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ファウストの奏でるブラームスは一味違う・・・カンブルラン&読売日本交響楽団@みなとみらいホール 2018.1.21

なんと言ってもイザベル・ファウストの弾くブラームスのヴァイオリン協奏曲が注目のコンサートです。ブラームスの室内楽でも素晴らしい録音を実現しているファウストがどのような演奏を聴かせてくれるか、楽しみです。

地味なドレスのファウストが登場。オーケストラの長い前奏が始まります。シルヴァン・カンブルランが指揮する読売日本交響楽団は明るい響きのブラームスです。若干、違和感がありますが、フランス人指揮者のカンブルランにとってのブラームスは明るいイメージなのかな。このブラームスのヴァイオリン協奏曲が作曲されたヴェルター湖の夏の光は確かに明る過ぎるほどのものでした。この明るく、透明感に満ちた響きのオーケストラに対して、ファウストの独奏ヴァイオリンが決然とした雰囲気で入ってきます。いきなり、精神性の高いファウストの演奏が繰り広げられます。この演奏はハイリック・シェリングのヴァイオリンを思い起こさせるような感じです。しかし、シェリングとは精神性の高さでは似ていますが、そこまでの厳格さとは異なり、肩の力が抜けたような柔和さが醸し出されています。その適度の柔らかさが明るい響きのオーケストラと調和して、室内楽的なアンサンブルの雰囲気でブラームスの音楽を展開していきます。強い感動と言うよりも、音楽の楽しさを味わうといった風情です。こういう音楽の作り方が最高に素晴らしく感じられたのは、第2楽章です。天国的な美しさというか、天使が奏でるミューズの歌といった、究極の美がそこにはありました。ただただ、その美しい響きに耳を傾けて、楽趣を味わい尽くすのみです。そして、第3楽章は一転して、楽しい舞曲が展開されます。いつも聴くブラームスのヴァイオリン協奏曲とは異なる、大人の音楽でした。勢いで一気呵成に進行するのではなく、肩の力を抜いて、音楽の奥底にある美を楽しむという感覚でした。

アンコール曲はてっきりバッハの無伴奏を弾くのかと思っていたら、なんと現代曲です。誰の作品か、分かりませんでしたが、バルトークと同じハンガリーの作曲家クルタークの作品でした。「サインズ、ゲームとメッセージ」は弦楽のための作品集で、弦楽三重奏やヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの独奏曲の集合体です。その中のヴァイオリン・ソロのとても短い作品でした。バルトークを得意とするファウストはクルタークも演奏するんですね。

休憩後、最初の曲はマーラーが編曲したバッハの管弦楽組曲という珍しい曲目です。原曲に比べると、規模の大きい弦楽アンサンブルが主体になっています。バッハの音楽をムードミュージック風に聴かせる感じです。ここは難しいことは抜きにして、美しい響きに身を委ねます。

最後の曲はベートーヴェンの交響曲第5番ハ短調「運命」です。これは現代風の速いテンポのきびきびした演奏です。こういう演奏にはオーケストラのアンサンブル力が求められますが、さすがに読響のアンサンブルは素晴らしいです。まさに一糸乱れずといった感じの自在の演奏です。saraiは昔気質の音楽ファンなので、重厚な演奏を好みますが、まあ、これはこれで楽しめます。第4楽章は第1楽章ほどは走らずに圧巻の盛り上がりでした。感動はしませんが、気持ちよく聴けました。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:シルヴァン・カンブルラン
  ヴァイオリン:イザベル・ファウスト
  管弦楽:読売日本交響楽団 長原 幸太(コンサートマスター)

  ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77
   《アンコール》クルターク:「サインズ、ゲームとメッセージ」より

   《休憩》

  バッハ(マーラー編):管弦楽組曲から第2曲“ロンドとバディネリ”BWV1067,3曲“アリア”BWV1068,4曲“ガヴォット”BWV1068
  ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調 Op.67「運命」


ブラームスのヴァイオリン協奏曲を予習したCDは以下です。

 イザベル・ファウスト、ダニエル・ハーディング指揮マーラー・チェンバー・オーケストラ 2010年

なかなか、素晴らしい演奏です。カデンツァは珍しいブゾーニの作です。ティンパニの伴奏がずっと続くのには驚きます。なお、今日の演奏も同じものでした。

マーラー編曲のバッハの管弦楽組曲を予習したCDは以下です。

 リカルド・シャイー指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 2004年

この録音はマーラーの交響曲第3番の2枚組の余白に収録されたものです。やはり、バッハは原曲のほうがいいですね。演奏はとても立派なのですが・・・。

ベートーヴェンの交響曲第5番を予習したCDは以下です。

 オットー・クレンペラー指揮ウィーン・フィル 1968年

この録音は1968年のムジークフェラインでのウィーン音楽週間のライヴ録音です。晩年のクレンペラーがウィーン・フィルを振った素晴らしい演奏です。このときのライブ録音は8枚組のCDですが、どの演奏も歴史に残る素晴らしいものです。クレンペラーの巨匠性が遺憾なく発揮されています。その悠々とした演奏のスケール感の大きさは揺るぎないものです。saraiもこのところ、クレンペラーの偉大さに今さらながら魅了されています。



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ジャンル : 音楽

       ファウスト,

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