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軽やかな蝶の飛翔にも似て・・・ミンコフスキ&レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル@東京オペラシティコンサートホール 2018.2.27

ピリオド奏法とかモダン奏法とか言うよりも何か独特の感性に満ちた音の響きに魅了されました。ふわっと軽やかな響きがさわやかに聴くものの体の上を通り過ぎていきます。春のそよ風ののような風情です。ミンコフスキ&レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルは以前、パリのオペラ座でグルックのオペラ《アルチェステ》を演奏するのを聴きましたが、そのときは繊細かつ華麗なアンサンブルに魅了されました。今回のようにロマン派の音楽を聴くと、彼らの音楽の個性がより深く感じられます。特に強く感じたのはミンコフスキの耳がすごく研ぎ澄まされていて、特別な感性を持っているということです。でないと、オーケストラからあんな響きは引き出せないでしょう。よく才人ミンコフスキと言われますが、saraiは天才的な耳を持った音楽家だと感じます。都響を指揮したときも彼は独特の響きを引き出していました。音楽の構成とか表現以前に音の響きに対して、超人的に敏感な耳を持っていることを今日、強く確信しました。

今日はオール・メンデルスゾーン・プログラムです。ピリオド奏法も昔のようにバロック専門ではなく、古典派作品はもちろん、ロマン派作品から20世紀作品も取り上げます。もちろん、それらの作品が演奏された時代に遡って、作曲された当時の演奏スタイルを再現するというものです。今年6月にはまた、この同じホールでフランソワ=グザヴィエ・ロト指揮レ・シエクルでストラヴィンスキーの《春の祭典》が演奏されますし、来年の2月にはクルレンツィス指揮ムジカエテルナがオール・チャイコフスキー・プログラムをひっさげて初来日を果たします。そういう時代にあっという間になってしまいました。今日はそのさきがけとしての演奏を楽しみます。

前半は序曲《フィンガルの洞窟》から始まります。波のうねりを思わせるメロディーが弦楽器セクションで繰り返し奏でられます。その響きに重厚さはなく、繊細で軽やかです。少し透明感のあるピュアーな響きです。ピリオド奏法を感じると言うよりも、真正のロマンを感じさせられます。ただし、熱いロマンではなく、爽やかに吹き抜けるようなロマンです。10分程度の短い曲ですが、もっと長い時間聴いていたような感覚に陥るような聴きごたえでした。終盤に木管セクションの演奏があり、そのときのクラリネットの素朴な音色には参りました。音量は小さいのですが、聴いているものの心をつかんで放さないような磁力に満ちていました。そして、その木管を引き継いだ弦セクションの絶妙なバランスには思わず、心の中でため息をついてしまいます。実に味わいの深い演奏でした。

前半のメインは交響曲第4番《イタリア》です。本来は序曲《フィンガルの洞窟》と同じ音楽素材を持つ交響曲第3番《スコットランド》を持ってくるべきところですが、あえて、曲順を変えたのは交響曲第4番《イタリア》の演奏時間が交響曲第3番《スコットランド》よりも短くて、前半と後半の時間バランスをとったことも大きいのでしょうが、ミンコフスキが音楽的に交響曲第3番《スコットランド》をメインに据えたコンサートだと考えたことが一番だと推察されます。それはsaraiも同意見です。saraiは交響曲第4番《イタリア》を大好きなのですが、交響曲第3番《スコットランド》の音楽的な充実度はそれを上回るところがあると思います。ロマンの香りの高さに満ち溢れた傑作ですからね。
ともあれ、交響曲第4番《イタリア》の演奏はトスカニーニの録音で聴くような鋭く突き抜けるようなものではなく、爽やかな風にのって、ふわふわと飛翔するような軽やかさにあふれたものです。ある意味、トスカニーニの演奏は現代的なスタイルを突き詰めたようなところがあって素晴らしいのですが、ミンコフスキは19世紀前半の自由で優しい雰囲気を表現しようとしたのかもしれません。第4楽章のサルタレッロでさえも熱狂的でありながらもそれは限定的で爽やかなロマンの香気を表現したものになっていました。感動的な演奏ではありませんが、音楽のエスプリを味わい尽くすような素晴らしい演奏でした。

後半は交響曲第3番《スコットランド》です。演奏のコンセプトは前半に演奏された交響曲第4番《イタリア》と同様です。しかし、この交響曲第3番《スコットランド》のほうがミンコフスキの表現スタイルにはぴったりはまっていたようです。そういうこともあって、この曲を後半に持ってきたんでしょう。第1楽章の荒れ果てたスコットランドの古城を思わせるノスタルジックな雰囲気は秀逸なものになっていました。これぞロマン派という感じの素晴らしい演奏です。しかし、圧巻だったのは第3楽章です。究極に天国的とも思える美しい演奏が続き、深い思いに至ります。弦と木管の絶妙なバランスの響きがとりわけ見事でした。第4楽章は終盤、祝典的な響きで高潮し、大変な感銘を受けました。saraiが聴いた最高のメンデルスゾーンの演奏でした。アンコールの準備はしていたようですが、ミンコフスキはあえてアンコール曲の演奏は回避しました。saraiもその判断を支持します。素晴らしい演奏の後には、アンコール曲はなしがよいですね。その代わりに後半の演奏の冒頭にミンコフスキの長い話がありました。内容は・・・あまりなかったかな。もうちょっと唸らされるようなことを言ってほしいところでした。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:マルク・ミンコフスキ
  管弦楽:レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル

  メンデルスゾーン:序曲《フィンガルの洞窟》Op.26
  メンデルスゾーン:交響曲第4番イ長調 Op.90《イタリア》

   《休憩》

  メンデルスゾーン:交響曲第3番イ短調 Op.56《スコットランド》


最後に予習について触れておきます。
序曲《フィンガルの洞窟》は軽く以下のCDを聴きました。

 クラウディオ・アバド指揮ロンドン交響楽団 1985年

アバドはメンデルスゾーン向きの指揮者ですが、これはそこそこの演奏かな。


交響曲第4番《イタリア》を予習したCDは以下です。

 パブロ・エラス=カサド指揮フライブルク・バロック・オーケストラ 2015年

今日のピリオド奏法の演奏に備えて、同様のCDを聴きました。まあまあの演奏ですが、トスカニーニの名演には遠く及びません。やはり、奏法の違い以前の問題もあります。


交響曲第3番《スコットランド》を予習したCDは以下です。

 パブロ・エラス=カサド指揮フライブルク・バロック・オーケストラ 2015年
 オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団 1960年

これも同様にピリオド奏法の演奏に備えて、カサドの演奏を聴きましたが、どうにも満足できずにクレンペラーの名演を聴き直しました。いやはや、クレンペラーはロマンの香り高い演奏を聴かせてくれました。最高の演奏です。やはり、オリジナル楽器とかモダン楽器とかよりも、音楽表現の深さが大切ですね。



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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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07/20 12:41 sarai

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