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ブリュッセルで美術三昧:ベルギー王立美術館、ジャック=ルイ・ダヴィッドと新古典主義の芸術家

2015年7月5日日曜日@ブリュッセル/11回目

ベルギー王立美術館Musées royaux des beaux-arts de Belgiqueの古典絵画エリアを鑑賞しているところです。
フランドル絵画、オランダ/ベルギー絵画を見終えて、最後は17~18世紀の絵画のコレクションのフランス絵画部門を見ます。

ここで見るのは、フランス新古典主義の巨匠ジャック=ルイ・ダヴィッドの作品です。何故、ここにジャック=ルイ・ダヴィッドの作品が展示されているのかというと、彼の生涯を概観する必要があります。詳細はウィキペディアでも参照してもらえばいいのですが、ここでも簡単に説明しておきます。

ジャック=ルイ・ダヴィッドは1748年にパリで生まれ、親戚にロココ絵画の大家フランソワ・ブーシェがいたことから、彼の紹介で画家としての修行にはいります。長い修行を経て、26歳で見事、ローマ賞を勝ち取り、国費留学生として、イタリアで約5年間、古典絵画の研究に没頭します。フランスに帰国後、1784年にルイ16世からの注文で描いた《ホラティウス兄弟の誓い》は新古典主義の画家としての名声を確立するものでした。一方、彼は芸術面だけでなく、政治的な活動にも乗り出します。1989年のフランス大革命の勃発の頃、彼はジャコバン派の山岳派に属し、急進的な政治活動の中核を担います。しかし、ロベスピエールの失脚に伴い、ダヴィッドの立場も危うくなり、一時投獄されたりもします。その後、ナポレオンの登場に伴い、ナポレオンの庇護を受けたダヴィッドは復活を果たします。1804年にナポレオンの首席画家に任命され、1806年から1807年に有名な《ナポレオンの戴冠》を描きます。しかし、ナポレオンの失脚後、ダヴィッドはまたも失脚し、1816年にブリュッセルへ亡命し、9年後の1825年に故国に思いを馳せつつ77年の生涯を終えます。死後、遺体は故国への帰還も許されなかったそうです。ルイ16世の処刑に1票を投じたためです。ということで、ダヴィッドは最後の9年間、ブリュッセルで人生を過ごし、ブリュッセルとの大きな縁を持つことになりました。

ベルギー王立美術館にあるジャック=ルイ・ダヴィッドの作品を見ていきましょう。ところで、ルーヴル美術館にあるダヴィッドの作品《レカミエ夫人》はsaraiの大好きな作品なんです。ダヴィッドの名前を聞くと、すぐにあの美しいレカミエ夫人を思い出します。

ジャック=ルイ・ダヴィッドの《マラーの死》です。1793年頃、ダヴィッド45歳頃の作品です。ジャン=ポール・マラーは山岳派の指導者の一人で、ジロンド派党員のシャルロット・コルデーによって暗殺されました。マラーは皮膚炎の治療のためオートミールを浸した浴槽に入っているところをコルデーにナイフで刺され、その傷が致命傷となってマラーは死亡しました。ダヴィッドはそのマラーの死の場面を死後数か月で描き上げます。革命の殉教者として、マラーを美しく描いています。一見して、saraiはマラーを女性と誤認しました。この作品では革命の英雄として、マラーを取り扱い、まるでキリスト教の宗教画における殉教者のように描いているかのようです。発表当時はこの作品は革命を喧伝する作品として称賛されましたが、ロベスピエール失脚と処刑の後は歴史の闇に消えます。19世紀半ばに批評家によって再発見され、1886年から遺族の申し出により、このベルギー王立美術館に展示されるようになりました。新古典主義の巨匠たるダヴィッドの力量を示す、とても美しい作品ではありますね。ところで画面中、マラーの左手にある紙には暗殺者のシャルロット・コルデーの名が書かれているそうです。シャルロット・コルデーはその後、処刑されました。時代を経て、血なまぐさい恐怖政治に立役者のマラーを排除したことで、フランスを救ったヒロインとして、シャルロット・コルデーが賛美されることもあるようです。

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ジャック=ルイ・ダヴィッドの《少年の肖像》です。制作年は不明です。さすがにダヴィッドの肖像画はきっちりと描かれていますね。詳細は不明です。

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ジャック=ルイ・ダヴィッドの《フランソワ・ドヴィエンヌの肖像》です。1792年頃、ダヴィッド44歳頃の作品です。フランソワ・ドヴィエンヌは18世紀フランスの作曲家・木管楽器奏者です。パリ音楽院のフルート教授を務めました。

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ジャック=ルイ・ダヴィッドの《ビーナスに武装を解かれた軍神マルス》です。ダヴィッドがブリュッセルに亡命しているときに描いた作品です。雲の上のビーナスの神殿ですっかり寛いだマルスは3美神に盾と弓を預け、サーベルも手放そうとしています。ビーナスは美しい背中だけを見せていますが、この世界1の美女の前では男は誰でも気を許してしまうでしょう。マルスの足元でサンダルのひもを外しているのは2人の間に生まれた子供キューピッドです。新古典主義の巨匠ダヴィッドは最後まで大変な画力を持っていたことが分かります。素晴らしく美しく、魅惑的な作品です。

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以上がジャック=ルイ・ダヴィッドの作品ですが、彼の弟子、ベルギーのフランソワ=ジョゼフ・ナヴェスの作品も見ておきましょう。


フランソワ=ジョゼフ・ナヴェスの《砂漠のハガルとイシュマエル》です。1820年頃、ナヴェス33歳頃の作品です。この作品は主題を旧約聖書の物語から取っています。ハガルはアブラハムの妻サラの女奴隷です。子供のできなかったサラは子孫を残すためにハガルにアブラハムとの関係を持たせるように仕向けます。その結果、生まれたのがイシュマエルです。やがて、サラ自身もイサクを産みます。その結果、ハガルとイシュマエルはわずかな食料を持たされて、追い出されることになります。ハガルとその息子イシュマエルはベエル・シェバの荒野をさまよい、水が尽きそうになります。この作品はその場面を描いています。それにしても、ナヴェスは師匠のダヴィッドゆずりの素晴らしい画力を持っていますね。少年イシュマエルの弱り切った様子、母ハガルの美しさと困り果てた様子、どこまでも広がる砂漠の荒涼たる風景が見事に描き出されています。ちなみにその後の物語では、この親子は神によって救われます。

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ベルギー王立美術館の古典絵画エリアで最後に目に付いたのは美しい彫刻作品です。

マシュー・ケッセルス(マティアス・ケッセルス)の《大洪水からの場面》です。1832年~1835年頃、ケッセルス48歳~51歳頃の作品です。ケッセルスはオランダのマーストリヒト出身の新古典主義の彫刻家です。大洪水から妻と子供を救おうとしている男でしょうか。テーマはともかく、素晴らしい美しさに魅了されます。

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どんな角度から見ても素晴らしいです。しばし時間を忘れて、見とれてしまいました。

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これで古典絵画エリアはすべて見終えました。初期フランドル派からバロック、新古典主義までの数々の傑作を見られて収穫の多い鑑賞になりました。これらの古典絵画を見るだけで一息つきました。でも、まだ印象派以降の絵画で特にデルヴォーやクノップフなどの作品が見れていません。変ですよね。どこにあるのでしょうか。うろうろ探しますが、分かりません。地下の方に行く階段があるのですが、そちらなのでしょうか。でも、その地下の方へはsaraiの購入したチケットでは行けないようです。いくら考えても分からないので、階段の前にいる係りの人に美術雑誌のデルヴォーの写真を見せて、これはどこにあるのかと訊くと、なんとクローズしてるとのことです。エ~、そんな・・・。諦めきれず、入り口まで戻り、チケット売り場のお兄さんにも同じことを訊いてみますが、やはり改装のため近代部門エリアはクローズしているとのこと。ただし、少しは展示しているので見てねとのことです。
もうガッカリですが仕方がないですね。ガンガン冷やしてある館内で体と共に心も冷えちゃいます。次は、マグリット美術館を楽しむことにして、休憩をかねて昼食にしましょう。王立美術館のカフェテリア・レストランに行きます。スープとサラダとコロッケをトレイに乗せてテラスに出ます。

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これが野菜サラダ。たっぷりしたボリュームでいろんなものがはいっています。

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これがコロッケ。オランダのクロケットとはちょっと違うようです。

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テラスからはなかなか素敵な眺めです。雲が広がり涼しいです。

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最後にコーヒーとワッフルもいただきます。

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テラスから見えているのはノートルダム・デュ・サブロン教会Eglise Notre Dame du Sablonでしょうか。女性の彫像もそちらを眺めています。

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さて、たっぷり休んだので、そろそろ次はマグリットを楽しみましょう。



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