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ガランチャ、アラーニャ絶唱!!オペラ《ウェルテル》@ウィーン国立歌劇場 2013.4.20

オペラは人生そのものです。人生の縮図でも何でもなく、人生のすべてがあります。愛と死、それ以上、何があるというでしょう。ゲーテが芸術として昇華させた《若きウェルテルの悩み》。saraiも思春期に読んで、やるせなく、心が震えたことを、老境の今、思い出しました。マスネは実に見事に原作から、その心情をくみ取って、音楽という別の形の芸術に移し替えることに成功しました。
今日のオペラは、シャルロッテを歌ったガランチャ、ウェルテルを歌ったアラーニャ、そして、ドゥ・ビリー指揮のウィーン国立歌劇場管弦楽団の3者のテクニックを超えた熱い思いが結実した結果、とても言葉では言い表しようのない感動がそこにありました。今年、最高のオペラになりそうだし、一生、忘れられないオペラになりそうです。

ちなみにこの《ウェルテル》は昨年もこのウィーン国立歌劇場でカサロヴァ、テジエ(バリトン版でした)で聴きました。そのときの記事はここです。

今日のキャストは以下です。

  指揮:ベルラント・ドゥ・ビリー
  管弦楽:ウィーン国立歌劇場管弦楽団
  演出・振付:アンドレイ・セルバン

  ウェルテル:ロベルト・アラーニャ
  アルベール:ター=ヨーン・ヤン
  大法官:アンドレアス・ヘルル
  シャルロッテ:エリーナ・ガランチャ
  ソフィー:ダニエラ・ファリー
  シュミット:トーマス・エーベンシュタイン
  ヨハン:ハンス・ペーター・カンマラー

冒頭の序曲でオーケストラが少し不揃いであれっと思いましたが、さすがにすぐに修正して、あとはオーケストラは素晴らしい響きで、《ウェルテル》のリリックな心情を余すところなく表現していました。やはり、ここのオーケストラは別次元の響きを出します。弦楽器の独奏や少人数での演奏も多いのですが、実に見事な演奏です。いい意味でオーケストラ奏者とは信じられません。マスネの抒情的な音楽が2倍も3倍も美しく響きます。

ガランチャは何て素晴らしいんでしょう。昨年聴いたカサロヴァも素晴らしかったのですが、美しい声の響きだけでなく、迫真の演技、恐ろしいほどです。後ろによろけるシーンなどは怪我をするんじゃないかというくらい思い切った動きです。そして、全編、顔の表情だけでも、緊張感を与えられます。そして、何と美しい! こんなに美しいシャルロッテならば、ウェルテルならずとも、底知れない深い深い恋に落ちてしまうでしょう。後半の第3幕、第4幕では、涙なしに聴けません。昨年聴いたオクタヴィアンも素晴らしいですが、シャルロッテは彼女のために書かれた音楽に聴こえます。今、思い出しても、その素晴らしさにため息が出ます。ヴィデオで聴いた彼女のシャルロッテよりも、一段と熟成していると感じました。

アラーニャ・・・こんな素晴らしい彼の歌唱はいまだかって、聴いた覚えがありません。声もよく出ていましたし、何と言っても、ウェルテルの純粋な愛を貫く青年の思いには、魂を揺すぶられます。やはり、彼は傑出したテノールです。

もう、これ以上、書く必要はないでしょう。オペラ好きなら、誰しも感涙してしまいます。ウィーンでは、こういうものが聴けるから、ウィーン詣ではやめられなくなるんです。

4月のウィーンでの音楽鑑賞も残り一つ。楽友協会でのウィーン・フィルのコンサートだけになってしまいました。


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この記事へのコメント

1, Steppkeさん 2013/05/03 17:21
sarai さん、こんにちは。Steppke です。

オフ会では、1年振りにお会いできて、愉快でした。
(時間が短かったので、1ヶ月ちょっとでまたお会いできるのが楽しみです)

もうご存知だとは思いますが、Garanča は、27日(と30日も)の公演をキャンセルしました。
27日は、かぶりつきだったのに..(涙)
前日夜にチケットが急に数十枚も出て来たので怪しんでいたところ、当日昼過ぎにネットで配役表を見たら名前が変わっていました。朝は大丈夫でしたが、夜のうちに内部情報が洩れていたのでょうね。

2, Steppkeさん 2013/05/03 17:24
(続き)
しかも、代役はよりによって Kasarova ..
自分のチケットは売って Theater an der Wien にでも行こうかと考えましたが、24日の Alagna が良かったので、一応行くことにはしました。
開演前の入口付近には売っている人が大勢おり、ダフ屋も売れずにあせってましたね。席は、一番前なのであまり分かりませんが、ポツポツ空いていたみたいです。

残念ながら、Alagna の歌には涙がありませんでした。声は 24日より出ていたようですが、歌ではなく声を聞かせているといった感じです。まあ、こちらが醒めていたからかも知れませんが..

3, Steppkeさん 2013/05/03 17:25
(続き)
Kasarova は、歌も演技もやはり比べものになりませんね。急な代役(プログラムの配役表も印刷が間に合わず、紙が挟んでありました)で、昨年演じているとは言え、きちんとは覚えていないでしょう(結構抜けがありました)し、Alagna とも初めてなので、仕方はないですが。
それより、終演後、カーテンコールで最初に出て来た時から異様にはしゃいでいたのが気色悪かった。Garanča は、一緒の Alagna も、死のシーンの直後で表情が固く、徐々にほぐれていく感じなのに。もう少し役に入ってくれないと、しらけてしまいます。

まあ、1度だけでも聴けて、良かったと思わねばなりません。
もともとの予定では、27日に行って 30日を聴いてから帰ることにしていたので、あぶないところでした。

4, saraiさん 2013/05/04 02:00
Steppkeさん、こんばんは。
無事に帰国されたようでなによりです。

ガランチャの公演キャンセル、かなり、がっかりされていると思っていましたが、予想以上のようですね。言葉もありません。ガランチャの代役は誰にも務まらないでしょう。

6月のオクタヴィアンを楽しみにしましょう。ドレスデンでの再会、楽しみにしています。オペレッタ劇場へのご案内もよろしくお願いします。
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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No title

sarai さん、ご無沙汰しています。Steppke です。

昨晩(11月20日)、2年半ぶりに Werther を聴きました。
Garanča は歌ってくれました。 やはり凄いですね。一番端でティンパニの前でしたが、かぶりつきだったので、姿も堪能できました。DVDになっている10年前に比べると二の腕などかなりふくよかになっちゃいました。まあ、仕方ないですね。演技は相変わらずというより、更に磨きがかかった感じです。4回のシリーズの最後だったので、相手との息もぴったりでした。
その相手の Polenzani は、最初ちょっとイタリア声が Werther としては違和感がありましたが、声や姿も一途なところは、遊び人風の Alagna よりも適役です。声を上げる処も凄いのですが、ソットヴォーチェは最高でした。

ところで、Garanča は KURIER 紙のインタビューで、気になることを言っています。声が変わってきており、これまでの役を変えつつあるということです。Charlotte は歌い続けるとのことですが、Octavian は2年後の MET が最後になるようです。来シーズンの発表はまだまだ先ですが、Octavian は是非聴いておく必要があります。

No title

Steppke さん、こちらこそ、ご無沙汰しています。saraiです。

ガランチャの素晴らしい演技と歌のシャルロッテ 、さぞかしだったでしょう。DVDとは迫力が違うことは想像に難くありません。よかったですね。

ウィーンでのガランチャの最後のオクタヴィアン、是非、聴きたいですね。一連の騒ぎが収まってくれればと思います。

来春は4月初めのベルリン・ドイツ・オペラのR・シュトラウスの連続オペラとアン・デア・ウィーン劇場のカプリッチョ、それにウィーン国立歌劇場のデノケのイェヌーファに行く気持ちが固まったところでのパリのテロ事件・・・来春のヨーロッパは断念しました。様子を見て、秋以降に計画を練ります。来シーズン、よいオペラがあれば、いいのですが。

ウィーンから無事に帰国してくださいね。

No title

sarai さん、Steppke です。
何事も無く、帰って来ました。

来春は断念ですか..それは残念ですね。
ヴィーンはいつも通りで、ちょっと警官が多いかなという感じです。空港の入国審査も、日本人の団体がほとんどだった為か、普段より早かったくらいでした。クリスマス市は、早くもすごい人出です。

お伝えしたかと思いますが、来年4月にベルリンに行きます。Komische Oper の Clivia が目的で、R.Strauss の連続は、それほど長く居られないので、断念です。(久し振りにお会いできるかと思ってましたが、秋以降になっちゃいますね)
ただ、それまで持ちそうにないので、1月か2月に Gräfin Mariza の再演や Baden のレアもの Die gold'ne Meisterin に行けないか、画策しています。

No title

Steppkeさん、お帰りなさい。無事でなにより。

来春はベルリンでお会いできたかもしれなかったですね。それも一興だったのに残念です。でも、やはり、ウィーンでお会いするのが一番ぴったりな感じですね。またの機会を楽しみにしましょう。

ところで日本ではオペラを見ない方針は今のところ、堅持します。来年のフォルクスオーパーもシュターツオーパーも行きません。料金が高過ぎますからね。
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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

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