FC2ブログ
 
  

愛は地球を救う? メシアン:トゥーランガリラ交響曲 大野和士&東京都交響楽団@東京芸術劇場コンサートホール 2018.1.20

正直言って、今日のメシアンのトゥーランガリラ交響曲には危惧を抱いていました。しかし、大野和士と東京都交響楽団は会心の演奏を聴かせてくれました。特に大野和士はこの大曲をきちんと把握しており、この複雑な曲を明快に整理した上で提示してくれました。音楽への知的なアプローチが特徴の大野和士のよさが前面に出た演奏でした。時にこういう彼の特徴が演奏上の欠点にもつながるのですが、今日はすべてがプラスに働きました。
ピアノとオンドマルトノの演奏もこのトゥーランガリラ交響曲の演奏の重要な要素ですが、これも素晴らしかったんです。とりわけ、オンドマルトノの原田 節の熟成した演奏は見事で聴き惚れてしまいました。演奏技術もさることながら、抒情的な表現が最高でした。ピアノのヤン・ミヒールスはよほど、この曲を弾き込んでいるのか、激しいタッチで素晴らしい技術を見せてくれました。ただ、少し、鍵盤を叩き過ぎでしょうか。もう少し、シャープで抑えた表現だとよかったような気もします。
トータルには、素晴らしいトゥーランガリラ交響曲でした。

激しいピアノの打鍵での強烈なリズムに対して、オンドマルトノがつややかに奏でる愛の音楽がオーケストラのひそやかな伴奏の上に響き渡り、saraiの心の琴線を強く刺激しました。メシアンが第2次世界大戦後にこの曲で表現したかったのは何だったんでしょう。それは戦争という人間の悪行に対するアンチテーゼとして、芸術家が魂で訴えられるものは唯一、《愛》であるということだったのではないかと感じます。それを表現する媒体を模索する中で、メシアンはオンドマルトノのビロードのような響きを見出したのではないでしょうか。
一方、現代の政治状況も危うい方向に向かっています。知性派の大野和士も己が音楽で何ができるかということを模索しつつ、このトゥーランガリラ交響曲で壮大な愛を表現しようと考えたと思われてなりません。音楽の力は微力ですが、愛にあふれた世界を志向することは今の時代にはとても必要なことでしょう。
そういうメッセージを今日の演奏で受け取ったような気がします。音楽は、そして、愛は地球を救えるのか・・・よくよく考えてみないといけないテーマです。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:大野和士
  ピアノ:ヤン・ミヒールス
  オンドマルトノ:原田 節
  管弦楽:東京都交響楽団

  ミュライユ:告別の鐘と微笑み~オリヴィエ・メシアンの追憶に(1992)(ピアノ・ソロ)

  メシアン:トゥーランガリラ交響曲


今回予習したCDは以下の4枚です。

 エサ・ペッカ・サロネン指揮フィルハーモニア管 ポール・クロスリー(ピアノ) トリスタン・ミュラーユ(オンドマルトノ) 1985年
 サイモン・ラトル指揮バーミンガム市響 ピーター・ドノホー(ピアノ) トリスタン・ミュラーユ(オンドマルトノ) 1986年
 リッカルド・シャイー指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管 ジャン・イヴ・ティボーデ(ピアノ) 原田節(オンドマルトノ) 1992年
 ケント・ナガノ指揮ベルリン・フィル ピエール・ローラン・エマール(ピアノ) ドミニク・キム(オンドマルトノ)2000年

この4枚が代表的な録音だと思われます。いずれも曲の真髄に迫る演奏です。その中でもサロネンの演奏が極めて素晴らしいです。録音も最上です。次いで、ラトルとシャイーも劣らずに見事な演奏を聴かせてくれます。ナガノは楽章によって、ちょっとムラのあるのが残念なところです。今回は時間がなくて、聴きもらしましたが、ハンヌ・リントゥ指揮フィンランド放響、アンジェラ・ヒューイットのピアノ独奏のCDも聴くべき1枚ですね。



↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!



関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

コメントの投稿

非公開コメント

人気ランキング投票、よろしくね
ページ移動
プロフィール

sarai

Author:sarai
オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

来訪者カウンター
CalendArchive
最新記事
カテゴリ
指揮者

ソプラノ

ピアニスト

ヴァイオリン

室内楽

演奏団体

リンク
Comment Balloon

昨日投稿した記事の一部に誤りがありました。ドイツ騎士団の中庭はパスしないで、ちゃんと見ていました。追記・修正しました。申し訳ありません。

08/07 00:28 sarai

えりちゃさん、saraiです。お久しぶりです。

これは昨年の9月のウィーンですが、現在のコロナ禍では、古き良き日という風情ですね。もう、ポスト・コロナでは、行けたにし

07/20 12:41 sarai

Saraiさま、
お元気ですか?
新型コロナウィルス、自粛中。
このウィーンの散策を読んでいると、なんだか切なくて悲しくなってきました。
次はいつ行けるのかな、とか思う

07/20 05:08 えりちゃ

はじめまして。ブログ拝見させていただきました。私は、個人ブログを運営しているyuichironyjpと申します。フリーランサーとして活動しており、フリーランスで稼ぐ方法や、

06/14 23:46 Yuichironyjp

ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR