衝撃的なシャコンヌ:ヒラリー・ハーン・ヴァイオリン・リサイタル@東京オペラシティ 2013.5.14
みなとみらいホールでも素晴らしかったヒラリーですが、今日は一段と好調です。ピアノのコリー・スマイスも好調です。来日後、十分休養できて、2人とも体調がアップしたのでしょう。
バッハのシャコンヌは衝撃的とも言える演奏でした。深く熱い演奏で、一昨日のあっさりとした自然な演奏とはまったく異なる味わいです。ヒラリーのようなレベルになると、saraiのような素人には予測もつかない演奏を披露してくれます。一昨日のsaraiの俄か評論家めいたヒラリーの演奏論はすべて撤回しないといけないようです。今日は神が舞い降りたようなような演奏で、ただただ、圧倒され尽くしました。特に重音のパートの凄まじさには打ちのめされました。演奏が終わっても、しばらくは口もきけないほどの金縛り状態です。機械的に拍手していましたが、呆然自失の状態だったんです。これが前半最後の曲目でしたが、このまま帰ろうかと真剣に思ったほどです。
前半に演奏したモーツァルトも、後半のフォーレも、みなとみらいホールのリサイタルを上回る素晴らしい出来で、おおいに満足しました。
この日のプログラムはみなとみらいホールとまったく同じの以下の内容です。アンコール曲も同じでした。
ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン
ピアノ:コリー・スマイス
アントン・ガルシア・アブリル:"First Sigh" Three Sighs より
デイヴィッド・ラング:"Light Moving"
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 K.302
大島ミチル:"Memories"
J.S. バッハ:シャコンヌ (無伴奏パルティータ第2番より)
《休憩》
リチャード・バレット:"Shade"
エリオット・シャープ:"Storm of the Eye"
フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ 第1番 イ長調
ヴァレンティン・シルヴェストロフ:"Two Pieces"
《アンコール》
ジェームズ・ニュートン・ハワード:"133...At least"
デイヴィッド・デル・トレディッチ:Farewell
今日は前から2列目の好位置で、ヒラリーの大胆な黒のロングドレス姿を近くから拝見し、大理石のような真っ白な肌に魅了というより、驚嘆してしまいました。ヴァイオリンの響きだけでなく、ビジュアル的にもますます美しいヒラリーです。
アブリルとラングの委嘱新曲はともかくヒラリーのヴァイオリンの響きの美しさに耳を奪われるのみです。特に低弦の深い響きに魅了されます。この2曲は耳慣れしたせいか、あまり、曲自体にインパクトは感じません。
次はモーツァルトのソナタです。みなとみらいホールではもうひとつに感じましたが、今日のヒラリーのヴァイオリンは切れのよい演奏で、とても素晴らしい演奏。特に第2楽章はメロディアスな部分が実に叙情的に表現され、最高です。予習したCDのグリュミオーとは異なる表現ですが、レベル的には拮抗する演奏でした。
次の大島ミチルの委嘱新曲ですが、ヒラリーのヴァイオリンの音色が冴えわたったのは、みなとみらいホール以上で、なかなか美しい曲だと感じるに至りました。みなとみらいホールでは、曲の充実度はいまひとつに感じていました。
前半最後のバッハのシャコンヌは既述のとおり。感動という言葉を不用意に使えないような衝撃がありました。バッハの無伴奏でこれを超える演奏はヒラリー以外にはあり得ないと思わせられる驚愕の演奏でした。ヒラリーの弾くバッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ/ソナタ全曲を一度は聴いてみたいと念願するのみです。
休憩後はまた、委嘱新曲からのスタートです。心なしか、ヒラリーに疲れが見えます。あれだけのシャコンヌですから、精魂使い果たしたかとも思います。しかし、ヒラリーはあくまでもクールにバレットの委嘱新曲を弾き始めます。実に先鋭的な響きの曲ですが、ヒラリーにかかると美しく響き、これは素晴らしい曲です。今回の委嘱新曲では一番の出来かもしれません。
次のシャープの委嘱新曲も先鋭的な響きですが、ヒラリーの名人技も相まって、これまた素晴らしい。
次はフォーレのソナタですが、今日の演奏は第1楽章から素晴らしい。第2楽章はみなとみらいホールでの素晴らしい演奏をさらに上回り、もう、うっとりとして聴くのみです。短い第3楽章に続き、第4楽章もロマンチックな演奏で、フォーレを満喫しました。
最後のシルヴェストロフの委嘱新曲は、saraiが勝手に『ヒラリーのテーマ』という題名を付けた曲ですが、本当にチャーミングな曲でヒラリーのヴァイオリンの美しい響きにぴったりです。ヒラリーのリサイタルのアンコールの〆はいつもこの曲を弾いてもらいたいと思うほど、ヒラリーらしさが表出する曲です。
アンコールは2曲。残念ながら、みなとみらいホールでのアンコール曲と同じ曲でした。別の曲にしてもらいたかったんですけどね。委嘱新曲はまだまだ、たくさん、あるようですから、もっと聴かせてもらいたかったところです。
今回も実り多いヒラリーの2回のリサイタルでした。この後、ヒラリーはウィーンに飛び、コンツェルトハウスでウィーン・フィルと共演し、シベリウスのヴァイオリン協奏曲を弾くようです。その翌週には、saraiもウィーンに行くので、そのコンサートが聴けないのが残念でしたが、また、秋には、ヒラリーが来日し、ネルソンス率いるバーミンガム市交響楽団とそのシベリウスのヴァイオリン協奏曲を弾いてくれるそうです。ウィーン・フィルの来日公演と重なるのではと心配しましたが、1日ずれていて、問題ないようでほっとしました。その日を楽しみにしていましょう。
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