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コバケン、超絶の幻想交響曲 読売日本交響楽団@みなとみらいホール 2018.3.21

いやはや、物凄い演奏でした。もちろん、今年最高の演奏でしたし、これまで聴いたなかで最高の幻想交響曲でした。昨年12月にゲルギエフ&マリインスキー歌劇場管弦楽団の素晴らしい演奏を聴いたばかりですが、今日はそれ以上の極限のオーケストラ演奏でした。なにが凄かったって、コバケン(いや、以降、コバケン様と呼ばせてもらいます)のやりたい放題の思い切って踏み込んだ音楽表現の指揮棒に完璧に反応した読売日本交響楽団のアンサンブルとその響きの美しさが素晴らし過ぎたんです。このように指揮者とオーケストラが完璧に呼応する演奏はかつて1回だけ聴いたことがあります。そのときもコンサートホールはくしくもこの横浜みなとみらいホールでした。今は亡きガリー・ベルティーニが都響を引き連れて、マーラーの交響曲第5番を演奏したときも凄かったんです。saraiはこのとき初めてマーラーの何たるかを理解したんです。その後、あの伝説的なマーラー・ツィクルスが始まりましたが、残念ながら、この最初のマーラー演奏を超えることはありませんでした。同じマーラーの交響曲第5番が同じコンビで演奏されましたが、その内容は別物でした。音楽って難しいものだとそのときに実感したのを思い出します。ということは今日のコバケン様&読売日本交響楽団の幻想交響曲も1度きりの奇跡的な名演だったのかもしれません。日本人指揮者が日本のオーケストラを振ったコンサートでこれ以上のものは思い出せません。多分、生涯最高の幻想交響曲になることでしょう。


まあ、これ以上、書くことはないのですが、一応、演奏を振り返ってみましょう。第1楽章からコバケン節は全開。終始、遅めのテンポで細部を磨き上げた演奏が続きます。細かいテンポの揺れ、思い切った強弱で緊張感の高い演奏です。コンミスの日下紗矢子がリードする高弦、思い切った響きのチェロとヴィオラが絶妙とも思える響きを重ねていきます。次はどうなるのって、息を呑みながら聴き入ります。そして、木管が実に安定した旋律を奏でていきます。そうです。コバケン様は実にメロディーラインを立てるのがうまいんです。これが聴きやすさにもつながっています。各楽器群がメロディーラインを引き継ぎながら、主役になったり、脇役になったりしていきます。これって普通のことではありますが、それが本当に絶妙に決まっているんです。だからと言って、決して凡庸な演奏に陥らないところが凄いです。第1楽章を聴き終っただけでふーっと息をついてしまいます。第2楽章のワルツも基本的には同じですが、さらに華やかさが加わります。天国的な美しさにため息をつきます。そして、圧巻だったのは第3楽章です。まずは北村貴子さんのコール・アングレを称賛しないといけませんね。ともかく、この人は名人です。その名人に思い切った演出を施したのはコバケン様でしょう。客席側のオーボエとの掛け合いは見事としか言いようがありません。ところでオーボエは普通は舞台裏ですよね。今まで聴いた幻想交響曲はみなそうだったような記憶があります。コバケン様の凝った演出で素晴らしい田園風景が展開されます。続く弦楽セクションの演奏の高揚には思わず、深く感動してしまいます。何と美しい音楽なんでしょう。コバケン様の自在なオーケストラのドライブには驚愕するだけです。その些細な棒の動きで音楽が変幻自在に移り変わっていきます。ベルリオーズがこの曲を作ったときによもや200年ほど後にこのアジアの辺境の地で自作がこのように演奏されるとは想像だにしなかったでしょう。最高の音楽、最高の演奏が繰り広げられていきます。大袈裟ではなく、saraiは気絶してしまいそうになりながら、この奇跡的な演奏をじっと聴いています。また、北村貴子さんのコール・アングレの素晴らしい響きが戻ってきて、ティンパニーの遠雷の響きと呼応しながら、この最高の楽章が閉じられます。第4楽章は凄まじい響きで圧倒される断頭台への行進です。フィナーレのギロチンの刃で断罪されるところではもう悶絶する思いです。そして、しめくくりにふさわしい第5楽章。それまでのすべての要素を復習しながら、コバケン様のやりたい放題の指揮と完ぺきなオーケストラのアンサンブルが続いていきます。どの細部も見事過ぎる演奏です。ただし、今日の演奏に一つだけ傷が登場します。鐘の音が微妙に音程を外しています。これは気持ちが悪い。クライマックスなのにね。それ以外は完璧にクライマックスが盛り上がっていきます。凄過ぎるフィナーレです。何という演奏だったのでしょう!

前半のプログラムもコバケン様の美質が活かされた素晴らしい演奏でしたが、後半の幻想交響曲を聴いた後ではもう振り返る必要はないでしょう。一つだけ言えるのは極めて明確にメロディーが立っていたことです。名曲アワーのような2曲、「セビリアの理髪師」序曲と「アルルの女」第2組曲は誰もが細部まで知り尽くしていますから、納得できる演奏は難しいと思いますが、実に見事な演奏でした。

ところで珍しくアンコールがありました。3.11の大震災を悼んで、『カヴァレリア・ルスティカーナ』の間奏曲が演奏されました。オペラに登場する悲劇の女性サントゥッツァの面影を思い出させる悲哀に満ちた曲に心が反応します。うっすらと涙が滲みます。大震災の被害者のかたたちへの哀悼の気持ちも重なります。合掌!


今日のプログラムは以下です。

  指揮:小林 研一郎
  管弦楽:読売日本交響楽団 日下 紗矢子(コンサートマスター)

  ロッシーニ:歌劇「セビリアの理髪師」序曲
  ビゼー:「アルルの女」第2組曲

   《休憩》

  ベルリオーズ:幻想交響曲 Op.14

   《アンコール》

   マスカーニ:オペラ『カヴァレリア・ルスティカーナ』より、間奏曲

最後に予習について、まとめておきます。

ロッシーニの歌劇「セビリアの理髪師」序曲を予習したCDは以下です。

 クラウディオ・アバド指揮ロンドン交響楽団 新盤(RCA) 1978年

素晴らしい演奏です。この頃のアバドは実に颯爽としていました。

ビゼーの「アルルの女」第2組曲を予習したCDは以下です。

 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル 1970年

意外にこの曲はいい録音がありません。カラヤンはこの手の音楽は間違いありません。本当はフランスの演奏が聴きたいのですが、これと言った絶対的な録音がないのが残念です。

ベルリオーズの幻想交響曲を予習したCDは以下です。

 シャルル・ミュンシュ指揮パリ管弦楽団 1967年

今更ながらですが、この曲の決定盤はこれです。1枚だけ聴くなら、これしかないでしょう。ただ、今回は初めてハイレゾ(SACD)で聴いてみました。あまりの音の鮮度のよさに仰天してしまいました。ハイレゾを聴くともう元に戻れませんね。ちなみにsaraiがこの曲を聴き覚えたのはボストン交響楽団(1962年)のほうです。これはハイレゾではありませんが、XRCDの素晴らしい音質のCDがあります。こっちを聴いてもよかったんですが・・・。


ところで、来週はこの幻想交響曲を今度はインバル指揮東京都交響楽団で聴きます。もちろん、素晴らしい演奏になるでしょうが、今日ほどの演奏にはならないでしょうね。



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