グリゴリー・ソコロフ・ピアノ・リサイタル@ザルツブルク祝祭大劇場 2017.8.1
前半のプログラムはモーツァルトでしたが、その内容は微妙なところ。テクニックもピュアーな響きもそして、音楽性もすべて素晴らしいのですが、何か、もうひとつ、心に響いてきません。何が問題だったのでしょう。
後半のプログラムはベートーヴェンのソナタ2曲。これは最高に素晴らしい演奏でした。冴えていて、潤いのある響きで実に正統的な演奏です。この演奏を聴いていて、ポリーニの演奏したCDを上回るかなと思いつつ、何か、記憶の端にひっかかるものを感じていました。そして、ふいにある演奏家のことを思い出しました。ヴィルヘルム・バックハウスです。彼は鍵盤の獅子王と呼ばれていましたが、CDで聴いた感じでは、美しい響きで女性的とも思えるなよやかな演奏をしています。グリゴリー・ソコロフもその系譜につながるような演奏をしているように思えます。モーツァルトがもうひとつに感じたのは、あまりに立派な演奏をし過ぎて、ひたむきさとか、詩情が感じられなかったためです。しかし、ベートーヴェンでは、逆にその立派な演奏がプラスに働いて、前向きなテンションの高さ、崇高な諦念というベートーヴェンの精神世界を見事に体現していました。今回の公演は録音・録画していたので、いずれ、DVD,CDになるのでしょう。今日のベートーヴェンは名演として、語り継がれていくことになるでしょう。それにそても、冴えわたった美音で演奏されたアリエッタはまさに天上の世界の天使を思わせる崇高な音楽でした。同じレベルの第31番Op.110の演奏を聴きたいものです。
アンコールははっきりした曲名が言えないので申し訳けありませんが、いずれも耳馴染んだ名曲がソコロフらしい美しいタッチで歌われ、ベートーヴェン同様、素晴らしい音楽でした。シューマンのアラベスクは数日前にシフのアンコールでも聴いたばかり。まるで聴き比べですが、いずれ、アヤメかカキツバタという感じ。いずれも名人・達人のレベルの音楽でした。
今日のプログラムは以下です。
ピアノ:グリゴリー・ソコロフ
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第15番ハ長調K.545
モーツァルト:幻想曲ハ短調K.475
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第14番ハ短調K.457
≪休憩≫
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第27番ホ短調Op.90
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32番ハ短調Op.111
≪アンコール≫
シューベルト:楽興の時 D.780より第1番ハ長調
ショパン:2つの夜想曲 Op.32
ラモー:『コンセール用クラヴサン曲集』よりL'Indiscrete
シューマン:アラベスク Op.18
ドビュッシー:前奏曲集 第2巻より第10曲『カノープ』
↓ saraiの旅を応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね
いいね!

- 関連記事
-
- アンドラーシュ・シフ・ピアノ・リサイタル3@ザルツブルク・モーツァルティウム大ホール 2017.8.2
- グリゴリー・ソコロフ・ピアノ・リサイタル@ザルツブルク祝祭大劇場 2017.8.1
- オペラ《皇帝ティトの仁慈》クルレンツィス指揮ムジカエテルナ セラーズ演出@ザルツブルク・フェルゼンライトシューレ 2017.7.30