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ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスへの助走:交響曲第8番①ウィーン・フィル以外1回目

ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスもいよいよ迫ってきました。予習も山場に差し掛かってきました。焦って、予習を進めていきます。

今回からはティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスの第4日(11月17日(日):交響曲第8番、第9番)のプログラムについて、聴いていきます。いよいよ、最終日のプログラムです。

なお、予習に向けての経緯はここ
交響曲第1番についてはここ
交響曲第2番についてはここ
交響曲第3番《英雄》についてはここ
交響曲第4番についてはここ
交響曲第5番《運命》については1回目はここ、2回目はここ、3回目はここ
交響曲第6番《田園》については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第7番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここ、5回目をここ、6回目をここ
交響曲第8番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第9番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここに書きました。

(全予習が完了したので、全予習へのリンクを上記に示します。参考にしてくださいね。)


今回からはまず、交響曲第8番ヘ長調 Op.93について聴いていきます。
交響曲第8番は1812年に作曲されました。前作の交響曲第7番とほぼ同時期に作曲されたことになります。非公開の初演はウィーンのルドルフ大公邸で1813年4月20日、交響曲第7番も一緒に行われました。交響曲第5番と交響曲第6番が同時に初演されたのと同じく、ペアのような関係の第7番と第8番です。交響曲第5番と交響曲第6番は両方とも革新的な作品でしたが、交響曲第7番と交響曲第8番は正統的な古典手法に回帰した作品です。公開初演は交響曲第7番に遅れて、1814年2月27日にウィーンで行われました。
この交響曲第8番は規模が小さく、地味な印象ですが、今回、改めて、聴きなおして、大変、優れた作品であることを再認識しました。規模は別にして、交響曲第7番と同等の作品です。実際、ベートーヴェン自身も大変、自信を持っていたそうです。

その名演の数々を聴いていきます。今回から3回に分けて、ご紹介します。

・ウィーン・フィル以外(11枚)
  1957年以前のモノラル盤(5枚)、1958年以降のステレオ盤(6枚)
・ウィーン・フィル(7枚)

計18枚聴きます。

今回はウィーン・フィル以外の内、1939年から1957年までの5枚を聴きます。すべて、モノラル録音になります。

以下、録音年順に感想を書いていきます。


トスカニーニ、NBC交響楽団 1939年録音 モノラル

 トスカニーニはNBC交響楽団との間でベートーヴェン交響曲全集を2回、録音しています。これは1回目の全集の録音です。

 第1楽章、まさに怒涛のような音の塊が響き渡ります。凄い気魄の演奏です。一気に気持ちが高揚させられます。トスカニーニは音楽の持つ根源的な力を知っているんですね。いやはや、凄い演奏です。
 第2楽章、実に歯切れがよくて、まるでヴェルディのオペラを聴いているような錯覚に陥ってしまいます。
 第3楽章、引き締まった表現で古典的な音楽を楽しませてくれます。アンサンブルが何とも見事です。
 第4楽章、流麗さと歯切れの良さを織り混ぜて、驚異的なアンサンブルを聴かせてくれます。この演奏を聴いて、第8番が他に劣らない名曲であることをはっきりと再認識させられました。

ワルター、ニューヨーク・フィル 1942年録音 モノラル

 ワルターの1回目のベートーヴェン交響曲全集です。フィラデルフィア交響楽団を指揮した交響曲第6番以外はニューヨーク・フィルを指揮しています。ワルターがニューヨーク・フィルを指揮したものを初めて聴いてみます。

 第1楽章、トゥッティの音の分離がよくないのが気になりますが、厳しい表現の中に柔らかさを持った演奏です。60代のワルターの覇気が感じられます。
 第2楽章、柔らかいリズムを刻みながら、潤いのある表現で音楽を展開していきます。
 第3楽章、ワルターらしく優美な演奏です。それでいて、芯の通った表現です。この曲の本質を突いていると感じました。
 第4楽章、力強さと優美さのバランスのとれた演奏。これがワルターの音楽の真髄なんでしょう。終盤の音楽の熱さにも驚きます。これもワルターなんですね。

トスカニーニ、NBC交響楽団 1952年録音 モノラル

 こちらは2回目の全集盤です。最近リリースされたトスカニーニ大全集からの1枚です。

 第1楽章、1939年の火の玉のような激しさは影をひそめましたが、アンサンブルの精度は高まり、力強く、美しい演奏です。中盤の弦楽合奏が素晴らしく、感動してしまいます。
 第2楽章、バランスのとれた見事なアンサンブルで比較的落ち着いた表現です。
 第3楽章、トスカニーニにしては、力強さの中にも典雅さを感じさせる表現に感銘を受けます。
 第4楽章、きびきびとリズムを刻みながらも旋律線を美しく表現するという実に見事な演奏。厳しい音楽の中にこそ、本当の美があることを教えられます。引き締まったコーダに大いなる感銘を受けます。

フルトヴェングラー、ベルリン・フィル 1953年録音 モノラル

 これはドイツ・グラモフォンから、The Originalsというシリーズで出ているCDで、交響曲第7番とセットになっています。亡くなる前年、晩年の演奏です。

 第1楽章、ベルリン・フィルの強力なアンサンブルが深々とした響きを轟かせます。堂々とした重量感のある、それでいて、美しい演奏。これがフルトヴェングラーのベートーヴェンです。何という雄々しい演奏でしょう。深く感動するだけです。
 第2楽章、艶やかな弦楽合奏を主体に粛々と厳かな音楽。聴き応え十分です。
 第3楽章、豊潤な音楽。祝祭的な気分さえ漂います。この曲から、こんなにたっぷりとしたものを引き出すとは驚きです。
 第4楽章、豊かな響きで始まった音楽も次第にアッチェレランドして、白熱化していきます。いったん、沈静化した嵐も終盤、激しく高揚してフィナーレ。素晴らしい演奏です。

シューリヒト、パリ音楽院管弦楽団 1957年録音 モノラル

 シューリヒトの全集盤、交響曲第7番の演奏が素晴らしかったので、全集版から、もう1曲聴いてみます。

 第1楽章、これがシューリヒトの第8番なのかと驚いてしまいます。何とも、まろやかで、ふわっとした明るい演奏です。まるで別の曲を聴いているような感じです。しかし、次第に、切れ味鋭い演奏であることにも気が付きます。だんだんと演奏に引き込まれていきます。とても素晴らしい演奏です。
 第2楽章、流麗でモダンとも言えるスタイルで古典音楽を浮き彫りにする演奏。実にスマートです。
 第3楽章、典雅なスタイルで古典音楽を見事に表現。まさに正統的な演奏です。
 第4楽章、高弦の美しい響きにのって、流麗で優美な音楽が耳に心地よく感じます。これもスマートな音楽です。こういう演奏もいいものです。


次回はこの交響曲第8番のウィーン・フィル以外の演奏、1958年以降のステレオ録音を聴きます。


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