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アンドレイ・イオニーツァ チェロ・リサイタル@横浜上大岡ひまわりの郷ホール 2018.9.17

アンドレイ・イオニーツァはルーマニア出身の若手の俊英チェリストです。ルーマニア出身の音楽家と言えば、真っ先に思い浮かぶのは最愛のピアニストであるクララ・ハスキルですが、ほかにも、ジョルジェ・エネスク、ディヌ・リパッティなど、錚々たる人たちがいました。セルジュ・チェリビダッケもルーマニア出身ですね。いずれも音楽性が高い人たちです。ルーマニアという国はそういう伝統があるのでしょうか。今日、初めて聴いたアンドレイ・イオニーツァも若手ながら、優れた音楽性の持ち主でした。

冒頭のシューマンの幻想小曲集ですが、この曲をこんなに魅力的に感じたのは初めてです。3曲からなる小曲集の1曲目、チェロの暗い響きに違和感を覚えつつも、ぐーっと惹き込まれます。この陰影に富んだ表現はまさにシューマンらしさ、満載です。とりわけ、チェロの弱音の美しさに驚きを禁じえません。こういうシューマンを聴くと、その演奏家がつい好きになってしまいます。5日ほど前に聴いたガヴリリュクもアンコールのシューマン(子供の情景)を聴いて、ぐっと好印象を抱いてしまいました。シューマンの素晴らしい演奏を聴くと、その演奏家をリスペクトしてしまいます。近年、どんどん、シューマンの音楽に惹かれていきます。というわけで、冒頭から、シューマンの素晴らしい演奏を聴いて、大満悦です。ピアノの薗田 奈緒子は割とがんがん弾くタイプですが、それが妙にイオニーツァの陰のあるチェロとうまくバランスしていました。いやあ、いいものを聴いてしまいました。

次のベートーヴェンも相変わらず、チェロの暗い響きが支配的ですが、それが意外に後期のベートーヴェンの諦念の表現につながらずに平凡な演奏になってしまったのは残念です。ピアノの薗田 奈緒子はここではあまりに響かせ過ぎの感じです。最初のシューマンが良過ぎたために期待し過ぎたかな。


休憩後、マルティヌーですが、これはとても超絶技巧的な派手な演奏です。可もなし、不可もなしって感じかな。そもそも、あのマルティヌーが何故、こんな曲を書いたのかが理解できていません。ですから、評価のしようもありません。

最後はプロコフィエフのチェロ・ソナタ。とっても期待していました。冒頭の低弦の暗い響きが圧倒的ですが、まるでショスタコーヴィチの音楽でも聴いているような錯覚に襲われます。こういう表現もあるのかもしれませんが、プロコフィエフはもっとすっきりした響きの音楽が似合っています。単なるsaraiの趣味ですけどね。もっとも、あんまり、すっきりと演奏されると、モダンな新古典主義の軽い音楽にしか聴こえませんから、意外にプロコフィエフの音楽の演奏は難しいものですね。重苦しさに覆われた演奏の中にプロコフィエフらしさを探しているうちに演奏は終焉を迎えます。この曲って、こんな難しい曲だったっけなあ? プロコフィエフの晩年の作品ですから、こういう音楽でいいのかもしれません。まだまだ、プロコフィエフの音楽の底はこんなに深いのかしら・・・もっとプロコフィエフを聴き込まないといけません。

アンコールは2曲。1曲目はお国ものです。まったく知らない作曲家の知らない作品ですが、ルーマニアっぽいノリの聴きやすい音楽です。爽快な演奏でした。最後はラフマニノフのヴォカリーズ。ロマンティックで美しい演奏。うっとりと聴き入ってしまいました。この曲をこんなに美しく弾くのなら、もう1曲、フォーレの《夢のあとに》を弾いてほしくなります。でも、聴衆のみなさんが拍手をやめてしまったので、叶わぬ夢になりました。


この日のプログラムは以下の内容です。

 チェロ:アンドレイ・イオニーツァ
 ピアノ:薗田 奈緒子

  シューマン:幻想小曲集 Op.73
  ベートーヴェン:チェロ・ソナタ 第4番 ハ長調 Op.102-1

  《休憩》

  マルティヌー:ロッシーニの主題による変奏曲
  プロコフィエフ:チェロ・ソナタ ハ長調 Op.119

  《アンコール》

    コンスタンティン・ディミトレスク:ルーマニアの農民の踊り(チェロ編曲版)
    ラフマニノフ:ヴォカリーズ ホ短調 Op.34-14(チェロ編曲版)

最後に予習について触れておきます。

1曲目のシューマンの幻想小曲集は以下のCDを聴きました。

 ミッシャ・マイスキー、マルタ・アルゲリッチ 1999年 ブリュッセル セッション録音

いい演奏なのですが、今日の陰影のあるシューマンを聴いてしまうと、物足りませんね。

2曲目のベートーヴェンのチェロ・ソナタ 第4番は以下のCDを聴きました。

 ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ、スヴャトスラフ・リヒテル 1961~63年録音

ベートーヴェンの晩年の深い音楽に向けての助走が感じられる味わい深い演奏です。

3曲目のマルティヌーのロッシーニの主題による変奏曲は以下のCDを聴きました。

 クリスティアン・ベンダ、セバスティアン・ベンダ 1996~97年録音

演奏は普通ですが、そもそも、マルティヌーが何故、ロッシーニの主題に基づく変奏曲を書いたのが理解できないし、どこにマルティヌーらしさがあるのかが分かりません。

4曲目のプロコフィエフのチェロ・ソナタは以下のCDを聴きました。

 ミッシャ・マイスキー、マルタ・アルゲリッチ 2003年4月 ブリュッセル ライヴ録音

これはとても冴えた演奏です。文句ありません。



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ジャンル : 音楽

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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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