ザルツブルク音楽祭:抱腹絶倒の末の感動 バルトリの《アルジェのイタリア女》@モーツァルト劇場 2018.8.16
このオペラ、想像はしていましたが、チェチーリア・バルトリのアジリタが炸裂しまくって、まさに超絶的な素晴らしさ。彼女がロッシーニのタイトルロールを歌うと別次元のようなオペラが出来上がります。時折、寄る年波(容貌・・・)を感じなくもありませんが、キュートな魅力は健在です。アブドラザコフがふざけて、バルトリの歌唱中に口に無理やり、食べ物を突っ込んでも、動じることなく、食べ物を咀嚼しながら、変わらぬ美声を披露していたのには驚愕しました。ともかく、体内にロッシーニ節が完全定着しており、自然に素晴らしい歌が繰り出されてきます。稀代のロッシーニ歌手で、誰も追随できませんね。すべてのアリア、レシタティーボが極上でした。
次いで、ムスタファ役のイルダール・アブドラザコフが歌も演技もとてもロシア人とは思えぬ最上級のロッシーニを披露してくれました。リンドーロ役のエドガルド・ロチャは初めて聴くテノールですが、声がよく伸びて、今後が大いに期待できますね。エルヴィーラ役のレベッカ・オルヴェラはスープレット的な声質ですが、綺麗な声のソプラノでしっかりと脇を固めていました。タッデオ役のアレッサンドロ・コルベッリはイタリアものでは欠かせないバリトンで、今回も大いに期待しましたが、その実力を全開放とはいきませんでした。もっと歌ってくれると期待していたんですけどね。もちろん、そこらの歌手には真似のできない演技と歌ではあったんです。
このレベルの高い歌手たちが披露してくれた重唱の場面のハチャメチャぶりはまさに抱腹絶倒で、ロッシーニのオペラの醍醐味を存分に楽しませてくれました。
そして、クライマックスはムスタファがパッパターチになりきっているところで、イザベッラが恋人のリンドーロと船でアルジェを脱出する場面。舞台の上に大きな船がせり出してきて、その舳先にはイザベッラとリンドーロ。歌唱が頂点に達したところで、それまで抱腹絶倒のオペラに興じていたsaraiが大きな感動に襲われました。バルトリを先頭にした歌手陣の渾身の歌唱に参ってしまいました。映画《タイタニック》を模したような船首の二人の恋人というのも、ありきたりながら、素晴らしい演出効果になっています。感動のうちに幕です。
そして、素晴らしいカーテンコールが始まります。頂点は舞台上の指揮者スピノジがオーケストラを振って、アンコールの重唱を聴かせてくれた、お決まりのサービスです。これは盛り上がりました。舞台上で繰り広げられるバルトリと仲間たちの饗宴はいつまでも続きました。ヴィヴァ!チェチーリア!
今日のプログラムは以下です。
ロッシーニ:歌劇《アルジェのイタリア女》
イザベッラ:チェチーリア・バルトリ
ムスタファ:イルダール・アブドラザコフ
リンドーロ:エドガルド・ロチャ
エルヴィーラ: レベッカ・オルヴェラ
タッデオ: アレッサンドロ・コルベッリ
ズルマ: ローザ・ボーヴェ
ハリー: ホセ・コカ・ロサ
演出:モーシュ・ライザー、パトリス・コーリエ
合唱:ウィーン・フィルハーモニア合唱団
管弦楽:アンサンブル・マテウス
指揮:ジャン=クリストフ・スピノジ
予習したDVDは以下です。これも楽しい内容でしたが、やはり、今日のバルトリにはとても及びません。
イザベッラ:ドリス・ゾッフェル
ムスタファ:ギュンター・フォン・カネン
リンドーロ:ロバート・ギャンビル
エルヴィーラ: ヌッチア・フォチーレ
タッデオ: エンリク・セッラ
ズルマ: スーザン・マクリーン
ハリー: ルードルフ・A・ハルトマン
演出:ミヒャエル・ハンペ
合唱:ソフィア・ブルガリア男声合唱団
管弦楽:シュトゥットガルト放送交響楽団
指揮:ラルフ・ヴァイケルト
1987年5月16日、ドイツ、シュヴェツィンゲン音楽祭
昨日の《ポッペアの戴冠》に引き続き、ザルツブルク音楽祭のモーツァルト劇場は超ど級のオペラが連続しました。今年のザルツブルク音楽祭は魔笛とサロメが評判だそうですが、一体、この《ポッペアの戴冠》と《アルジェのイタリア女》以上の出来のオペラって、存在するのって、思ってしまいます。結局、《サロメ》はチケットが取れずに見られなかったので、負け惜しみ半分ですが、本気半分でこのオペラ2作は最上の出来でした。
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