宮崎国際音楽祭 モーツァルト:弦楽五重奏曲ト短調@宮崎県立芸術劇場 2017.5.6
たっぷりと予習して、本番に臨みました。
予習した演奏は以下です。最高の1枚はアマデウス四重奏団&アロノヴィッツの新盤です。
アマデウス四重奏団、アロノヴィッツ
スメタナ四重奏団、スーク
ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団、シュタングラー
ラルキブデッリ
ブダペスト弦楽四重奏団、トランプラー
メロス四重奏団、バイアー
アルバン・ベルク四重奏団、ヴォルフ
ザロモン四重奏団、ウィストラー
意外によかったのが、アルバン・ベルク四重奏団&ヴォルフとメロス四重奏団&バイアーの2枚です。8枚のCDを聴いて思ったのは、この曲はなかなか、表現の難しい曲だということです。シンプルでありながら、深い味わいを持った傑作を十分、表現し尽くすのは並大抵のことではありません。過去において、バリリ四重奏団が録音を残してくれなかったのが残念です。まあ、アマデウス四重奏団&アロノヴィッツの演奏を聴いていると、十分、感銘を受けますけどね。ハーゲン・カルテットあたりの挑戦も期待したいところです。
で、今日の演奏ですが、冒頭の第1楽章はかなりの高速演奏であっさり目の表現です。いささか淡白な演奏が第2楽章まで続きます。それはそれで無駄な贅肉のない演奏ではあります。第3楽章にはいって、がらっと雰囲気が変わり、緊張感が高まります。ゆったりとした演奏ながら、パウゼの緊張感、抒情的な表現は一気に音楽の味わいを深めていきます。実演ならではの緊迫感です。ぐぐっと演奏に気持ちが引き込まれます。そして、第4楽章の冒頭の悲哀を感じさせる演奏の質の高さに感銘を受けます。キュッヒルのヴァイオリンの美しくも柔らかい響きが感興を高めます。悲哀感が頂点に達するとき、明るい長調に転換し、音楽は飛翔していきます。第1ヴァイオリンのキュッヒルの推進力とチェロのマイスキーの控え目とも言えるサポートによって、見事なフィナーレに収斂していきました。古典性と現代的な表現がマッチした名演でした。これで第1楽章の味わい深さが表現できていればとも思いましたが、これは聴くものの好みの問題かもしれませんね。
最初に演奏されたモーツァルトの《ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 第1番》はとても珍しい曲。これまで聴いたことはなく、このコンサートの予習で初めて聴きました。モーツァルトの中期の作品ですから、それなりに完成度の高い作品です。キュッヒルのヴァイオリン、コルのヴィオラで堪能させてもらいました。ウィーン・フィルのコンビの演奏で見事な演奏でした。
休憩後、メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲です。このメンデルスゾーンの若いときの作品はあまり聴く機会がありません。これも以下のようにたっぷりと予習しました。
ラルキブデッリ
エマーソン四重奏団(多重録音)
イタリア合奏団
アカデミー室内管弦楽団
スメタナ四重奏団,ヤナーチェク四重奏団
室内合奏団のシンフォニックなアプローチと弦楽四重奏団主体の室内楽的なアプローチがありますが、スメタナ四重奏団&ヤナーチェク四重奏団の緻密な演奏がとても魅力的でした。
で、今日の演奏はミニ・ウィーン・フィルを思わせるシンフォニックな演奏で大変、気魄のこもった素晴らしい演奏でした。何と言っても、ライナー・キュッヒルの大変な力演が印象的でした。かって、ウィーン・フィルのコンサートマスター席に座っていたときの表情を思い出させるものでしたし、演奏の踏み込み方はそのとき以上のものでした。残りの7人のアンサンブルのサポートも見事でした。このまま、CD化してもらいたいくらいのレベルです。これまでウィーン風のシンフォニックな演奏がなかっただけに、決定盤になるかもしれません。それほど期待していなかったので、ある意味、嬉しい誤算の素晴らしい演奏でした。
今日のプログラムは以下です。
モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 第1番 ト長調 K.423
ヴァイオリン:ライナー・キュッヒル
ヴィオラ:ハインリヒ・コル
モーツァルト:弦楽五重奏曲 第4番 ト短調 K.516
ヴァイオリン:ライナー・キュッヒル
ヴァイオリン:ダニエル・フロシャウアー
ヴィオラ:ハインリヒ・コル
ヴィオラ:川崎雅夫
チェロ:ミッシャ・マイスキー
《休憩》
メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲 変ホ長調 Op.20
ヴァイオリン:ライナー・キュッヒル
ヴァイオリン:ダニエル・フロシャウアー
ヴァイオリン:漆原啓子
ヴァイオリン:川田知子
ヴィオラ:川崎雅夫
ヴィオラ:ハインリヒ・コル
チェロ:ミッシャ・マイスキー
チェロ:古川展生
最後、アンコール演奏がなかったのが残念です。せめて、メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲の終楽章を演奏してもらいたかったんですけどね・・・。
来年はこのメンバーにウィーンのシュミードルを招いて、モーツァルトのクラリネット五重奏曲でもやってくれないかなあ。
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