を独り占めします。素晴らしいですね。ヤン・ファン・エイクの宗教画の特徴でもありますが、この作品も精神性に満ちた表現になっています。ファン・デル・パーレは手に祈祷書を持ち、メガネを外して、聖母子を凝視するかのようです。それまで祈りを捧げていたファン・デル・パーレの心の中に奇跡のように聖母と聖人たちが現れてきたんでしょう。ヤン・ファン・エイクはファン・デル・パーレの心の中の風景を描き出しました。そして、その風景が何と美しいのでしょう。これこそヤン・ファン・エイクが描き出した奇跡です。

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写真では光が反射して見づらいので、この作品の綺麗な画像をご覧ください。

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続いて、2枚目のヤン・ファン・エイクの作品を見ましょう。《マルガレーテ・ファン・エイクの肖像》です。ヤン・ファン・エイクの妻の肖像です。当時、妻のマルガレーテは33歳だったそうです。それにしてはずいぶん、老けて見えますね。画家の冷徹な目は例え、相手が妻であったとしても曇ることはないのでしょう。絵画表現は見事の一言です。

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それにしても、ヤン・ファン・エイクの作品を2枚も持っている美術館って凄いですね。もっとも以前訪れたベルリン絵画館には3枚もありましたけどね。

次はハンス・メムリンクの《モレール三連祭壇画》です。

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中央のパネルに注目します。聖クリストフォロスが幼子イエスを肩に乗せて川を渡る場面が描かれています。以前、クラナッハの作品でこの物語の内容を説明したことがありますが、もう一度ご説明しましょう。クリストフォロスはキリストの教えに帰依するために隠者の勧めによって、急な流れの川を渡る人たちを無償で助けていました。ある日、小さな子供を背負って、川を渡ります。ところが背負った子供がどんどんと重くなってきます。この子供は実はイエス・キリストで、この重さはキリストが人類の罪を背負っているための重さでした。何とか川を渡り終えたクリストフォロスはキリストに祝福されて、手に持つ木の杖を地面に差すように言われます。すると、その杖は大木に育ったそうです。この話がその地の王に伝わり、クリストフォロスは拷問の末に惨殺されました。キリスト教は認められていませんでしたからね。クリストフォロスの名はキリストを背負うものという意味だそうです。このメムリンクの作品ではクリストフォロスは軽々と幼子イエスを背負っているように見えますね。

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次はロヒール・ファン・デル・ウェイデンの《聖母子を描く聖ルカ》です。これも素晴らしい作品です。残念ながら、これはオリジナルではなく複製だそうですが、美しいものは美しいことに変わりはありません。ファン・デル・ウェイデンはヤン・ファン・エイクにも並ぶほどの画力を持っていると感じます。

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ズームアップして、この精緻な表現を見てみましょう。素晴らしいですね。

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次もロヒール・ファン・デル・ウェイデンの《フィリップ善良公の肖像》です。これもオリジナルではなく複製だそうです。

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ここでフランドル絵画はお終いです。ベルギー絵画に移ります。この美術館にはさりげなくデルヴォーやマグリットがあり、ベルギーに来たという実感がします。

ポール・デルヴォーの《Serenity(静寂?)》です。デルヴォーらしい作品です。実は明日は北海沿岸の小さな町にあるポール・デルヴォー美術館を訪ねる予定なんです。その前祝いのような作品に出会えました。

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もう一枚、ポール・デルヴォーの《日の出?(Le Lever)》です。デルヴォーには珍しい普通?の裸婦像です。

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次はルネ・マグリットの《The Assault(暴行?)》です。マグリットのトレードマークのような青空が描かれています。マグリットもこの後、ブリュッセルで堪能する予定です。

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おや、フェルナン・クノップフもありますね。《秘密-反射》です。これはパステル画です。クノップフもブリュッセルで楽しむことにしています。

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これでグルーニング美術館の鑑賞は終了ですが、最後にあの絵をもう一度見ておきましょう。いやはや、素晴らしい!!

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この2日間、ヤン・ファン・エイクの代表作を見ることができて、saraiの心は満足感と幸福感で満たされました。永年の夢が実現できましたからね。

さて、次はメムリンク美術館に行きましょう。


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テーマ : ヨーロッパ
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じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
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07/08 18:59 sarai

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07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

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06/18 08:33 五十棲郁子

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