ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスへの助走:交響曲第7番④フルトヴェングラー
なお、予習に向けての経緯はここ。
交響曲第1番についてはここ。
交響曲第2番についてはここ。
交響曲第3番《英雄》についてはここ。
交響曲第4番についてはここ。
交響曲第5番《運命》については1回目はここ、2回目はここ、3回目はここ。
交響曲第6番《田園》については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ。
交響曲第7番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここ、5回目をここ、6回目をここ。
交響曲第8番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ。
交響曲第9番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここに書きました。
(全予習が完了したので、全予習へのリンクを上記に示します。参考にしてくださいね。)
今回は交響曲第7番イ長調 Op.92の4回目、フルトヴェングラーのCDを聴いていきます。
フルトヴェングラーの交響曲第7番の録音は5種類のものが知られていて、今回はそのうち、1948年のストックホルム・フィルとの録音を除く4枚のCDを聴いていきます。
1.1943年10月31日、ベルリン・フィル、ライヴ録音、ベルリン(メロディア)
2.1950年1月25日/30日、ウィーン・フィル、スタジオ録音(EMI新リマスター盤)
3.1953年4月14日、ベルリン・フィル、ライヴ録音(DG盤、The Originals)
4.1954年8月30日、ウィーン・フィル、ライブ録音、ザルツブルグ音楽祭(ORFEO盤)
1.は戦時中の録音です。このマスターテープもベルリンに進出したソ連軍がベルリンの放送局からソ連に持ち帰ったもので、それをもとにロシアのメロディアがリマスターしたCDです。
2.はEMIのベートーヴェン交響曲全集の1枚で、ウィーン・フィルとのスタジオ録音です。EMIの全集では2番目の録音です。
3.はこの年、1月早々、ウィーン・フィルとの第9演奏会の第3楽章の最中に倒れてしまいましたが、2月には復帰し、4月12~14日にベルリン・フィルとのコンサートの後、各地にコンサートツアーに出かけます。この録音はそのツアー直前のベルリンでのコンサートの演奏です。このコンサートでは第8番も演奏されました。
4.は1954年8月30日のザルツブルグ音楽祭閉幕コンサートからのものです。その3カ月後、フルトヴェングラーは肺炎で他界します。なお、この8月には、バイロイト音楽祭、ルツェルン音楽祭で第9番を演奏しています。また、このコンサートの3週間後のベルリン・フィルとのコンサートが最後のコンサートになりました。
では、録音年順に感想を書いていきます。
1.1943年10月31日、ベルリン・フィル
第1楽章、ゆったりと雄渾な序奏。何とスケールの大きい演奏でしょう! 戦時中の録音に共通している異様な緊張感、気魄に包まれており、音の少々の悪さは忘れてしまいます。主部は熱く、そして、美しい演奏です。コーダの高揚感の素晴らしいこと・・・感動です。
第2楽章、落ち着いた、静謐とでも言ってよいような演奏がそのまま頂点にまで上り詰めていきます。悲しみを湛えた葬送の音楽にも聴こえてきます。その後、落ち着きを取り戻し、淡々と音楽は進んでいきます。終盤の盛り上がりも力を継続することはなく、消え入るように終わります。
第3楽章、気概に満ちた壮大なスケールの音楽。
第4楽章、物凄い推進力の快速の演奏。フルトヴェングラーの気魄に満ち溢れており、圧倒的!! コーダの迫力は凄まじく、感動するのみです。フルトヴェングラーのみにしかなし得ないベートーヴェン演奏の金字塔に脱帽です。
2.1950年1月25日/30日、ウィーン・フィル
EMI全集からの1枚で、スタジオ録音です。
第1楽章、ゆったりとたっぷりした序奏。最新リマスター盤の素晴らしい音質が光ります。主部にはいると、ウィーン・フィルの弦のしなやかで艶っぽい響きが美しいです。後半に向かって、徐々に迫力を増していきます。コーダの輝きは素晴らしいものです。
第2楽章、美しい表情を付けた音楽がウィーン・フィルの弦の響きに乗って、徐々に高揚していく様はとても素晴らしいです。高揚が引いた後、丹念な演奏が続いていきます。ウィーン・フィルの各セクションの実力が発揮されます。
第3楽章、ノリの良い磨き抜かれた音楽。テンポの幅が大きい演奏です。
第4楽章、歯切れのよい推進力に富んだ演奏。白熱した演奏の迫力が凄いです。こんなに切れ込みのシャープなウィーン・フィルの演奏は聴いたことがありません。まるでベルリン・フィルの演奏を聴いているようです。圧倒的なコーダには、心躍らせられ、感動するのみです。
3.1953年4月14日、ベルリン・フィル
第1楽章、何と響きが素晴らしく、スケールの大きな序奏でしょう。音質も最高です。主部は落ち着いたテンポで深い響きの音楽を聴かせてくれます。じっくりと聴き込める音楽です。音楽を聴く楽しみ、極めれりの感があります。そして、パーフェクトなコーダ!
第2楽章、実に雰囲気のある美しい音楽がさりげなく、悲しみを湛えて、進んでいきます。深い感動を覚えます。美しく歌いあげられる旋律はそう強いフォルテには上り詰めませんが、それが自然に感動につながっていきます。その後も滋味深い音楽が続き、素晴らしさは増すばかり。最高の音楽・・・パーフェクト! こんなに深い音楽は聴いたことがありません。
第3楽章、この楽章も素晴らしいです。テンポの速い部分は活力があり、テンポの遅い部分は深い響きに満ちています。
第4楽章、テンポを抑え気味に開始しますが、すぐに歯切れの良い演奏に変容していきます。そして、ぐんぐん推進力を増していきます。終結部の素晴らしさといったら、どうでしょう。最高の感動で金縛りに合うようです。最初に突っ込み過ぎないで、最後にアッチェレランドした構成が素晴らしかったです。フルトヴェングラー渾身のベートーヴェンと言えます。
4.1954年8月30日、ウィーン・フィル
死に先立つこと、3か月前のザルツブルク音楽祭の閉幕コンサートの録音で、最後の第7番でもあります。
第1楽章、清新な響きの序奏。慈しむような感じも受けます。主部はかっての勢いのある演奏から、じっくりと落ち着いたものになり、深みのある演奏になっています。最晩年にふさわしいとも思えます。噛みしめるように演奏しているのがとても印象的です。
第2楽章、足取りが重く、沈潜するような感じに思えます。美しく、そして、深い悲しみの音楽です。感動的な葬送の音楽であるかのごとく、聴こえます。次いで、瞑想的で枯淡の境地の響き。涙なしには聴けない演奏です。
第3楽章、この楽章は精気に満ちています。トリオは抒情にあふれています。
第4楽章、テンポは以前よりも遅いですが、重厚な迫力は健在。勢いにまかせた音楽ではなく、堂々たる歩みの音楽になっています。コーダの迫力は圧倒的です。これが巨匠の最後の第7番。ベートーヴェンの演奏も3週間後の第1番を残すのみです。素晴らしい音楽に鳥肌のたつ思いです。
これでフルトヴェングラーの4枚の演奏を聴き終えました。どれも驚異的に素晴らしい演奏です。この中から一つだけ選ぶなら、1953年のベルリン・フィルとの熟成した演奏を選びます。最後の1954年のウィーン・フィルの演奏も忘れ難いのですが・・・、とてもいつでも気軽には聴けません。
ここまでで、フルトヴェングラーの演奏とジュリーニ、シカゴ交響楽団の演奏が新旧並び立ちます。次いで、トスカニーニ、クライバー、ハイティンク。
次回はこの交響曲第7番のウィーン・フィルの演奏のうち、1976年までの録音を聴きます。
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