究極の“美”!!ユリアンナ・アヴデーエワ ピアノ・リサイタル@横浜みなとみらいホール 2016.11.3
前半のベートーヴェンはまさにベートーヴェンらしく、きっちりした演奏。とりわけ、《創作主題による32の変奏曲》と《ピアノ・ソナタ第26番 「告別」》は素晴らしい演奏で、心底、圧倒されました。ベートーヴェンという枠から逸脱することなく、彼女の音楽性を十分に発揮した見事な演奏でした。彼女のベートーヴェンは初めて聴きましたが、現存するベートーヴェン弾きの大家とも肩を並べる、高いレベルの演奏です。どうして、彼女はこんな風に何でも弾きこなせるのでしょう。音楽の芯がきっちりとできあがっているので、どんな作曲家の作品にも対応できるのかなと想像してしまいます。
でも、圧巻だったのは後半のリストです。前半のベートーヴェンは単なる前菜のようなものだったと感じさせるほどの凄まじく素晴らしい演奏でした。リストの最初の3曲は晩年の神秘主義的な作品。ワーグナーの死に絡んだ作品ですが、以前も同時期の別の3曲を聴いたことがあります。よほど、これらの珍しい曲に思い入れがあるんでしょう。沈み込んで、無調性も感じられる暗い音楽です。若い彼女がそれらを見事に表現します。そして、その3曲に続けて、間を置かず、《ピアノ・ソナタ ロ短調》を弾き始めます。フォルテの部分の凄まじい演奏、メロディアスな部分の極上の美を感じさせる演奏、それらが交錯して、ピアノ芸術の極限を感じさせます。saraiの頭の中はピアノの美しい響きで満たされて、幸福感の絶頂に至ります。これ以上のピアノ演奏はあり得ないと断じたい思いです。予習で聴いたクラウディオ・アラウの新旧録音(1970年、1985年)も大変素晴らしい演奏でしたが、今日のアヴデーエワの演奏はそれをはるかに凌駕する演奏です。ピアノ演奏の“美”とは、こういうものかと実感させられました。まだ、30歳そこそこのピアニストがここまでの高みに上りつめたとは大変な驚きです。《ピアノ・ソナタ ロ短調》は30分ほどの大曲ですが、終始、彼女のピアノの響き、美しい体の動作に魅了され続け、幸せな時間を過ごしました。アヴデーエワは間違いなく、ピアノの演奏技術と類稀なる音楽性を併せ持ったスーパーピアニストです。
アンコールのショパンも同じく、“美”そのものを感じさせる見事な演奏。流石に最後の英雄ポロネーズは少し乱暴な演奏になりましたが、お疲れだったのでしょう。
音楽が“美”の追求であるとすれば、今日のリサイタルは今年聴いた数々のコンサートの頂点に立つものでした。とても素晴らしい音楽に接することができて、とても幸せです。
今日のプログラムは以下です。
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第27番 ホ短調 op.90
ベートーヴェン:創作主題による32の変奏曲 ハ短調 WoO.80
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第26番 変ホ長調 op.81a「告別」
《休憩》
リスト:悲しみのゴンドラⅠ
リスト:凶星!
リスト:リヒャルト・ワーグナー - ヴェネツィア
リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調
《アンコール》
ショパン:ノクターン第8番 変ニ長調 op.27-2
ショパン:マズルカ 変ロ長調 op.17-1
ショパン:ポロネーズ第6番 変イ長調 「英雄」 op.53
今度の来日では、どういう喜びを与えてくれるでしょうか。
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