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圧巻のロ短調フーガ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 The Bach Odyssey Ⅴ アンジェラ・ヒューイット@紀尾井ホール 2018.5.22

アンジェラ・ヒューイットの“バッハ オデッセイ”の5回目。平均律クラヴィーア曲集第1巻の全曲演奏です。

昨年の素晴らしかったパルティータ全曲に続いて、この平均律クラヴィーア曲集に期待感が高まってきていました。そして、その期待は叶えられました。

前半の第12曲までの演奏は何か、沈んだ印象があります。長調の曲もどこか哀調をたたえて、まるで短調の曲のように思えます。しかし、何か元気のない演奏ですね。その代わり、短調の曲は恐ろしいほどの美しさを感じさせる凄い演奏です。とりわけ、第4曲、第8曲、第10曲、第12曲の美しさは無類のものでした。第8曲のプレリュード、そして、フーガは凄まじい美しさに包まれていて、うっとりと聴き入りました。

後半に入り、ほんのわずかな印象ですが、アンジェラ・ヒューイットは勢いを取り戻した演奏に変わります。長調は弾むような感じで弾き切り、短調は力強くて、フーガは構築力に優れた演奏になります。ただ、前半のような短調の曲の凄絶な美しさは感じられません。第20番のイ短調はそれなりに美しい演奏ではありましたけどね。しかし、終盤に向けて、演奏は徐々に高潮していきます。いつしか、終曲の第24番のロ短調のプレリュードが始まります。切れ味のよい素晴らしい演奏です。その魅力にあふれる音楽にじっと聴き入っていしまいます。大変、感銘を受けます。そして、最後のフーガです。静かに始まり、魂の込められたフーガが深く沈潜しながら続いていきます。その究極を思わせるフーガに身も心もすっかり囚われてしまします。アンジェラ・ヒューイットがここまでで使い残したすべての力を注ぎこんで演奏に没頭している姿に心を打たれます。バッハのフーガも凄い曲ですが、演奏するアンジェラ・ヒューイットの集中力も物凄いです。いきおい、聴いているsaraiものめりこんで聴き入ります。今日の平均律クラヴィーア曲集第1巻の全曲演奏はただ、このフーガを演奏し、それを聴くという1点に集約されます。そして、フィナーレ。高らかにフォルティシモに上り詰めて、ただただ感動するのみです。会場も一瞬、息を呑んだような静寂が広がります。バッハの最高のフーガを聴いた思いです。曲を閉じた後、帰路につくときもsaraiの頭の中ではあの究極のフーガが鳴り続けていました。

今回もあまりに素晴らしいアンジェラ・ヒューイットの“バッハ オデッセイ”でした。もしかしたら、今日のアンジェラ・ヒューイットは体調が悪かったのかもしれませんが、それをはねのけるような演奏を聴かせてくれました。頭が下がる思いです。

今日のプログラムは以下です。

ピアノ:アンジェラ・ヒューイット
 
J.S.バッハ・プログラム Odyssey Ⅴ

平均律クラヴィーア曲集第1巻 第1曲~第12曲 BWV846~857

  《休憩》

平均律クラヴィーア曲集第1巻 第13曲~第24曲 BWV858~869


最後に予習したCDですが、最近、既に以下のCDを聴いていました。

 スヴャトスラフ・リヒテル、1970年7月、セッション録音、ザルツブルク、クレスハイム宮およびエリーザベト教会
 スヴャトスラフ・リヒテル、1973年、ライヴ録音、インスブルック
 フリードリヒ・グルダ、1972年、セッション録音
 アンドラーシュ・シフ、2011年、セッション録音、スイス、ルガーノ

いずれも素晴らしい演奏ですが、とりわけ、グルダはフーガを恐ろしくスローに、しかも明晰に弾き、顕微鏡的な演奏を聴かせてくれます。リヒテルのインスブルック・ライヴも最高に素晴らしい演奏で音質も上々です。第8番や第24番のフーガは感銘して聴き入ってしまいました。
そして、もちろん、アンジェラ・ヒューイットのCDも予習しました。

 アンジェラ・ヒューイット、2008年、セッション録音

これはファツィオリのピアノで弾いた新盤です。1997年のスタインウェイで弾いた旧盤以上に生命力を感じさせてくれる素晴らしい演奏です。

いよいよ、明後日はこのアンジェラ・ヒューイットの“バッハ オデッセイ”で一番楽しみにしていたゴルトベルク変奏曲です。きっと素晴らしい演奏を聴かせてくれるでしょう。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       アンジェラ・ヒューイット,

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