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さよならはベートーヴェンで:マリア・ジョアン・ピリス・ピアノ・リサイタル@サントリーホール 2018.4.12

人はどこから来て、どこに去っていくのか・・・マリア・ジョアン・ピリスの最後の来日公演の演奏を聴きながら、saraiの頭の中に去来した思いは音楽自体とは関係なさそうなことでした。しかし、そういう想念はピリスのひたむきとも思える音楽から生まれたものだったのです。最初に「悲愴」の第1楽章の冒頭のピアノが響きが聴こえてきたとき、そのかみしめるような遅いテンポで表現されていたのは劇的というよりも、実に内省的なものです。はっと気付きます。このピアニストは彼女の人生すべてを今日のベートーヴェンの音楽に込めて表現しようとしているのだと。実に心の込められた演奏が続きました。意外なことに素晴らしいピークは「テンペスト」の第3楽章にありました。ピリスの最盛期を思わせるようなテクニックで熱い魂のほとばしりが聴けました。そして、最後に弾いたピアノ・ソナタ第32番のアリエッタではまさに彼女の思いのたけが延々と語られます。しっかりとこの不世出のピアノの名人が行き着いた境地を受け留めさせてもらいました。それはピアニスト自身にも聴衆にも誠実であろうとする姿です。うまく弾こうとか、そういうことではなくて、自分のすべてを、あるいは自分の人生をピアノに託して、聴いている人と心を通い合わせるという自然な行為を最後に成就するということです。結果として、ピアニストであるということを超えて、心でコミュニケートする芸術家に昇華したのが今日のピリスでした。

彼女とはCDの演奏で知り合い、長らく、CDだけでの縁が続きました。それが20年以上も続き、実演に接したのはようやく5年前のことでした。ハイティンク指揮ロンドン交響楽団との共演でモーツァルトとベートーヴェンのピアノ協奏曲を聴いたときです。大変、感銘を受けました。その翌年、待望のソロリサイタルで素晴らしいシューベルト(ピアノ・ソナタ第21番)を聴きました。そのときの記事はここです。結局、実演に接したのは今回も含めて5回だけです。しかし、十分に彼女の名人ぶりは聴かせてもらいました。

日本ではまだまだコンサートが残っていますが、saraiはこれでピリスにお別れします。最後にふさわしいコンサートでした。

最後に今日のプログラムを紹介しておきます。

 ピアノ:マリア・ジョアン・ピリス

 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 Op.13 「悲愴」
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番 ニ短調 Op.31-2 「テンペスト」

  《休憩》

 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 Op.111

   《アンコール》
     ベートーヴェン:『6つのバガテル』 Op.126 より 第5曲 バガテル ト長調 Quasi allegretto



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ジャンル : 音楽

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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

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07/08 18:59 sarai

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07/08 15:53 じじい@

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久々のコメント、ありがとうございます。
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