ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスへの助走:交響曲第2番
なお、予習に向けての経緯はここ。
交響曲第1番についてはここ。
交響曲第2番についてはここ。
交響曲第3番《英雄》についてはここ。
交響曲第4番についてはここ。
交響曲第5番《運命》については1回目はここ、2回目はここ、3回目はここ。
交響曲第6番《田園》については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ。
交響曲第7番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここ、5回目をここ、6回目をここ。
交響曲第8番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ。
交響曲第9番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここに書きました。
(全予習が完了したので、全予習へのリンクを上記に示します。参考にしてくださいね。)
今日は2回目で、交響曲第2番ニ長調Op.36。
ベートーヴェンが1802年に完成させました。第1番が1800年完成だから、その2年後。完成した翌年の1803年、ウィーンのアン・デア・ウィーン劇場でピアノ協奏曲第3番とともに初演されました。
第1番と同様に、第2番もsaraiはあまり聴いていないほうにはいる曲です。今回はきっちりと聴いてみましょう。
以下、今回、CDを聴いた順に感想を書いていきます。計12の演奏を聴きました。
まず、ウィーン・フィル以外です。
ハイティンク、ロンドン交響楽団 2005年録音
第1番のようなコンパクトなアンサンブルではなく、標準的な編成での演奏に感じます。
第1楽章は雄渾かつドラマチックでエネルギーに満ちた表現でぐんぐんと進んでいきます。スケールの大きな造形美にあふれた演奏です。
第2楽章は流麗な美しさ、あふれるロマンで、気品に満ちた演奏です。
第3楽章はひきしまったスケルツォに仕上がっています。
第4楽章は、これもエネルギッシュでひきしまった表現。
第1番とはかなり響きが違って、戸惑いましたが、基本的な演奏スタイルは同様です。とてもよい演奏です。
ワルター、コロンビア交響楽団 1959年録音
第1楽章はしなやかでみずみずしい素晴らしい演奏です。曲の本質を余すところなく表現しています。
第2楽章は優美で品格に満ちた名演です。ワルターならではと、うなづいてしまう演奏。
第3楽章はスケルツォですが、このスケルツォでさえ、優美で品格高い演奏です。決してテンポが遅いわけでもないんです。さすがです。
第4楽章は、水際立ったアンサンブルで説得力のある表現。
全体として、流麗でしなやかで優美で品格の高い天下の名演と思います。
クーベリック、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1974年録音
第1楽章は気魄のこもった白熱した熱い演奏です。
第2楽章は爽やかで瑞々しいロマンチシズム、いかにもクーベリックらしさが表出されたという演奏です。
第3楽章は緊密なアンサンブル、凝縮力の高い演奏です。
第4楽章は緊張感のみなぎる演奏です。
全体として、完成度の高い素晴らしい演奏です。
トスカニーニ、NBC交響楽団 1949年&1951年録音 モノラル
第1楽章はシャープな見事な演奏です。爽快感あふれる強靭なアンサンブルが聴きものです。
第2楽章も骨太の独自性あふれる演奏です。それでいて、気品に満ちているのはさすがと言うべきものでしょう。
第3楽章は快速でけれんみのない演奏です。爽快感にあふれています。
第4楽章も超高速の演奏です。一部アンサンブルも乱れますが、このテンポで押し切ってしまうのは凄いものです。分厚いサウンド、くっきりとしたリズムで迫力満点の演奏です。
この第2番は熱狂的で輝かしい演奏です。誰にも真似できない凄みを感じます。こういう演奏を一度は生で聴いてみたかったと心底思いました。
コンヴィチュニー、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 1960年録音
ともかく、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の素晴らしい響き、とても切れの良いアンサンブル、見事です。それを引き出しているコンヴィチュニーも凄い! たんたんとしているようで、その実、生き生きとした深い味わいは何とも形容できません。過不足なしというところでしょうか。
ある意味、同時期のシュミット・イッセルシュテット/ウィーン・フィルと共通するところがあるかもしれませんが、両者はそれぞれのオーケストラの響きの違いで特徴づけられるというところです。ウィーン・フィルの柔らかい美しい響きに対して、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団は芯のある強靭さがありながら、やはり美しい響きを持っています。
この第2番の演奏はばりばりと聴き手を引っ張っていくのではなく、聴き手が注意深く、演奏の深いニュアンスを汲み取っていかなければ、本質的な面白さが味わえないという類いの演奏です。
ここからはウィーン・フィルの演奏に移ります。録音年の順に聴いていきます。
フルトヴェングラー 1948年録音 モノラル
EMIの新リマスター盤です。しかし、この録音が古いせいか、極めて音質が悪いです。それでも、第1楽章から尋常ならぬ気魄が感じられるフルトヴェングラーらしい演奏です。第2楽章はもっと綺麗な音で聴きたかったところです。
シュミット・イッセルシュテット 1968年録音
ここまで美しく拡張高く演奏されると一言も言うべき言葉がありません。正直、脱帽です!
それにしても、いつものことながら、ウィーン・フィルの素晴らしさと言ったら、何でしょう。特に高弦の美しい響きには心が洗われます。
ベーム 1972年録音
骨組みががっちりして、メリハリの利いた、そして、曲の構造を明確に捉えた演奏。しかし、細かい表情付けとか、ニュアンスとかはあまり感じられません。そのあたりはウィーン・フィルの美音に救われている面もありますが、かと言って、ウィーン・フィルらしい演奏とも思えないのも事実。ベルリン・フィルあたりのほうが似合っているのかなという感じに思えます。
バーンスタイン 1978年録音
隈取のはっきりした雄渾な演奏。熱く力強い第1楽章は逆にウィーン・フィルらしい優美さが感じられません。一転して、第2楽章は祈るような表情で開始され、美しい響きが聴けます。以降、第3楽章、第4楽章と引き締まった表情の音楽が続きます。
アバド 1987年録音
若々しく伸びやかな演奏。明るく健康的で、覇気に満ちています。ウィーン・フィルらしい美しい響きにもあふれた演奏です。まさに爽快さを感じる演奏です。第1楽章に続き、第2楽章でも、美しい響きの“歌”が心に残ります。こんなに翳りのない演奏はある意味、ベートーヴェン的ではないかもしれませんが、それはそれでよい演奏であることは間違いありません。軽快で翳りのない演奏は最後まで続きます。こんなベートーヴェンもあって、いいでしょう。聴いていて、気持ちのよいこと、この上ありません。ウィーン・フィルの高弦の美しさを100%活かしきった演奏です。
ラトル 2002年録音
きめ細かくアクセントの明確なリズムを刻み、活き活きとした表情を作り出すことに成功しています。スケールの大きさや壮大さからは縁遠いモダンな演奏です。清新な演奏とも言えます。全体を通して、この演奏スタイルを貫き通しています。中でも、第4楽章の快速ぶりが秀逸に感じます。ウィーン・フィルが一切の乱れもなく、快速なテンポで弾き切っているのがとても印象的。凄い合奏力です。
ティーレマン 2008年録音
もちろん、これを聴くのが目的! これを最後に聴きます。
第1楽章、序奏は荘重に始まります。やがて、主題部にはいると、重厚かつ勢いのある演奏になります。このような推進力に満ちた迫力はフルトヴェングラーと同質の音楽性に感じます。
第2楽章は、思い切った自在なフレージングによる演奏。ウィーン・フィルの繊細な合奏力が光ります。
第3楽章、パーフェクトなアンサンブルです。重過ぎず、軽過ぎずといった具合です。
第4楽章は、整然としていながら、前進する力に満ちた演奏です。ここぞというところでの迫力の凄まじさはティーレマンならではのものに感じます。
素晴らしい演奏です。
これで予定したCDはすべて聴き終えました。レベルの高い粒ぞろいにCDでした。ウィーン・フィル以外では、ワルター、トスカニーニ、クーベリック、コンヴィチュニーは聴き逃せないでしょう。ウィーン・フィルでは、シュミット・イッセルシュテット、アバド、ラトルも聴いておきたいものです。もちろん、ティーレマンもね。
肝心のティーレマンのベートーヴェン・チクルスの聴きどころ。
1.第1楽章、第4楽章でのティーレマンのオーケストラをあおっていく腕力が見もの(聴きもの?)。
2.第2楽章での手綱の締め方、緩め方のバランスも興味深いところ。
明日は第3番を聴きます。
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