有無を言わせぬ庄司紗矢香の空前絶後の凄演!ゲルギエフ&マリインスキー歌劇場管弦楽団@サントリーホール 2017.12.6
そうそう、庄司紗矢香のアンコール曲は今日は普通のアンコール曲のバッハの無伴奏パルティータ。いつももっと凝った選曲ですが、今日はオーソドックスです。彼女の無伴奏は何度も聴いていますが(実演やCD)、結構、個性的な表現であまりsaraiの好みではありません。今日もいつものパターンの演奏です。でも、今日はこの個性的な表現にも慣れてきたのか、それほどの違和感はなく、すんなりと聴けます。こういう個性的な表現もありかなと少し納得しました。みんなスタンダードな演奏ばっかりだったら、つまらないかもしれません。庄司紗矢香のバッハも考え抜いた上での表現なのでしょう。現代は色んなバッハ演奏が許容される時代なので、彼女のバッハももっと聴き込んでみましょう。
後半のベルリオーズの幻想交響曲は前半の庄司紗矢香のショスタコーヴィチで精神的体力を使い果たしたので、しっかりと聴き取る自信はありませんでしたが、それは杞憂でした。まあ、何て素晴らしい演奏だったことでしょう。ゲルギエフの精妙な棒(実に小さなタクト!)のもと、マリインスキー歌劇場管弦楽団の妙なる響きがとっても魅惑的でした。交響曲と言うよりも歌のないオペラを聴いているようなものです。音色が鮮やかで、魅惑的なストーリー性に満ちています。何よりもゲルギエフがオーケストラを完全にコントロールしていて、彼の表現したい内容が完璧にオーケストラの音として実現できています。ゲルギエフがウィーン・フィルを振ったCDを予習しましたが、それは今日の演奏に比べると何と未成熟な演奏だったでしょう。オーケストラとしてはウィーン・フィルのほうが数段上でしょうが、ゲルギエフがその思いを表現するためにはこのマリインスキー歌劇場管弦楽団のほうが数段高いところにあります。第1楽章の美しい表現、第2楽章の舞踏会のシーンの魅惑的な表現、第3楽章の自在な表現、第4楽章の断頭台への行進の切れのある表現、そして、圧巻だったのは第5楽章。いつもはエピローグとして聴きますが、今日は堂々たるフィナーレとして聴けます。それほど、際立った演奏でした。
前半の冒頭のリムスキー=コルサコフの組曲「金鶏」もベルリオーズの幻想交響曲同様にゲルギエフの精妙な指揮が冴え渡っていました。安定して、美しい響きの弦をベースに木管の自在な表現を引き出していたのはゲルギエフの力でしょう。これはまさにオペラから抜粋した組曲ですから、オペラを聴いているような感覚だったのは当然のことです。この曲を聴いていて、何か心にひっかかるところがあります。そのうちに思い当りました。木管の自在な表現はまるでストラヴィンスキーの《火の鳥》のようです。オペラというよりも、この組曲はそのままバレエ音楽になりそうです。リムスキー=コルサコフの美しい響きはそのまま、ストラヴィンスキーに引き継がれたのでしょうか。そんなことを思いながら、素晴らしい演奏を聴いていました。
そして、なんと、アンコール曲はそのストラヴィンスキーの《火の鳥》でした。もちろん、最高に素晴らしい演奏でした。
今日のプログラムは以下です。
指揮:ワレリー・ゲルギエフ
ヴァイオリン:庄司紗矢香
管弦楽:マリインスキー歌劇場管弦楽団
リムスキー=コルサコフ:組曲「金鶏」
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 Op.77
《アンコール》 J. S. バッハ:無伴奏パルティータ 第2番より「サラバンド」 BWV1004
《休憩》
ベルリオーズ:幻想交響曲 Op.14
《アンコール》
ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」から子守唄~終曲
ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番の予習は以下のCDだけを聴きました。
バティアシュヴィリ、サローネン指揮バイエルン放送交響楽団
バティアシュヴィリのヴァイオリンがとても素晴らしかったのですが、今日の庄司紗矢香はそんなレベルの演奏ではありませんでした。庄司紗矢香がゲルギエフと再録音すれば、素晴らしいCDになるでしょう。でも、現役のヴァイオリニストはCDよりもやはり実演を聴くのが一番ですね。所詮、CDは過去の記録に過ぎません。
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