究極の美音:オーギュスタン・デュメイ ヴァイオリン・リサイタル@紀尾井ホール 2017.9.26
前半の2曲、ブラームスの第3番のソナタとR.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタでは、実はそれほどの美音とも思わなかったんです。ただ、どちらも第2楽章の美しい演奏にはうっとりと聴き入りました。後で考えると、それがとても美しい響きだったんですが、そのときは音楽自体が美しいとだけしか感じませんでした。本当の音の美しさを感じ入ったのは、後半のプログラム、フランクのヴァイオリン・ソナタです。第1楽章の冒頭の弱音の響きで、おおーっという感じになります。何という美しい音色でしょう。こうなると、音楽はそっちのけで、ひたすらヴァイオリンの美しい音にだけ、耳が集中します。こんな聴き方はいけないことは自覚していますが、美しいものを追い求める動物的本能が理性を抑え込みます。第3楽章の中間から、一層、ヴァイオリンの音色が研ぎ澄まされて、究極の美の世界が出現します。そして、第4楽章はありえないような純粋無垢な音の響きに魅惑されます。もう、音楽はそっちのけでひたすら音の美しさにのみ、心も耳も集中します。いやはや、ヴァイオリンの音はこんなにも美しいのかと感嘆するのみで、フランクの名曲が終わります。ほとんど、音楽自体は聴いていなかったかもしれません。これは悪魔の誘惑ですね。
アンコールももちろん、曲はそっちのけでヴァイオリンの音ばかり聴いていました。
今日のプログラムは以下です。
ヴァイオリン:オーギュスタン・デュメイ
ピアノ:レミ・ジュニエ
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第3番ニ短調Op.108
R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ変ホ長調Op.18
《休憩》
フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
《アンコール》
パラディス:シシリエンヌ
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第7番ハ短調op.30-2より第3楽章
予習についてもまとめておきますが、今日のような聴き方では予習はあんまり関係ありませんね。
1曲目のブラームスのヴァイオリン・ソナタ第3番は以下を聴きました。
デュメイ&ピリス
オイストラッフ&リヒテル 1968年 モスクワ・ライヴ LP
ファウスト&メルニコフ
オイストラッフ&リヒテルは天下の名演。ファウスト&メルニコフは今日の演奏の対局のような演奏で、ガット弦でプアーな音ですが、実に音楽的で求道的な演奏です。ピアノのブラームスが作曲した時代のベーゼンドルファーという凝った構成です。デュメイ&ピリスも負けてはいません。ブラームスの室内楽の美しさを極めたような内容です。
2曲目のR.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタは以下を聴きました。
デュメイ&ロルティ
サラ・チャン&サヴァリッシュ
サラ・チャン&サヴァリッシュは思いのほか、美しい演奏。ともかく、サヴァリッシュのピアノがR.シュトラウスの本質を突いていて、サラ・チャンも素直で伸びやかな佳演です。デュメイ&ロルティは少々、R.シュトラウスの音楽とは遠いところにあります。デュメイのヴァイオリンは鳴らし過ぎです。
3曲目のフランクのヴァイオリン・ソナタは以下を聴きました。1曲目と同じですね。
デュメイ&ピリス
オイストラッフ&リヒテル 1968年 モスクワ・ライヴ LP
オイストラッフ&リヒテルはブラームス以上に天下の名演。デュメイ&ピリスは美しい演奏ですが、気迫がもう一つの感です。
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