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ボヘミアの霧の中・・・ペレアスとメリザンド@プラハ国民劇場 2013.6.17

色々と考えさせられるオペラ《ペレアスとメリザンド》でした。深い解釈のもと、作品の真髄に迫った素晴らしい演出と音楽であったと思います。

このオペラはもともと、茫洋とした雰囲気のオペラではあると思っていました。今日の公演で、このオペラは夢の中でのできごと、あるいは妄想が、現実と交錯して、できあがった複雑な世界を描いたことが納得できました。それも、登場人物それぞれの思いが複雑に絡まりあって、複合した夢の世界です。
その中でも、肥大化した自我を持つゴローの存在が一番大きく、半分以上は彼の脳内で作り上げた妄想・夢の産物に思えます。そういう意味では、か弱い自我のメリザンド、ペレアスは、肥大化したゴローの自我に組み入れられた存在だと感じます。もちろん、精神のバランスを欠くゴローの妄想は現実との狭間で揺れ動いていて、どこまでが現実なのかは判然としません。現実世界のメリザンド、ペレアスも顔をのぞかせますが、あくまでもひ弱な現実です。

ゴローは救われるのか・・・それがテーマのようにも思えます。神がいない時代に人がどう救われるのか。女の愛によって、救われるのは、ワーグナーの楽劇までです。ゴローのように、愛するメリザンドの愛を信じきれない人間は、決して、女の愛では救われません。現代の愛の不毛とも言えます。結局、ゴローは救われない人間として、地獄の奈落の底に落ち込んでいくしかないのでしょう。
ドビュッシーが描き出そうとした世界は実に残酷で恐ろしい世界です。夢のような甘いとさえ感じる音楽の中に、時として、強烈な叫びが上がります。今日のオペラの主役はオーケストラです。ボヘミアの霧を感じさせるような独特のアンサンブルは、最初は少し薄っぺらく感じましたが、徐々に存在感を増していって、ドビュッシーの響きのなかに、ヤナーチェクの匂い・・・チェコの語法を感じました。ヤナーチェクの描く現代の人間の根源的な不幸を感じさせる響きです。

演出家、指揮者が周到に考え抜いた卓抜なオペラ《ペレアスとメリザンド》です。過去の甘い響きのオペラの世界はもう、ここにはありません。ワーグナー、R・シュトラウスでさえも、甘い存在に追いやってしまうのが、このオペラ《ペレアスとメリザンド》だと、痛切に印象付けられてしまいました。

はっきり言って、saraiはこんなオペラは嫌いです! でも、どうにも逃げられない自分も感じます。
テクニックや声の美しさを超えて、音楽芸術をここまで極めたプラハ国民劇場の底深さに敬意を表します。
音楽は最終的には、どこまで、人間の本質に迫れるかということがその目標であることを如実に感じさせられた公演でした。

今日のキャストは以下です。

  演出:Rocc
  指揮:David Sovec
  管弦楽:プラハ国民劇場管弦楽団

  ペレアス:Philippe Do
  メリザンド:Veronika Hajnova
  ゴロー:Jiri Sulzenko
  アルケル:Frantisek Zahradnicek
  ジュヌヴィエーヴ:Yvona Skvarova

明日はモーツァルトの《ドン・ジョヴァンニ》の初演で知られるエステート劇場でオペラ《フィガロの結婚》を見ます。


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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai

まさにマーラー6番な状況です笑

04/11 17:51 kico

お互い、残念でしたね。今年でヨーロッパ遠征を終わりにする予定でしたが、悲劇的な状況になりました。天はまだ我に旅を続けよというご託宣を与えたのでしょうか。1年延期

04/11 03:13 sarai

以前にもコメントさせていただいた者です。来ましたね、楽友協会からのメール。私たちはとりあえず1年延期としましたが、どうでしょうね。困っている人が多い中贅沢な悩み

04/11 00:33 kico

お返事ありがとうございます。
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03/10 19:06 kico
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