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ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスへの助走:交響曲第5番《運命》①ウィーン・フィル以外

ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスの第2日(11月10日(日):交響曲第4番、第5番)のプログラムについて、聴いていきます。

なお、予習に向けての経緯はここ
交響曲第1番についてはここ
交響曲第2番についてはここ
交響曲第3番《英雄》についてはここ
交響曲第4番についてはここ
交響曲第5番《運命》については1回目はここ、2回目はここ、3回目はここ
交響曲第6番《田園》については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第7番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここ、5回目をここ、6回目をここ
交響曲第8番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第9番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここに書きました。

(全予習が完了したので、全予習へのリンクを上記に示します。参考にしてくださいね。)

今回からは交響曲第5番ハ短調《運命》Op.67について聴いていきます。
交響曲第5番《運命》はベートーヴェンが1807年から1808年にかけて、交響曲第6番と並行して作曲しました。交響曲第4番を1807年に完成し、歌劇「フィデリオ」、ピアノソナタ第23番「熱情」、ラズモフスキー弦楽四重奏曲、ヴァイオリン協奏曲、ピアノ協奏曲第4番などもこの時期に作曲しましたから、凄いペースの量産、それも傑作揃いです。ロマン・ロランが「傑作の森」と名付けた作品群の中でも、特別な存在がこの交響曲第5番《運命》です。
saraiも子供の頃、この交響曲第5番《運命》を聴いて、クラシック音楽に傾倒していきました。
初演はウィーンのアン・デア・ウィーン劇場で1808年に交響曲第6番、ピアノ協奏曲第4番と一緒に行われたというのですから、凄いコンサートだったのですね。

交響曲第5番《運命》のCDは名演が揃っています。ここはぐっと力を入れて、聴いていきます。今回から3回シリーズにします。
・ウィーン・フィル以外(8枚)
・フルトヴェングラー(6枚)
・ウィーン・フィル(7枚)
計21枚以上聴きます。

今回はウィーン・フィル以外の7枚を聴きます。
以下、録音年順に感想を書いていきます。

まず、ウィーン・フィル以外です。

トスカニーニ、NBC交響楽団 1952年録音 モノラル

 特に後半の2楽章は凄い演奏です。
 第1楽章、とても引き締まった表現ですが、トスカニーニらしい鉄壁のアンサンブルという感じではありません。もっと怒涛のような演奏を期待していましたが、若干、肩透かしの感です。
 第2楽章、迫力はありますがトスカニーニらしいカンタービレは聴こえてきません。それでも終盤の盛り上がりはさすがです。
 第3楽章、これは素晴らしい。沸き立つような歯切れの良いリズム、そして、中間部のきびきびした厳しい表現に感銘を受けます。
 第4楽章、冒頭の歓喜の歌の雄々しさには感動! 緊張感みなぎる演奏には、ただただ心を打たれます。そして、再現部の素晴らしい音楽! 終結部の高まりには、もう忘我の境地。この演奏を実演で聴いたら、卒倒するかもしれません。

ワルター、コロンビア交響楽団 1958年録音

 このワルターの演奏は子供の頃、繰り返し、繰り返し、LPレコードが擦り切れるほど聴いたものです。隅々まで頭に刻み付けられています。今聴いても、ベートーヴェンの精神世界を峻厳に再現した演奏に感動新たです。ワルターは偶数番号の交響曲を得意にしていたと言われますが、奇数番号についても素晴らしいという見本がここにあります。80歳を過ぎたワルターの激しい燃焼の音楽です。
 第1楽章、凄まじい迫力を柔らかい響きで表現した見事な演奏です。
 第2楽章、いとおしむような温かい音楽の表現がここにあります。ワルターはコロンビア交響楽団にウィーン・フィルの響きを求めたであろうと推察されます。柔らかい響きに包まれて、心が平安になる思いです。
 第3楽章、ワルターにかかるとこの楽章も歌になってしまうことに今更ながら、気が付きました。中間部の低弦の響き、動きが何とも素晴らしいです。
 第4楽章、冒頭、高らかに歌われる第1主題の響きは何と柔らかいのでしょう。

フリッチャイ、ベルリン・フィル 1960年録音

 フリッチャイはこの録音の3年後に48歳の若さで世を去ります。この時期、コンヴィチュニーといい、若くして亡くなった大いなる才能があまりにも惜しいです。この素晴らしい演奏を聴き、その念が強くなりました。
 第1楽章、悠然とした構えで開始。フルトヴェングラーが亡くなって6年後のベルリン・フィルはまだ十分にその遺産を引き継いだ破格の響きです。スケールの大きな美しい響きに耳を奪われます。終盤に大きな盛り上がり、巨大な音の塊に圧倒される思いです。
 第2楽章、猛烈に遅いテンポでとても美しい音楽。このテンポでもたつきを感じないのはベルリン・フィルの素晴らしい合奏力のなせる業でしょう。それにしても、ベルリン・フィルの輝かしい響きには魅了されるのみです。
 第3楽章、これもゆったりと磨き抜かれた演奏です。
 第4楽章、冒頭、何たる輝かしい演奏でしょう。充実した展開部を経て、感動の再現部に至ります。見事過ぎる演奏です。第4楽章の高揚感は言葉で語り尽くせないものです。何という巨大なスケールの演奏でしょう。

コンヴィチュニー、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 1960~61年録音

 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の響きには魅了されるのみです。
 第1楽章、遊びのない実直とも言える直球勝負という感じの演奏です。この曲はそれだけですべてを語ってくれる音楽的内容があるので、とても好ましく感じます。ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団は相変わらず、素晴らしいアンサンブルです。
 第2楽章、さりげない、実にさりげない演奏です。もちろん、歌い上げるべきところは歌い上げます。あるがままを演奏し、聴く側のこちらもあるがままを受容するといったところです。
 第3楽章、ゆったりとしたテンポで細かいニュアンスの表情付けが丁寧に表現されています。音楽の流れはあくまでも自然です。
 第4楽章、悠然とした構えの大きな演奏です。終始一貫、最後までテンポを守り抜くのもコンヴィチュニーらしいです。もう少し、熱くなってもと思わないでもありませんけどね。

クーベリック、バイエルン放送交響楽団 1969年録音

 これは全集盤ではなく、手兵であるバイエルン放送交響楽団とのライブ録音です。全集盤に先立つこと4年前の演奏です。もちろん、ミュンヘン・ヘラクレスザールでの録音です。期待して、聴いたのですが・・・。
 第1楽章、まあ、普通の出来でしょうか。中庸という感じの演奏です。
 第2楽章、これも普通の出来。トゥッティのところの迫力はなかなかのものですけどね。
 第3楽章、少し、響きがよくなってきたかなという感じではあります。
 第4楽章、響きも切れも良いのですが、ちょっと訴求力に欠ける感じです。

クーベリック、ボストン交響楽団 1973年録音

 基本的な表現は1969年のバイエルン放送交響楽団と同じですが、音楽としての訴求力に優ります。瑞々しさにあふれる感じとでも表現すればよいのでしょうか。とても魅力的な演奏です。
 第1楽章、迫力もさることながら、クーベリックらしいロマンに満ちた演奏と言えるでしょう。ボストン交響楽団の合奏力もこんなに素晴らしかったのですね。
 第2楽章、繊細な情感にあふれた美しい演奏です。細かい表情付けが見事です。
 第3楽章、潤いのある響きがとても魅力的に感じます。
 第4楽章、第1主題を爽やかに歌い上げます。繰り返しの主題提示部はさらに美しく響きます。再現部もさらに素晴らしいです。第1主題が見事に歌い上げられます。そして、感動のコーダ!

ジュリーニ、ロサンジェルス・フィル 1979年録音

 ここらあたりで、大好きなジュリーニにも登場してもらいましょう。
 第1楽章、非常に鋭角的で、切り込んだような表現。後年のジュリーニのようにじっくりと粘るような感じはまったくありません。このとき、ジュリーニ65歳。まだまだ、若かったんでしょう。
 第2楽章、一転して、テンポを遅くして、落ち着いた演奏でじっくり聴かせます。地味ですが、情感あふれる演奏に心魅かれます。
 第3楽章、主題は祝祭的な雰囲気さえ感じます。晴れやかで心浮き立つ演奏です。主題の繰り返しは一層、晴れやかな雰囲気です。再現部は厳かな雰囲気に少し変質します。終結部はいくぶんテンポを上げて、整然としたフィナーレです。それほど大きな感動を与えてはくれませんが、とても気持ちよく聴ける演奏で、ジュリーニのファンには手放せないものです。

ハイティンク、ロンドン交響楽団 2006年録音

 これはフリッチャイの悠然とした巨大な演奏とは対極にあるような簡潔な表現の演奏ですが、どちらの演奏も捨て難い魅力があります。
 第1楽章、妙な思い入れのない簡潔な表現。テンポよく音楽は進行していきます。“運命”は遅滞なく、暫しの余裕も与えてくれないのかという思いに駆られます。終盤に向けて、大変、白熱化していきます。大変な迫力を感じます。
 第2楽章、ここでも、テンポは異様に速いです。無駄な停滞は一切ありません。強弱のメリハリも明確で見通しの良い音楽になっています。“運命”というテーマであることを考えれば、緩徐楽章といえども、このように推進力のある表現になるのもよいかもしれません。“運命”に立ち向かう悲愴な決意・覚悟は十分に表現されています。
 第3楽章、快速の中間部が凄い。低弦の切れのよいこと!! この楽章の終盤でテンポを落として、ぐっと音も抑えて、アタッカにつなぐあたりが見事で、一気に終楽章に突入していきます。
 第4楽章は、めちゃくちゃ、高速です。最初は少し戸惑いましたが、この勢いは誰にも止められないという感じの凄さ。ティンパニの強打にも驚かされます。ハイティンクのユニークで斬新な表現です。白熱の展開部もあっという間に終わり、再現部もテンポを落とさずに高速演奏。溜めなんてものは一切なしです。これはこれで清々しいものです。終結部ももちろん、高速。爆発するような気概にあふれた演奏です。とても感銘を受けました。

このほかにも、ムラヴィンスキー+レニングラード・フィルやライナー+シカゴ交響楽団など、とても魅力的な演奏もありますが、この後、本命のフルトヴェングラーやウィーン・フィルを聴かないといけないので、ぐっと自制して、ここで終了します。

ここで聴いた演奏は指揮者の個性を発揮した名演揃いで、どれが一番とは言えるものではありません。ただ、saraiがまた聴きたいと思うのは、トスカニーニ、ワルター、フリッチャイ、ハイティンクあたりです。

次回はこの交響曲第5番《運命》で伝説を築いたフルトヴェングラーを聴きます。彼の数奇な運命も辿ってみます。


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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai

まさにマーラー6番な状況です笑

04/11 17:51 kico

お互い、残念でしたね。今年でヨーロッパ遠征を終わりにする予定でしたが、悲劇的な状況になりました。天はまだ我に旅を続けよというご託宣を与えたのでしょうか。1年延期

04/11 03:13 sarai

以前にもコメントさせていただいた者です。来ましたね、楽友協会からのメール。私たちはとりあえず1年延期としましたが、どうでしょうね。困っている人が多い中贅沢な悩み

04/11 00:33 kico

お返事ありがとうございます。
本当に!私もレイルジェットや美術館の手配もしているので、祈るような気持ちです。

03/10 19:06 kico
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