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藤木大地の絶唱! 高木綾子の超絶技巧!@宮崎芸術劇場演劇ホール 2018.5.11

「レガシー ~ 武満徹の残したもの」と題されて、武満徹と彼の仲間たちの作品が11人の日本を代表する演奏者たちによって熱演されました。
とりわけ、前半のプログラムの演奏が心に残りました。

1曲目は武満徹のオーケストラ作品の指揮で定評のあるオリヴァー・ナッセンが武満徹の死を悼んで作曲した「祈りの鐘 素描」です。ピアノ独奏曲です。以前、ナッセンが都響を指揮して武満徹の《精霊の庭》を演奏したのを聴きましたが、あれは12音の音列によるテーマが精妙に変容する作品でした。ナッセンが作曲したこの「祈りの鐘 素描」はそもそも、武満徹がピーター・ゼルキンのために同一の題名で作曲する予定だったそうで、彼の死で作曲されなかったそうです。ナッセンはあえて同一の題名で武満徹を哀悼して作曲したんだそうです。で、この作品も《精霊の庭》を思い起こさせるように、12音のセリー風の主題がピアノの音色の変化をつけながら変容していく楽曲です。ナッセンの武満徹への敬愛が滲み出るような作品でした。野平一郎のピアノもそのあたりを見事に表出させていました。

2曲目は武満徹の初期の作品である「妖精の距離」です。シュールレアリスムの詩人、瀧口修造の同名の詩に触発されて作曲されたそうです。ヴァイオリンとピアノのために書かれた作品ですが、そもそもシュールレアリスム音楽なるものはこれまで聴いたことがありません。今回のコンサートのために初めて、この作品を聴きましたが、シュールレアリスムというよりもフランスの印象派、それもドビュッシーを連想するような作品です。息の長い、たおやかなテーマが変容していく様は近代フランス音楽のエスプリを感じます。武満徹自身も原詩に透明性を感じ取ったそうですが、ドビュッシーの1級の作品に見られる透明性がこの作品にも感じられます。ドビュッシーのヴァイオリン作品のCDの中にこの作品が紛れ込んでいたら、saraiはドビュッシーの作品だと信じてしまうかもしれません。ヴァイオリンの徳永二男とピアノの野平一郎は素直な音楽表現で、武満徹の若き日のリリシズムを余すところなく感じさせてくれました。武満徹の原点のような作品が聴けて、満足です。

3曲目以降は武満徹の声楽作品《Songs》からの数曲です。カウンターテナーの藤木大地はその類稀なる美声と音楽への強い感情移入によって、共感できる素晴らしい歌唱を聴かせてくれました。とりわけ、最初の「MI・ YO・ TA」はまったくの初聴きでしたが、聴いていて、胸の熱くなるような歌唱でした。武満徹の若い修行時代に支援をした黛敏郎が、その修行時代に武満徹が書いたメロディーを覚えていて、武満徹の葬儀の際に口ずさんだのがこの曲だったそうです。それを聴いた詩人の谷川俊太郎が感銘を受けて、後付けで詩を付けたそうです。ですから、武満徹の死後に作られた曲ですね。谷川俊太郎の詩は秀逸で武満徹への愛情に満ちています。気心の知れた芸術家仲間が心を共有して作り上げた魂の音楽です。その魂が藤木大地の美しくも哀惜極まりない声で蘇ります。これを聴いて、感動せずにいられる音楽愛好家はいないでしょう。まさに一期一会のような絶唱でした。絶唱と言えば、最後にアンコールとして歌った「死んだ男の残したものは」は凄絶とも思える歌唱でした。静かに歌い始めましたが、次第に高潮していき、後半では立ち上がっての絶唱。最後はまた静かにパウゼを何度もはさみ、途切れ途切れに心を込めた圧巻の消え入るようなピアノでのしめくくり。今の時代にベトナム反戦歌を歌うことの意義を十分に感じさせてくれました。感動しました。

後半のプログラムは前半ほどの盛り上がりに欠けたのが残念です。

それでも1曲目の池辺晋一郎の「君は土と河の匂いがする」は室内楽の醍醐味を感じさせるような見事な演奏でした。何と言っても、メインのメロディー楽器を受け持った高木綾子のフルートの完璧なテクニックとアーティキュレーション、それに最高に美しい響きが音楽を聴く喜びを満喫させてくれました。変わった編成の室内楽ですが、フルート五重奏、あるいはギター伴奏付のフルート四重奏、あるいはギター伴奏付のフルートと弦楽三重奏と言った風情の作品で、池辺晋一郎としてもなかなかの作品でした。フルートの魅惑的な響きを中心にとても聴き映えのする作品でした。こういうフルートを聴くと、高木綾子のフルートで武満徹のフルート作品を聴きたくなってしまいます。今回、どうして、武満徹のフルート作品を演奏しなかったんでしょう。最後の湯浅譲二の弦楽四重奏の作品よりも高木綾子の演奏する武満徹の作品で締めたほうが聴衆の満足度は高かったと思いますけどね。野平さん、どうなんでしょう。

プログラムは以下です。

 第23回宮崎音楽祭 演奏会〔4〕エクスペリメンタル・コンサート
  「レガシー ~ 武満徹の残したもの」

  ナッセン:「祈りの鐘 素描」 Op.29
   ピアノ:野平一郎
  武満徹:「妖精の距離」
   ヴァイオリン:徳永二男
   ピアノ:野平一郎
  武満徹:「MI・ YO・ TA」「ぽつねん」「翼」
   カウンターテナー:藤木大地
   ギター:福田進一
   《アンコール》 武満徹:「死んだ男の残したものは」

   《休憩》

  池辺晋一郎:「君は土と河の匂いがする」
   フルート:高木綾子
   ギター:福田進一
   ヴァイオリン:小林美樹
   ヴィオラ:安藤裕子
   チェロ:山本裕康
  池辺晋一郎:「スパイ・ゾルゲ 」(当日追加)
  野平一郎:「波の記憶」
   ギター:福田進一
  湯浅譲二:「弦楽四重奏のためのプロジェクション」
   ヴァイオリン:漆原啓子、川田知子
   ヴィオラ:安藤裕子
   チェロ:古川展生

今年の宮崎音楽祭もsaraiが聴くのはプッチーニの歌劇『蝶々夫人』だけになりました。今、一番、気に入っているソプラノの中村恵理が聴けるのがとても楽しみです。きっと、感動させてくれるでしょう。



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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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えりちゃさん、お久しぶりです。saraiです。

なかなか、海外渡航の見通し、立ちませんね。来年あたりはどうでしょうね。長期戦覚悟で我慢するしかありませんね。

こちら

04/10 02:37 sarai

saraiさま、
お久しぶりです!
お元気にコンサートや旅行を楽しんでおられますね!
ブログ、楽しく拝見しています。おフランス、良いね😊
私は春だというのに、仕事と用事以

04/09 05:29 えりちや

気になってたずねても 
誰にも知らんと言われなんやろ
と思いつづけて居ました❗
写真みつけてこれだと思いました❕スッとしました
教えて下さって嬉しいです
ありがとうご

02/13 22:26 みーちゃん

みーちゃんさん、saraiです。

あの謎の建物は雄琴沖総合自動観測所という施設で琵琶湖の水質を測定しているそうです。

https://www.water.go.jp/kansai/biwako/html/repo

02/13 21:40 sarai

ずーと前にうきみどうに行きました
やはり、琵琶湖の真ん中の建物が何なのか気になったままです
分かりましたか
教えてください

02/13 20:54 みーちゃん

五十棲郁子さん、コメントありがとうございます。

水道水のこと、tap waterって言うんですね。知らなかった。単にwaterで通していました。ましてや、フランス語はほとんど

02/11 00:12 sarai

フランスも地方へ行くと英語が通じないでしょう。tap water ぐらいフランス語で言えないとね。

02/10 12:54 五十棲郁子
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