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アンドラーシュ・シフ・ピアノ・リサイタル3@ザルツブルク・モーツァルティウム大ホール 2017.8.2

アンドラーシュ・シフのピアノ・リサイタル。3回にわたるミニチクルスの3回目です。今日は最前列中央で聴きます。お隣は何故かまた、前回・前々回と同じ超ファンの年配のご婦人。席の場所は変わったのに一緒にシフトとは奇妙な縁です。もうお会いすることはないでしょうがシフを縁としたつながりを感じます。また、友人であるシフの夫人、塩川悠子さんが彼女に挨拶に来られました。

さて、今日も英語での講義で始まります。

前半のバッハのカプリッチョはアンジェラ・ヒューイットで聴いたばかりですが、シフは豊かな響きの安定した演奏で若きバッハの傑作をしっかりと聴かせてくれました。続くバルトークのミクロコスモスの『ブルガリアのリズムによる6つの舞曲』は力作だけに、シフも渾身の演奏。激しいリズムの難曲をパーフェクトに演奏。前衛的にして、実に音楽的な演奏です。バルトークの真骨頂を見事に表現してくれました。続くバッハのデュエットはそれほど耳馴染みがないせいか、最初あれっと思います。その前のバルトークと同じような前衛的が響きがして、一瞬、まだ、バルトークが続いているのかと錯覚します。考えてみれば、バッハとバルトークほど、抽象的な響きの音楽を作り出した作曲家はいませんね。ピュアーな絶対音楽の世界はいつまで経っても常に前衛的であり続けます。バッハとバルトークは200年の時間の隔たりを乗り越えて、音楽の根っこでつながっているような気がしてなりません。大変な天才です。この二人の間に存在した天才、ベートーヴェンとマーラーは音楽表現に主観と劇的なものを持ち込んでいますから、異質な存在でしょう。ともあれ、バッハのデュエットはシフのますます冴えわたる演奏でバッハの素晴らしさを体感させてくれました。続いて、また、バルトークのミクロコスモスの『ブルガリアのリズムによる6つの舞曲』、バッハの4つのデュエットの残りが演奏され、ますます、音楽が熱くなっていきます。そして、前半のプログラムの最後に置かれたバルトークのピアノ・ソナタの凄まじく素晴らしい演奏には、ただただ圧倒されるだけです。シフって、こんなに熱いピアニストだったんですね。同じハンガリーのバルトークということもあるんでしょうが、音楽的共感に満ちた最高の演奏でした。テクニックも完璧でしたが、それ以上にバルトークの音楽の本質に踏み込んだ演奏と言えます。民俗音楽を抽象音楽に昇華させたバルトーク。彼のピアノ音楽はよく打楽器的な表現と言われますが、確かに乗りの良いリズムがベースにはなっています。しかし、本質はその心地よさを突き抜けたところにある人間の本性、不安や絶望が純粋音楽として描きつくされていることです。そういう、どろどろとしたものをないまぜにして、シフのピアノは純粋な音楽美を見事に表現してくれました。

後半もシフの講義で始まります。

ヤナーチェクの≪霧の中で≫はとても美しい音楽。シフは繰り返して出てくる主題を印象的に感じさせながら、ロマンティックとも言えるような演奏で聴き手の心をぐっと引き寄せます。ヤナーチェクの素晴らしさを教えてくれるような演奏に感銘を覚えました。
今回のチクルスの最後を締めくくるのはシューマンのピアノ曲の最高峰のひとつである幻想曲です。シフはベーゼンドルファーの深くて、豊かな響きを駆使して、シューマンの青春の輝き、ロマン、祝典性、優しい愛を語りかけてきます。シューマンのピアノ曲の多様性をこれ以上はないほどに表出した稀有な演奏でした。何も言うことはありません。こういうシューマンが聴けて、幸せ感に浸るのみです。シューマンって本当にいいなあ!

今日のプログラムは以下です。

 ピアノ:アンドラーシュ・シフ

 J.C.バッハ:カプリッチョ『最愛の兄の旅立ちに寄せて』変ロ長調, BWV 992
 バルトーク:ミクロコスモス~『ブルガリアのリズムによる6つの舞曲』 (第6巻), Sz. 107, No. 1–3
 J.C.バッハ:4つのデュエット第1番 ホ短調, BWV 802(クラヴィーア練習曲集第3部)
 J.C.バッハ:4つのデュエット第2番 ヘ長調, BWV 803(クラヴィーア練習曲集第3部)
 バルトーク:ミクロコスモス~『ブルガリアのリズムによる6つの舞曲』 (第6巻), Sz. 107, No. 4–6
 J.C.バッハ:4つのデュエット第3番 ト長調, BWV 804(クラヴィーア練習曲集第3部)
 J.C.バッハ:4つのデュエット第4番 イ短調, BWV 805(クラヴィーア練習曲集第3部)
 バルトーク:ピアノ・ソナタ, Sz. 80

  ≪休憩≫

 ヤナーチェク:霧の中で
 シューマン:幻想曲 Op. 17

  ≪アンコール≫

 J.C.バッハ:前奏曲とフーガ(平均律クラヴィーア曲集??)
 バルトーク??
 シューマン??

素晴らしいチクルスでした。シフの音楽的教養の高さを彼のスピーチで知ることができましたが、それ以上に彼の人間性、優しさや温かさが印象的でした。それにピアノを弾くときのシフの表情・・・音楽を慈しむような表情がなんとも素晴らしい。本当に音楽を愛する人なんですね。彼の音楽的進化は留まるところを知らないようです。今年はシフのリサイタルを5回も聴き、バッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、ヤナーチェク、バルトークの代表的な作品を聴かせてもらいましたが、いずれも最上級の演奏でした。いまや、ピアノの世界では最高の巨匠に上り詰めているようです。聴き逃してはいけないピアニストです。次は何を聴かせてくれるでしょう。


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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       シフ,

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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai

まさにマーラー6番な状況です笑

04/11 17:51 kico

お互い、残念でしたね。今年でヨーロッパ遠征を終わりにする予定でしたが、悲劇的な状況になりました。天はまだ我に旅を続けよというご託宣を与えたのでしょうか。1年延期

04/11 03:13 sarai

以前にもコメントさせていただいた者です。来ましたね、楽友協会からのメール。私たちはとりあえず1年延期としましたが、どうでしょうね。困っている人が多い中贅沢な悩み

04/11 00:33 kico

お返事ありがとうございます。
本当に!私もレイルジェットや美術館の手配もしているので、祈るような気持ちです。

03/10 19:06 kico
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