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ベルリン・フィル+ペライア@フィルハーモニー 2012.4.13

ベルリンのフィルハーモニーのホールへ初見参です。
最前列の最高の席で、目の前で世界最高のピアニストとして崇めているマレイ・ペライアのピアノを聴くことができ、その素晴らしい演奏に感動しました。共演のサイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルも切れ味鋭い演奏でバックアップ。今まで聴いた最高のシューマンのピアノ協奏曲です。やはり、生での緊張感はたまりません。

今日の演奏者、プログラムは以下です。

 指揮:サイモン・ラトル
 ピアノ:マレイ・ペライア
 ソプラノ:ケイト・ロイヤル
 ソプラノ:バーバラ・キント
 バリトン:クリスティアン・ゲルハーヘル
 管弦楽:ベルリン・フィル
 合唱:Rundfunkchor Berlin

 べリオ:ソプラノと14楽器のためのシチリア風子守唄《E vo》
 シューマン:《夜の歌》Op.108
 シューマン:ピアノ協奏曲イ短調 Op.54

  《休憩》

 べリオ:メゾソプラノと5人の演奏者のための《O King》
 フォーレ:レクィエム ニ短調 Op.48

まず、合唱団が入場。次いでベルリン・フィルの面々が入場。期待感が高まります。オーケストラは対向配置です。最前列の席なので、演奏者が入場してくる控えの間の様子が見えます。ソプラノのバーバラ・キントに続いて、ラトルが入場です。キントは若いソプラノでまったくの初聴きです。ラトルは以前よりもまた太った感じ。ご自慢のふさふさした銀髪も頭頂部が透けています。若かった彼もこれから円熟期を迎えることになるのでしょうか。
ベリオの作品は歌曲というよりも、声を楽器にしたような作品です。ベルリン・フィルのフルオーケストラが勢ぞろいしていますが、その中で演奏しているのはトップ奏者たちだけです。その高度なテクニックの演奏をバックにキントの熱唱です。どんな楽譜か、想像もつきませんが、パーフェクトに思える歌唱というか、声を使った演奏です。だんだん、熱を帯びた声の演奏になっていきます。子守唄という雰囲気からは程遠い感じですが、妙に一体感を持って、演奏に集中できます。こちらまで熱くなって、聴きいった演奏でした。この作品も現代音楽という枠を超えて、古典として消化されているように感じました。
そのまま、間を置かずにシューマンの《夜の歌》に突入していきます。男性合唱の地味な歌唱から始まるので、そんなにベリオとの違和感は感じません。後半にはいると、女声合唱が主体になり、シューマンらしいロマンあふれる曲想で聴く者の胸に抒情感を誘います。やはり、シューマンはいいですね。この旅での最初のシューマンですが、それにふさわしい爽やかなロマンで盛り上げてくれます。今回の旅ではこのベルリン・フィルと来週のウィーン・フィルでシューマンのオーケストラ作品の傑作を聴く予定です。この《夜の歌》は前奏曲のように胸に響きました。

ここで演奏は一区切りで万雷の拍手です。次の演奏に備えて、セッティングが始まります。最初からステージの一番前にピアノが置かれていましたが、オーケストラの座るステージからは1段低くなっていました。2階層のまま、演奏するのかなと思っていたら、ピアノが置いてあった部分のステージがせりあがり、後方のステージと同じ高さになり、ほかのホールと同様な形でおさまりました。さすがにベルリンのステージは機械化されています。
準備が整い、控の間をのぞきこむと、ペライアの顔が見えます。期待でわくわくします。彼のピアノが聴きたくて、わざわざベルリンまで足を運んだんです。

いよいよ、ペライアラトルの登場です。saraiのまさに目の前にペライアが腰かけました。シューマンのピアノ協奏曲の耳馴染んだフレーズが流れ始めます。ペライアの顔の表情も鍵盤をたたく指の動きもすべて見えます。ピアノの向こうからはラトルのペライアへのアイコンタクトも見てとれます。第1楽章の中間部あたりのピアノの静かなさざ波のような響きの美しいこと、感動して聴き入ってしまいます。ベルリン・フィルもピアノが休む部分では切れ味鋭い合奏でシューマンの情感あふれる曲想を見事に表現します。フィナーレに向かって、ペライアのピアノもダイナミックなタッチで盛り上がっていきます。ペライアのピアノは響きの美しさはもちろんのこと、熱い感情のほとばしりも感じさせてくれます。まさに最高のシューマンです。特にカデンツァはシューマンのピアノの独奏曲を聴いている感じでうっとりするばかりでした。
第2楽章は全体、同じメロディーが繰り返され、いつもは退屈することもありますが、この日の演奏は一味違います。すべてのメロディーに心が込められ、移りゆくニュアンスに心が翻弄されます。実に美しい音楽です。ペライアの美しいタッチで紡ぎだされる瑞々しい響きに酔ってしまいそうです。シューマンの音楽の真髄を聴いた思いです。
そのまま、第3楽章にはいります。熱い思いが爆発し、祝典的にも思える喜びの歌です。永遠にも感じる長い楽章ですが、感動は増すばかりです。ペライアのシューマンはこんなに素晴らしいとは、やはり生で聴くということはこういうことですね。終盤に向け、さらに音楽は盛り上がり、深い感動を覚えながら、フィナーレです。きっと、もう2度と、こういうシューマンのピアノ協奏曲は聴けないと思います。ピアノのタッチミスもいくつかはありましたが、機械のようなパーフェクトな演奏が聴きたいんじゃありません。音楽は美しくなくてはならないって言ったのはこのペライアだったでしょうか。美しく、ロマンに満ちた最高の演奏でした。ペライアは今生きているピアニストの中で世界最高であるという確信をますます強くした今夜の演奏でした。やはり、ベルリンまで来て、本当によかったと幸福感に浸りました。

休憩にはいり、目の前のピアノはぐんぐんせり下がり、地下2階まで下がり、舞台下に引っ張っていかれました。すごい構造に感心しきりです。

休憩後はまた、ベリオの声楽作品です。今度はシンフォニアです。ソプラノは長身のケイト・ロイヤルです。今度もフルオーケストラの中で演奏者は数名です。オーケストラはこの後のフォーレのレクィエムに備えた編成になっています。コンサートマスターは何と、左側に陣取った2部編成のヴィオラのトップ奏者です。1部編成のヴァイオリンは右側に配置です。
このベリオの作品は紛れもなく、ソプラノの声は楽器扱い。弦楽器がトリルを奏でると、声も巧みにトリル。アタックだけが強く発せられ、詠唱のような単調な響きが積み重ねられていきます。それでも妙に気がそそられて行きます。そして、フィナーレで強く、高い声ではっきりと「マルティン・ルーサー・キング」と歌われ、音楽はカタルシスを迎え、フィナーレ。saraiは何の脈絡もなく、若い頃に読んだカフカの短編小説「流刑地にて」を思い起こしました。小説は処刑される者が処刑機械によって処刑針で肉体に刻み付けられる判決内容を12時間かけて、最後に理解するという戦慄の内容です。このベリオの作品もずっと何の内容なのか分からずに聴いていて、最後に暗殺されたキング牧師のことだと理解するわけです。ある意味、聴衆は処刑される立場であって、人類としてテロの責任を負っていることを最後に理解して、強い自省感にとらわれなくてはならないといっているように思えました。カフカの小説でも処刑される人間は自分が何の罪を犯したのか、当初はまったく理解していないのと同様に、人類として、差別や無関心という罪を常に負っていることをベリオは訴えたいのかと勝手な解釈をしてしまいました。
ベリオの作品を序章として、続けて、フォーレのレクィエムの演奏が始まります。フォーレの第3改訂版通りのヴァイオリンも含めたフルオーケストラ編成です。ただし、ヴァイオリンの出番はスコア通り、半分以下で、手持ち無沙汰にしていました。最近はオリジナルの演奏も流行っていて、その場合、ヴァイオリンは独奏のみのバージョンですが、フォーレの清澄な音楽を聴くにはオリジナルバージョンのほうが好ましく感じることも多いです。この日の演奏は通常のフルオーケストラ版でしたが、さすがにベルリン・フィルの演奏能力は高く、美しき清らかな響きに満ちていました。バリトンのゲルハーヘルはさすがの美声で最高の出来。特に第6曲のリベラ・メの素晴らしい歌唱にはうっとりとするばかりでした。少しドラマチック過ぎるきらいは感じましたが、こんな素晴らしい歌唱の前ではそういう個人的な趣味は引込めましょう。第4曲のピウ・イエスはとても好きな曲です。実は誰が歌っても聴き惚れてしまいます。この日のロイヤルの歌唱にも、感動して聴き入ってしまいました。美しく澄み切った高音でした。第5曲のアニュス・デイはヴァイオリンも含めた弦楽器の響きが木陰の清涼感を醸し出し、素晴らしい演奏です。バッハのマタイ受難曲のイエスの死の後の清涼感ある音楽を想起してしまいます。ベリオとフォーレを一体として構成する企画はちょっと無理があった感じですが、それぞれ好演でした。

この日はフィルハーモニーに初デビューで、素晴らしいシューマンが聴けて、超満足でした。来週からはウィーンで音楽三昧の日々です。本当に音楽って素晴らしい!


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ジャンル : 音楽

       ペライア,        ラトル,

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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai

まさにマーラー6番な状況です笑

04/11 17:51 kico

お互い、残念でしたね。今年でヨーロッパ遠征を終わりにする予定でしたが、悲劇的な状況になりました。天はまだ我に旅を続けよというご託宣を与えたのでしょうか。1年延期

04/11 03:13 sarai

以前にもコメントさせていただいた者です。来ましたね、楽友協会からのメール。私たちはとりあえず1年延期としましたが、どうでしょうね。困っている人が多い中贅沢な悩み

04/11 00:33 kico

お返事ありがとうございます。
本当に!私もレイルジェットや美術館の手配もしているので、祈るような気持ちです。

03/10 19:06 kico
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