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マイケル・ティルソン・トーマス、感動のマーラー!、そして、ユジャ・ワンの圧倒的なショスタコーヴィチ! サンフランシスコ交響楽団@サントリーホール 2016.11.21

今日は何と豪華なコンサートだったでしょう。前半はユジャ・ワンの切れ味鋭く、迫力満点のショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番とお洒落なアンコール演奏。後半はマイケル・ティルソン・トーマスことMTT(マイケル・ティルソン・トーマスのイニシャルでMTTと呼ばれるそうなので、以後、MTTと略します)の精密極まるマーラーの交響曲第1番「巨人」の演奏に大変な感動を覚えました。今年は膨大な数のコンサートに足を運びましたが、多分、記憶の限りでは、今日が今年最高のコンサートでした。

順番は逆になりますが、まずは後半のマーラーの「巨人」について触れます。実はMTTの実演は初聴きなんです。MTT指揮サンフランシスコ交響楽団のマーラー交響曲全集のCDに魅せられてしまって、どうしても実演を聴きたくて、今日の公演のチケットを購入しました。しかし、本当はMTTのマーラー全集の中では、今日演奏する「巨人」はあまり良い出来ではないんです。精密さが不足した演奏に思えます。それでも第4楽章は盛り上がっていますから、そのあたりに期待ということです。ところでMTTのマーラー全集はすべて、ライブ録音ですが、とてもライブとは思えないような完成度の高い演奏ばかりです。そのあたり、実際に生演奏はどうなのかも興味津々です。
出だしはそれほどの出来には思えません。MTTの指揮もインテンポを刻んだ少し単調なものに思えます。それでもサンフランシスコ交響楽団の緊張感高い演奏には、saraiの集中力も高まります。次第にMTTの指揮は決してインテンポではなく、微細にテンポを変えていることが分かります。ちょっとした仕草にオーケストラが敏感に反応していることが分かります。だんだんとテンポや強弱の細かい変化が多くなっていきます。さほどにアンサンブルが素晴らしいとも思えませんが、何と言うか、実にセンシティブなオーケストラの響きです。MTTの指揮は繊細さを極めた精密なもので、それにオーケストラが見事に反応していきます。オーケストラはテンポや強弱といったアーティキュレーションを見事に表現しているという意味ではアンサンブルは良いと言えるのでしょう。ただ、この第1楽章では、響きそのものが格段に素晴らしいわけではありません。第2楽章になって、MTTの指揮の動作が大きくなって、オーケストラの響きも劇的に素晴らしくなります。色んな意味で指揮者とオーケストラが一体になっている感じです。saraiも段々と演奏に惹き込まれていきます。第2楽章の中間部はゲネラルパウゼの後、弦による優美なレントラーが歌われますが、そのタッチの柔らかさ、優しさには心を打たれます。技術を超えた何かが感じられます。なんて素晴らしいマーラーなんでしょう。第3楽章は実に精妙さに満ちた葬送の音楽が続きます。ですが、この第3楽章まではまだ序章に過ぎません。嵐のように始まる第4楽章の素晴らしさといったら、言葉を失います。ヴァイオリンで演奏される第2主題の美しさと言ったら、メローでありながら、心の隅々まで沁み込んできて、大きな感動を味わいます。展開部、再現部と進むにつれて、心が大きく高揚します。ここには既に第9番までの予感に満ちた音楽があります。輝かしさの陰に来るべき甘美な死の予感が潜んでいます。今日の演奏でそれを実感します。そして、高らかに歌い上げるフィナーレに駆けあがっていきます。あまりの感動に涙が滲んできます。頂上で音楽が止んだ後は呆然自失に陥ります。ブラヴォーや拍手が沸き起こりますが、saraiはしばし、感動の余韻に浸っていました。
これがMTTとサンフランシスコ交響楽団のマーラーなんですね。とっても完成度の高いライブ演奏です。このまま、この演奏を収めた海賊盤が出たら、saraiの最高の1枚になりそうです。

前半のユジャ・ワンのショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番に話を戻しましょう。実は生ユジャ・ワンを見るのはこれが2回目ですが、コンサートで聴くのは初めてなんです。ユジャ・ワンも初めて、MTTも初めてという実に楽しみなコンサートだったんです。で、ユジャ・ワンはそれはもう、期待通りの凄い演奏を聴かせてくれました。sarai好みのピュアーなタッチの響きではないのですが、そんなことは跳ね飛ばすような勢いの迫力のピアノです。これを聴いて興奮しないわけにはいきません。低音部も叩きまくり、高音部も音が割れても叩きまくり、それはもう凄まじい演奏です。それでいて、実に切れのある鋭い演奏なので、聴いていて、気持ちがいい会心の演奏です。実はsaraiはかぶりつきの席、多分、彼女に最も近い席で聴いていたので、ヴィジュアル的にも楽しめてしまいました。背中の空いた素敵なドレスのユジャ・ワンはとってもチャーミング。音楽には関係ありませんが、可愛いにこしたことはないでしょう。爽快なショスタコーヴィチでしたが、サポートしたサンフランシスコ交響楽団の弦が素晴らしく、どんな高速パートもぴったりと美しい響きで合わせます。本当に完璧なショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番でした。
アンコールが秀逸なのはユジャ・ワンならではです。トランペットとジャズっぽく弾きまくった《ふたりでお茶を》でも超絶技巧。そして、得意のチャイコフスキー《4羽の白鳥》のめくるめくような超絶技巧。ただ、単に超絶技巧だけではなくて、彼女がピアノを弾くとヴィジュアル同様、お洒落なところが最高です。saraiはユジャ・ワンに恋してしまいました。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:マイケル・ティルソン・トーマス
  ピアノ:ユジャ・ワン
  トランペット:マーク・イノウエ
  管弦楽:サンフランシスコ交響楽団

  ブライト・シェン:紅楼夢序曲<サンフランシスコ交響楽団委嘱作品/日本初演>
  ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番ハ短調 Op.35
   《アンコール》 ユーマンス:ふたりでお茶を(ピアノ&トランペット・アンコール)
           チャイコフスキー:4羽の白鳥(ピアノ・アンコール)

   《休憩》

   マーラー:交響曲第1番ニ長調「巨人」


今日は何て素晴らしいコンサートだったんでしょう。ユジャ・ワンに恋し、MTTのマーラーに酔ってしまいました。
是非、日本でMTTのマーラーの全交響曲のチクルスを企画したもらいたいものです。⇒ AMATI殿



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       マイケル・ティルソン・トーマス,        ユジャ・ワン,

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タイタン

こんにちわ
第3楽章の中間部が美しかったと思います

No title

タイタンさん、saraiです。初めまして。コメントありがとうございます。

第3楽章の中間部については力尽きて、書き漏らしました。ハープの音に続いて、ヴァイオリンがまた、メローな響き、美しかったですね。
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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

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saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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