ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスへの助走:交響曲第7番③ウィーン・フィル以外3回目
なお、予習に向けての経緯はここ。
交響曲第1番についてはここ。
交響曲第2番についてはここ。
交響曲第3番《英雄》についてはここ。
交響曲第4番についてはここ。
交響曲第5番《運命》については1回目はここ、2回目はここ、3回目はここ。
交響曲第6番《田園》については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ。
交響曲第7番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここ、5回目をここ、6回目をここ。
交響曲第8番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ。
交響曲第9番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここに書きました。
(全予習が完了したので、全予習へのリンクを上記に示します。参考にしてくださいね。)
今回は交響曲第7番イ長調 Op.92の3回目、ウィーン・フィル以外のCDのうち、1971年以降の録音を聴いていきます。
では、録音年順に感想を書いていきます。
ジュリーニ、シカゴ交響楽団 1971年録音
ジュリーニはシカゴ交響楽団と共演して、ベートーヴェンは第7番だけを録音しています。もっと、第3番、第5番、第9番あたりも録音しておいてほしかったところです。それだけに、この第7番の録音はとても貴重です。
第1楽章、序奏、シカゴ交響楽団の深い響き、スケールの大きさ、凄い迫力です。主部、見事なフルート独奏に続く素晴らしい高揚感のトゥッティ。シカゴ交響楽団のシャープで深い響きには圧倒されます。ジュリーニの指揮がとても素晴らしく、音楽は堂々として、かつ、よく歌います。まさに理想的な演奏です。これ以上、何も注文はありません。最高の名演です。あまりの凄さに涙が滲むほどです。
第2楽章、最高の弦楽合奏。これ以上、望むべくもない演奏です。全編、深い響きの歌が続いていきます。これはオーケストラ演奏の極致にも思えます。
第3楽章、これまた、素晴らしい演奏。スケールが大きく、切れ味抜群でパーフェクト!
第4楽章、何という豊穣の音楽でしょう。あふれる音楽の海に沈み込んでしまいそうです。
超弩級の超名演。ベートーヴェン演奏の頂点とも言える演奏に感動しきりのsaraiでした。
ブロムシュテット、シュターツカペレ・ドレスデン 1975年録音
ブロムシュテット、初登場です。シュターツカペレ・ドレスデンも初登場。これは全集盤からの1枚です。ブロムシュテットはライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の来日公演で、この第7番の実演に接しましたが、その誠実な演奏に好感を覚えたことが記憶に残っています。
第1楽章、気宇壮大な序奏でびっくり。シュターツカペレ・ドレスデンの響きの素晴らしさに圧倒されます。主部、出だしのフルートのソロはいのですが、続くトゥッティはもっと勢いがほしいところ。以後、落ち着いた堅実な演奏が続きますが、何か乗り切れない感じです。
第2楽章、これは素晴らしいです。ゆったりしたテンポで大きなスケールの演奏。何よりも悲しみを湛えているところに惹かれます。
第3楽章、一転して、きびきびした切れのよい音楽。シュターツカペレ・ドレスデンの響きも素晴らしいです。小気味いい好演です。
第4楽章、これもテンポよい迫力ある演奏。気魄あふれる堂々の演奏。ぐんぐん前進していく力を感じます。素晴らしい快演。
クライバー、バイエルン国立管弦楽団 1982年録音
クライバーはヴィデオも含めると3回の録音を残しています。これはウィーン・フィルとの録音の6年後のものです。
第1楽章、木管の響きが印象的な序奏。弦が活躍すると颯爽としたスタイルになります。主部、ここでも木管、特にフルートの響きがいいです。トゥッティでの突進力はさすがです。以後、クライバーらしいスマートで迫力のある演奏が続きます。バイエルン国立歌劇場でコンビを組んできたオーケストラとも息がぴったり。クライバーの面目躍如の素晴らしい演奏です。
第2楽章、低弦の重々しい開始に続き、高弦の参加で明るさを増していきます。だんだん、霧が晴れていくようなビジュアル感を持った演奏です。動きが実にスムーズなのが印象的です。ユニークでありながら、よく考え抜かれた見事な演奏です。
第3楽章、メリハリのきいたノリノリの演奏。超快速でたたみかけるような、凄い迫力の演奏です。
第4楽章、クライバーの勢いはもう誰にも止められません。凄い速さで駆け抜けていきます。聴き手は置いてけぼりにならないように必死で食らいついていくだけです。そうして、彼に着いていった者には、素晴らしい感動が待っています。いや、凄いです。クライバーだけの唯一無二の演奏です。
コリン・デイヴィス、シュターツカペレ・ドレスデン 1992年録音
コリン・デイヴィス、初登場です。これは全集盤からの1枚です。コリン・デイヴィスは本年4月に85歳の生涯を閉じました。ご冥福を祈りながら、演奏を聴きましょう。
第1楽章、高弦の伸びやかな序奏。主部、ゆったりと堂々たる構えの演奏です。知情意、バランスのとれた素晴らしい演奏。非の打ちどころはありませんが、決定的な魅力に欠けるのが唯一の泣き所でしょうか。
第2楽章、実に静かに音楽が始まり、やわらかで優しい音楽が紡ぎ出されます。美しい気品に満ちた演奏です。心が癒される思いになります。
第3楽章、精気に満ち溢れた小気味よい演奏。
第4楽章、気魄を込めた熱い演奏。歯切れのよいアンサンブルはさすがのシュターツカペレ・ドレスデンの実力。堂々の熱いフィナーレで終わります。
シュターツカペレ・ドレスデンとしては、17年前のブロムシュテット以来の録音ですが、同じオーケストラだけに似たようなスタイルの演奏です。トータルには、このコリン・デイヴィスの演奏が上回ると感じました。
ハイティンク、ロンドン交響楽団 2005年録音
ハイティンク、ロンドン交響楽団の第7番と言えば、今年3月の来日公演では、期待を裏切られましたが、そのときの予習では、このCDは素晴らしい演奏でした。再度、聴いてみましょう。
第1楽章、とてもすっきりした序奏。あっさりしていると言ってもいいかもしれません。実にユニークな演奏ですが、悪くありません。主部、爽やかなフルートのソロ。続くトゥッティも伸びやか。提示部は繰り返しますが、繰り返しでは伸びやかさが増した感じです。力強い展開部。アクセントの強い表現が興を盛り上げます。終始、テンポのよいリズミックな演奏で気持ちよく聴かせてくれます。
第2楽章、室内オーケストラのような弦楽の響きが実に心地よく感じます。
第3楽章、弾むようなノリの良い演奏。歯切れのよいこと、この上なしという感じです。
第4楽章、超快速! 引き締まった表現はトスカニーニの演奏を思い起こしますが、スピードはさらに速いようです。来日公演でもこういう演奏を聴きたかったものです。とても残念! そう思うほど凄い演奏です。一糸乱れずに猛進していきます。そのまま、スピード違反の速さでコーダを駆け抜けていきます。熱く高揚した演奏です。
ハイティンクの全集では、第5番と対をなすスタイルの演奏で実に痛快な演奏です。高く評価したい名演奏だと思います。
ここまで、ウィーン・フィル以外の15枚の録音を聴いてきましたが、何と言っても、ジュリーニ、シカゴ交響楽団の演奏が断トツに素晴らしく、次いで、トスカニーニ、クライバー、ハイティンクが並びます。他も僅差で素晴らしい演奏ばかりでした。
次回はこの交響曲第7番のフルトヴェングラーの演奏、ベルリン・フィルとウィーン・フィルの録音を2枚ずつ聴きます。
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この記事へのコメント
sarai様 kafu-hideと申します。昨年10月のインバル・都響マーラー3番のコメントで全くsarai様と同様な気持ちで感動し、本日またハイティングベートーベン7番のコメントを、なんだコンセルトヘボウであんなによかったハイティング(私はハイティングを初めて生で聞きました)が私の大好きなベト7番であの程度かと思っていましたらsarai様
も同様に面白く思われなかったようで全く同感でした。私は50代に突入したクラシック若輩者ですが、又ステキナブログをお願い致します。
インバルは一様20年来のフアンで、2年前のベートーネンの5番も素晴らしく、マーラーだけでなく、インバルのバルトーク・第9のコメントも
宜しくお願い致します。
2, saraiさん 2013/10/19 00:21
kafu_hideさん、初めまして。saraiです。
インバルのマーラーは素晴らしいですね。都響も絶好調だし。第6番以降が楽しみです。最後の第9番は2回も聴く予定です。
ハイティンクの来日公演はベートーヴェンとブルックナーの出来が違い過ぎました。LSOの来日メンバーに問題があったのではと勘ぐっています。
インバルのバルトークは大震災で流れた公演で待ちに待ったものです。庄司紗矢香も楽しみです。ベートーヴェンの第9番は残念ながら聴きません。ティーレマン+ウィーン・フィルの第9番の感想をご覧くださいね。
また、コメント、お寄せくださいね。
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