最高のシューベルト、マレイ・ペライア・ピアノ・リサイタル@サントリーホール 2013.10.24
表題に書いたシューベルトは実はアンコールの最初に弾かれた即興曲です。2年前のサントリーホールでのリサイタルでもアンコール曲として弾かれた曲です。余程、お気に入りの曲なんでしょう。本割にはシューベルトがなかったので、残念に思っていたら、アンコールでいきなり、耳馴染みのメロディーが弾かれたので、まずは嬉しや。そして、その素晴らしい演奏に気持ちが舞い上がってしまうようになります。体がとろけるような素晴らしい音楽でした。
で、本割ですが、ともかく、ペライアは絶好調でいつになく、がんがんとパワーフルにピアノを豊かに響かせます。これはちょっと、思いと違って、困惑してしまいました。saraiが好きなのは、ペライアのピュアーな美しいタッチなんです。今日は最前列で聴いているせいもあって、迫力は満点です。それは素晴らしいのですが、求めていたものが違うような・・・。
ベートーヴェンの熱情はまさに熱情的な演奏。後半のシューマンの《ウィーンの謝肉祭の道化》が一番、ぴったりくる演奏で、これはとても感銘を受けました。
今日のプログラムは以下です。
ヨハン・セバスティアン・バッハ:フランス組曲第4番ホ長調 BWV815
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調Op.57《熱情》
《休憩》
シューマン:ウィーンの謝肉祭の道化 Op.26
ショパン:即興曲第2番嬰ヘ長調 Op.36
ショパン:スケルツォ第2番変ロ長調 Op.31
《アンコール》
シューベルト:即興曲変ホ長調 Op.90-2(D899-2)
ショパン:練習曲Op.10-4
ショパン:練習曲Op.25-1 「エオリアン・ハープ」
ショパン:夜想曲Op.15-1
まず、バッハのフランス組曲第4番。予習しようと思って、ペライアの全曲CDボックスから探しますが、ありません。イギリス組曲は録音していましたが、フランス組曲は未録音だったんですね。後で調べると、最近、全曲録音したそうで、まだ、CD化されていません。おっつけ、リリースされるんでしょう。予習はシフの昔のCDの素晴らしい演奏で聴きました。今日の演奏は一つ一つの音がしっかりしたタッチで弾かれて、芯の通った音楽になっています。これがペライアのフランス組曲なんですね。当初の発表では、パルティータが弾かれることになっていましたが、同じような傾向の音楽なので、きっと、このような演奏になったんだろうなと思いました。もっと静謐な音楽を予想していましたが、分厚い響きの美しい演奏でした。趣味的に言えば、ペライアには、もっと力の抜けた演奏を期待していました。でも、満足ではあります。
次は、ベートーヴェンの熱情。これはかなり昔のペライアの録音で聴きました。合わせて、アラウの新盤でも聴きました。これがよくありませんでした。アラウの新盤はまったく熱情という題名からは程遠い演奏。しかし、第3楽章の美しさと言ったら、もう、天国的としか言えない味わいに満ちています。高齢に達したアラウの孤高の音楽です。ペライアの今日の演奏は凄い迫力の、まさに熱情らしい熱情です。第3楽章はもうミスタッチを恐れない勇気ある演奏。物凄い気魄の渾身の演奏です。普通なら、大興奮で感動するところでしょうが、saraiはアラウの毒に冒されています。ちょっと、引いてしまいました。予習はせめて、アラウの旧盤にしておけばよかったと後悔した始末です。それにしても、これがペライアとは信じられない、とても熱い演奏でした。
休憩後、シューマンの《ウィーンの謝肉祭の道化》です。これはとても素晴らしい演奏でした。第1曲のロンド主題の力強い美しさに魅了されます。それに1番目のエピソードが一転して静かな美しさで素晴らしいです。第2曲のロマンスも綺麗な演奏にうっとり。第3曲のスケルツィーノは元気さの中に悲哀も感じられます。第4曲のインテルメッツォは豊かな響きの音楽。最後の第5曲はエネルギーに満ちた力強い演奏で華やかに全曲を閉じます。何故か、ペライアのシューマンはとても素晴らしいです。ベルリンで聴いたピアノ協奏曲も前回のリサイタルで聴いた《子供の情景》もすべて最高の演奏。《ウィーンの謝肉祭の道化》はそんなに聴きこんでいない曲でしたが、素晴らしい名曲であることが認識できました。
次はショパンの即興曲第2番とスケルツォ第2番。続けて、演奏されました。即興曲第2番はショパンとしては地味な曲。最後に華やかなところもありますが、淡々とした演奏。スケルツォ第2番はショパンの中でもベストテンにはいる超有名曲。saraiも若いころ、人並みにこの曲に夢中になっていたことを思い出しました。激情もあり、繊細な美しさもあり、聴きどころ満載です。ここはペライアの見事な腕前に惚れ惚れしながら、じっと聴き入ります。素晴らしい響きにうっとりしました。
アンコールは何と4曲。ペライアはお疲れの様子でしたが、聴衆が沸き立ったので、それに応えてくれたようです。シューベルトの即興曲は前述した通り、最高の演奏。2番目に演奏されたショパンの練習曲Op.10-4は前回もアンコール曲でした。見事な演奏。3番目もショパンの練習曲。有名な「エオリアン・ハープ」です。これは素晴らしい演奏。演奏後、わっと歓声があがりました。最後を締めたのはショパンの夜想曲。静かな内省的な演奏。演奏後、会場も静まり返りました。これでおしまい。またまた、満足。
今日はペライアのエネルギーに満ち溢れた演奏に圧倒されました。彼はまだ66歳とピアニストとしては若いので、まだ枯れていくのは10年以上先でしょね。どう変容していくのか、同世代の人間として、見守っていきたいと思います。来年はアカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズを引き連れて、来日し、弾き振りするそうですが、これはパスです。どうも弾き振りは苦手です。モーツァルトかベートーヴェンのピアノ協奏曲でしょうか。
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