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パシフィカ・クァルテット:ショスタコーヴィチ・プロジェクト第1回@鶴見サルビアホール 2016.6.10

今日からパシフィカ・クァルテットによるショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲全15曲を聴きます。それも定員わずか100名の鶴見サルビアホールで聴くという贅沢な鑑賞です。アメリカの団体パシフィカ・クァルテットはこのショスタコーヴィチ・プロジェクトのためだけに来日したのだそうです。期待してしまいますね。

今日のプログラムは以下のとおりでした。

  ショスタコーヴィチ・プロジェクト

  パシフィカ・クァルテット
    シミン・ガナートラvn、 シッビ・バーンハートソンvn
    マスミ・バーロスタードva、 ブランドン・ヴェイモスvc

  弦楽四重奏曲 第1番 Op.49
  弦楽四重奏曲 第2番 Op.68

   《休憩》

  弦楽四重奏曲 第7番 Op.108
  弦楽四重奏曲 第3番 Op.73

初日からショスタコーヴィチをたっぷりと堪能しました。わずか2時間ほどのコンサートと思えないほどの充実した時間を持てました。

今日は第7番をはさんで、第1番から第3番までを聴きます。弦楽四重奏曲としては初期の作品ですが、ショスタコーヴィチがこの弦楽四重奏曲に取り組み始めたのは、交響曲第5番を作曲した後のことです。したがって、音楽的にはとても充実した作品で聴き応えがあります。

まず最初は第1番です。冒頭の響きで驚きます。もっと精妙かつ軽快な演奏を想像していましたが、たっぷりとした響きに満ちたロマンティックとも言えるような演奏です。虚を突かれる思いです。考えてみれば、歴史的な背景(初期の作品は第2次世界大戦の前後に作曲されました)を抜きにしても、色々な演奏スタイルがあっていいかもしれません。まるでロマン派の音楽を聴いているような感覚におちいります。パシフィカ・クァルテットの演奏はダイナミックで豊饒な印象を受けます。先鋭な演奏ではありませんが熱い演奏を繰り広げます。ショスタコーヴィチの演奏としては異色かもしれません。もっともショスタコーヴィチにゆかりがあり、定評あるボロディン弦楽四重奏団の演奏スタイルもある意味、熱くロマンティックではありますね。予習で今聴いているエマーソン弦楽四重奏団とあまりに演奏スタイルが異なるので違和感があるだけなのかもしれません。ちなみにこれまでCDで聴いてきた演奏は以下です。

 フィッツウィリアム弦楽四重奏団
 ブロドスキー弦楽四重奏団
 ルビオ弦楽四重奏団
 ボロディン弦楽四重奏団(新盤)

次の第2番も基本的には同じスタイルの演奏です。しかし、この大作の演奏は大変な力演です。この一曲を持ってしてもショスタコーヴィチを大作曲家たらしめることを確信させるかのごとき素晴らしい演奏です。根底にあるのはロマンティシズムに満ちたスタイルの演奏で、4人の奏でる音楽の雄弁なこと、この上なしの印象です。この調子で第15番まで弾き切ることは想像しがたいものがあります。第1ヴァイオリンの女性奏者シミン・ガナートラの力感あふれる演奏とヴィオラ奏者のマスミ・バーロスタードの力強くて明確な演奏が特に目立ちます。

休憩後、第7番です。短い曲とは言え、大変に凝縮度の高い作品です。さすがに第1番、第2番とは15年以上も後の作品ですから、味わいがまったく異なります。全体に暗く沈んだ音楽ですが、激しく高揚する部分の迫力は凄まじいものがあります。そういうところの荒れ狂うような響きはパシフィカ・クァルテットの真骨頂なのでしょう。とても見事です。

最後は第3番です。この作品も色んな表情を見せてくれます。屈託ない明るさに始まり、高潮したり、沈んだりしながら、第3楽章では激しく燃え上がります。スターリンを密かにパロディったとも言われています。最後の第5楽章では激しく燃焼した後、静かに曲を閉じます。大変、聴き応えがありました。

ともかく、この狭いホールはとてもよく音が響き、たった4人の弦楽器とは思えないほどのヴォリュームで音楽が響き渡ります。ちょっとした室内オーケストラのようです。ショスタコーヴィチの迫力ある音楽を聴くには最適かもしれません。とても圧倒されました。あと3回のコンサートが続きます。楽しみです。


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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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