ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスへの助走:交響曲第7番①ウィーン・フィル以外1回目
なお、予習に向けての経緯はここ。
交響曲第1番についてはここ。
交響曲第2番についてはここ。
交響曲第3番《英雄》についてはここ。
交響曲第4番についてはここ。
交響曲第5番《運命》については1回目はここ、2回目はここ、3回目はここ。
交響曲第6番《田園》については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ。
交響曲第7番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここ、5回目をここ、6回目をここ。
交響曲第8番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ。
交響曲第9番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここに書きました。
(全予習が完了したので、全予習へのリンクを上記に示します。参考にしてくださいね。)
今回からは交響曲第7番イ長調 Op.92について聴いていきます。
交響曲第7番は1811年から1812年にかけて作曲されました。前作の交響曲第6番《田園》と交響曲第5番は1808年に並行して書き上げられましたから、それから少し時間を置いて作曲されたことになります。初演は、1813年12月8日、ウィーンでベートーヴェン自身の指揮で行われました。
交響曲第5番と交響曲第6番は両方とも革新的な作品でしたが、この交響曲第7番は正統的な古典手法に回帰した作品だと言われています。それだけに実によく練り上げられ、明快で演奏効果も高い作品です。
saraiもベートーヴェンの交響曲の中でも、とりわけ大好きな作品です。この交響曲第7番は特別、力を入れて、予習していくことにします。巨匠たちの名演も多く残されています。
その名演の数々を聴いていきます。今回から6回に分けて、ご紹介します。
・ウィーン・フィル以外(15枚)
1958年以前(5枚)、1970年以前(5枚)、1975年以降(5枚)
・フルトヴェングラー(4枚)
・ウィーン・フィル(9枚)
1976年以前(5枚)、1978年以降(4枚)
計28枚と大量に聴きます。これまで予習できなかった指揮者たちにも登場してもらいましょう。
今回はウィーン・フィル以外の内、1939年から1958年までの5枚を聴きます。モノラル録音から、ステレオ録音の黎明期までになります。
以下、録音年順に感想を書いていきます。
トスカニーニ、NBC交響楽団 1939年録音 モノラル
トスカニーニはNBC交響楽団との間でベートーヴェン交響曲全集を2回、録音しています。これは1回目の全集でこれまで聴いてこなかったものですが、名盤の誉れ高いものです。MEMORIESのレーベルから出ているものを入手しました。価格も安く、音質も非常によいものです。2回目の全集よりも10年以上も前の録音です。
第1楽章、カンタービレのきいた演奏、そして、迫力のある演奏と、入れ代わり、立ち代わり、目まぐるしい変化の序奏です。いきなり序奏から、たっぷりと素晴らしい音楽が味わえます。古い録音なのに、素晴らしい音質にびっくりです。主部、とてもストレートな表現。精気に満ちた勢いのある演奏です。迫力で言えば、2回目の全集盤の方が上かもしれませんが、とても自然な演奏で無理がないところはこちらが上でしょう。また、それでいて、推進力もある演奏です。バランスのとれた名演です。
第2楽章、なんとなく、この古めかしい演奏がこの曲にぴったりの雰囲気に思えてなりません。まるでヴィンテージものの音楽を聴いている感覚です。こういう音楽を聴いていると、贅沢な時間を過ごしている気持ちになります。
第3楽章、シャープで見事な演奏です。
第4楽章、歯切れがよいだけでなく、歌っているように感じられるのは凄い演奏です。激しさと内に秘めた抒情を併せ持つ、稀有な超名演です。
全体的には、感動の度合いだけで言えば、2回目の全集盤に軍配があがりますが、この演奏も価値の高いものです。
トスカニーニ、NBC交響楽団 1951年録音 モノラル
こちらは2回目の全集盤です。最近リリースされたトスカニーニ大全集からの1枚です。
第1楽章、序奏からもう気魄が伝わってきます。そして、主部に入り、トゥッティの勢いの素晴らしさ。あとはもう凄い勢いで迫力ある音楽ががんがん進むのみ。圧倒的な演奏に感動!!
第2楽章、哀愁を帯びたカンタービレ。胸に切々と迫ってくるものがあります。ドラマチックで、まるでオペラのよう・・・。
第3楽章、力強く、節回しが見事。明晰な演奏です。トスカニーニらしく小気味よく感じます。
第4楽章、これは凄い! 初めから血が騒ぐような演奏。次から次へと息をも継がせぬ圧倒的な迫力でぐいぐいと進んでいきます。興奮し、感動しっぱなしで、語る言葉なんて何もありません。最高の演奏です。
シューリヒト、パリ音楽院管弦楽団 1957年録音 モノラル
シューリヒト、初登場です。本当はウィーン・フィルとの演奏で聴きたいところですが、何と、フランスのオーケストラを指揮したものしか残っていません。一体、どんな演奏になるんでしょう。これは全集盤からの1枚です。
第1楽章、成程、序奏からフランスのオーケストラらしい明るい音色。主部は音の魅力に満ちた流麗な音楽です。
第2楽章、気品に満ちた美しい音楽。彫琢されたまろやかさが素晴らしいと感じます。
第3楽章、歯切れの良い音楽がテンポよく進みます。力強さも申し分、ありません。
第4楽章、実に気魄に満ちた、力強い音楽。勢いも迫力も十分。速いテンポも心地よく感じます。
全体として、とても爽快な名演です。結果的にフランスのオーケストラを指揮したことは成功だったようです。暇を見て、全集盤を聴き通したいと思います。
クリュイタンス、ベルリン・フィル 1958年録音
クリュイタンスも初登場です。こちらはシューリヒトとパリ音楽院管弦楽団の逆で、フランス系の指揮者がドイツのオーケストラを指揮します。これは全集盤です。ベルリン・フィル初のステレオ録音のベートーヴェン全集です。
第1楽章、スケールの大きい序奏。序奏から、ベルリン・フィルの美しい響きに陶然とします。主部は悠然とした構えの美しい響きの演奏です。
第2楽章、悲愴な表情をたたえた美しい音楽。
第3楽章、ベルリン・フィルの切れ味、響き、どこを取っても素晴らしいです。テンポは若干ゆっくりめです。
第4楽章、これはテンポが速めで、最初は演奏がもつれ気味に聴こえて、あれっ・・・という感じ。その後は力強く迫力ある演奏になります。
ワルター、コロンビア交響楽団 1958年録音
第1楽章、序奏は安定したテンポで柔らかい音楽。低音部の支えも十分です。主部、何と気品に満ちた音楽でしょう。こういうベートーヴェンはワルターしか表現できないものでしょう。別の音楽を聴いている感覚です。
第2楽章、暗く沈みこんだ始まり。重い歩みは続きます。つらく困難な道のりを行くかのごとくです。これはまるで、十字架を背負って歩むキリストのようです。
第3楽章、テンポ、響き、節回し、すべてパーフェクト。力強さもあります。
第4楽章、小気味よいテンポのきびきびした音楽。凄み・迫力以上に、品格高い音楽です。
次回はこの交響曲第7番のウィーン・フィル以外の演奏、1959年から1970年までの録音を聴きます。
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