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《薔薇の騎士》ガランチャ、リドル、ペション@ウィーン国立歌劇場 2012.4.18

20年ぶりに聴くウィーン国立歌劇場での《薔薇の騎士》です。とても素晴らしい公演で感動しました。特に第2幕冒頭の銀の薔薇の献呈での愛の2重唱の素晴らしさには涙を禁じ得ませんでした。

タイトルロールの薔薇の騎士、ことオクタヴィアンが主役だと感じる《薔薇の騎士》を聴いたのは初めてです。たいていは元帥夫人が主役だと思うことがほとんどです。クライバーが指揮したときは、もちろん、主役は指揮者。今日はオクタヴィアン役のガランチャが主役以外の何ものでもありませんでした。
今日のガランチャには本当に魅了されました。普通はsaraiにとって、歌手はあくまでも声がすべて。しかし、ガランチャは声だけでなく、姿かたち、顔、仕草などすべてがキュートで魅力たっぷり。騎士姿はかっこいいし、女姿は可愛いこと、この上なし。まさにオクタヴィアンを歌い、演じるために生まれてきたような女性です。その声ですが、《アンナ・ボレーナ》のときのような深くてたっぷりした声というよりも、透き通った美しい声に感じました。これもsarai好みです。産休明けということで心配しましたが杞憂でした。特に第2幕の素晴らしさと言ったら、もう、何と表現すればいいか、涙なしには語れません。
もう一人、オックス男爵を歌ったクルト・リドルも、もう少しで主役に躍り出る勢いでした。20年前にこのウィーン歌劇場でオックス男爵を歌ったときは渋いとしか言いようのない、それでいて、人をうならせる歌唱でした。それから20年、渋さに軽味が加わり、深くて多彩な表現力を身に着けたようです。R・シュトラウスがこのオペラを作曲したときに題名を《オックス男爵》と考えていたとのことですが、それを実感させてくれる歌と演技でした。
今日の最大の収穫は実はソフィー役を歌ったミア・ペションです。今まで、ソフィー役はバーバラ・ボニーが断トツの素晴らしさでほかの誰にも追随を許しませんでしたが、今夜のペションはボニーに肉薄。感動の歌を聴かせてくれました。それに見栄えもいいし・・・。 まだ、若いのでこれからも彼女のソフィーを聴けるでしょう。嬉しいですね! 彼女には、2006年のグラインドボーン音楽祭のヴィデオでフィオルディリージを歌うのを聴いて(見て)から、密かに注目していました。やっぱり素晴らしい歌手に成長していました。
今日の最大の問題点は元帥夫人を歌ったニーナ・シュテンメです。悪くはないのですが、第1幕は声が重くて、高音部も苦しそう。この役は美しく透明な高音が必須です。第1幕終盤のモノローグも平凡な出来。昨年聴いたミラノ・スカラ座でのシュヴァンネヴィルムスに遠く及ばない感じでした。それでも第3幕の終盤の3重唱では、まあ納得の声の響きでした。最初から、あの調子だったならと悔やまれます。
ファーニナルを歌ったグルンドヘーバーはさすがの素晴らしい歌唱。こんな役ではもったいない感じでした。
そうそう、イタリア人歌手役のホー・ヨン・チュンの歌唱は素晴らしかったです。韓国人テノールということですが、声にはりがあり、なかなか聴かせてくれました。あれだけ歌ってくれると満足です。
ほかにロイダーのバルザッキ役、バンクルの警部役など、豪華な歌手を並べ、まったく隙のない布陣。さすがにウィーン国立歌劇場です。

今夜のキャストは以下です。

 指揮:ジェフリー・テート
 演出:オットー・シェンク
 管弦楽:ウィーン国立歌劇場管弦楽団
 元帥夫人:ニーナ・シュテンメ
 オックス男爵:クルト・リドル
 オクタヴィアン:エリーナ・ガランチャ
 ファーニナル:フランツ・グルンドヘーバー
 ソフィー:ミア・ペション
 ヴァルザッキ:ミヒャエル・ロイダー
 アンニーナ:ヤニーナ・ビークル
 警部:ヴォルフガング・バンクル
 イタリア人歌手:ホー・ヨン・チュン

まず、オーケストラの前奏です。あれっという感じ。あの流麗なR・シュトラウスの音楽ではなくて、少しぎくしゃくした感じの演奏です。音の響きそのものはウィーン国立歌劇場のオーケストラですから、美しい響きですが、どうも指揮のテートとオーケストラが合わない感じです。テートは流麗なウィーン風ではなく、自分なりにきちっとした表現をしたいようです。こういう緊張関係も面白いです。なれあい演奏ではありませんからね。オーケストラが主導権を握ってウィーン風になったり、テートがきちっとリズムを刻んだり、展開がころころ変わります。流麗なウィーン風はクライバーの遺産のようにも感じます。あのとろけるように甘く輝かしい薔薇の騎士の音楽にうっとりとします。ここにクライバーがいれば、今でも15年前の世界に戻れそうです。
幕が開き、オクタヴィアンと元帥夫人の登場です。ガランチャの声量は朗々たるものではありませんが、よく通る美声。ちょっと物足りないかな。シュテンメは冒頭に書いた通り、声が重く、高音も抜けていません。これは全然物足りません。それでも、ガランチャの演技の溌剌さが目を奪います。リドルのオックス男爵が登場すると、完全にリドルがステージを支配します。素晴らしい存在感、渋さと洒脱さのミックスされた熟年男性の魅力です。ここで声は発しませんがマリアンデルに変身したガランチャのコケティッシュぶりにsaraiはノックアウト。可愛いこと、この上なし。ガランチャってこんなに綺麗だったっけ!
次にどやどやと人が入ってきて、ステージは満員すし詰め状態。そのなかでも一際存在感のあるのはリドル。たいしたものです。突如、イタリア人歌手の張りのある歌声に耳を奪われます。素晴らしい歌声です。合格点!この韓国人テノールのチュンは初めて聴きました。ここらから、元帥夫人の憂鬱が始まります。シュテンメの演技はそのあたりの雰囲気を醸し出しています。ただ、モノローグにはいり、歌声に透徹した響きが欠けるのが問題点。高い声は苦しそうです。事前の喉作りがうまくいかなかったのでしょうか。いずれにせよ、透き通った高音を歌うタイプではないので、saraiの好みからは外れます。シュヴァネヴィルムスとかデノケあたりがタイプです。途中から、ガランチャも騎士姿で再登場しますが、その姿の凛々しさにはまたもやノックダウン。少々太り気味なのも気になりません。歌はまあまあの状態です。ほかの歌手の歌うオクタヴィアンよりは格段素晴らしいのですが、ガランチャならもっと歌えるでしょう。ただ、まだ、第1幕なので、少しセーブして長丁場を乗り切る必要もあるでしょう。ガランチャとリドルは全幕出っ放しですからね。第1幕は、少し指揮の問題はあるにせよ、オーケストラの美しい響きだけでも聴きもので十分満足です。

第2幕にはいると、ソフィー役のペションの登場。まあ、美人の部類でしょう。それになかなかの美声です。声量も十分。いよいよ、ガランチャも銀の薔薇を持って登場。ソフィーとオクタヴィアンの初対面・一目ぼれの最高のシーンです。美女と美女で実に様になっています。そして、ガランチャもエンジンがかかってきて、声量・響きともに素晴らしい。ペションは驚くべき美声を披露。あの高音部が楽々と出ています。バーバラ・ボニー以外に出せなかった声です。2人の声も姿も素晴らしい愛の2重唱を聴いて、涙が滲んできました。今までで最高の2重唱です。もともとsaraiはこの2重唱が大好きで、遂に最高のものを聴いてしまいました。空前絶後の素晴らしさです。オックス男爵が登場した後はまた彼がステージを支配します。なんという自由闊達な歌と演技でしょう。こんな素晴らしい熟年に惹かれないソフィーがおかしいんじゃないかとさえ感じます。オックス男爵のワルツの素晴らしさ、何故、世の女性たちはこれがわからないんでしょう。R・シュトラウスも意外とファルスタッフのような魅力的な人物として力を注いだんでしょう。オックス男爵にマリアンデル(つまり、オクタヴィアン)から恋文が届き、オックス男爵が上機嫌になって、歌い踊るところで2幕目は終わります。それにしてもリドルの一見、男の単純さ、しかし、悲哀を秘めたあたりを表現する軽妙洒脱、軽みは何という高みに達していることでしょう。脱帽です。

第3幕はまたリドルの深い歌唱・演技とガランチャの美しさで惹きつけられます。まさに主役2人の絡み合いで一瞬も気を抜けません。
そして、遂に終幕の3重唱。第1幕よりも格段に調子を上げたシュテンメの元帥夫人、好調なペション、そして、美声で押し通すガランチャ、見栄えもいい3人でステージ一杯に素晴らしい声が響きあいます。そこにオーケストラの爛熟した響きも合わさって、感動のフィナーレです。
ちょっと融通のきかない感じの指揮者のテートでしたが、そんなものは吹き飛ばす勢いのあるのがR・シュトラウスの音楽です。結局は美しく、流麗に盛り上がってしまうし、細かいニュアンスも聴こえてきてしまいます。
パーフェクトとは言えなくても、それでもsaraiを感涙させるウィーンのR・シュトラウスは流石、流石、流石です。

来年の1月はデノケが元帥夫人をやるそうです。今日のキャストでデノケが元帥夫人で指揮がヨルダンであったなら、saraiは気絶していたかも知れません。この旅でデノケもヨルダンも聴くのだから、あり得ないことではなかったのに・・・

恨み言を言いつつ、大満足して、最後まで拍手を送り続けたsaraiでした。


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この記事へのコメント

1, ぶらあぼさん 2012/07/30 01:57
はじめまして。ガランチャで検索していましたところ、このサイトのタイトルに興味ありクリックしました次第です。
昨年4月、ネトレプコとガランチャの共演を聞きつけ、見逃すまいと「アンナ・ボレーナ」を見に行きました。ネトレプコを食ってしまうほどのガランチャにの歌唱、演技にすっかり嵌ってしまい、先日の7月25日に、ミュンヘンの歌劇場でのガランチャの「ドイツリート」のコンサートを聴きに参りました。素晴らしいの一言です。アンコールに5曲も歌いました。、客席から「パパゲーノ」という観客の声に、突然ガランチャが何故か大笑い。で魔笛から歌うのと誰しもが思った筈ですが、カルメンのハバネラを歌い、やんやの喝采でした。
終演後にロビーでサイイン会もあり、長蛇の列でした。超人気の程がよく分かりました。次はオクタビアンを目標とします。長々と失礼いたしました。

2, saraiさん 2012/07/30 09:44
ぶらあぼさん、初めまして、saraiです。
コメントありがとうございました。
「アンナ・ボレーナ」よかったですね。以下の記事もご覧ください。
 http://traveler.co-blog.jp/sarai/11174
ガランチャのオクタヴィアンは来年6月のドレスデンでも聴く予定です。指揮がティーレマンですから聴き逃せません。4月のウィーンでガランチャのシャルロッテも聴く予定です。6月のウィーンでのガランチャのカルメンは迷っています。ハバネラいいでしょうねえ。
また、コメントをお寄せください。
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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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04/23 23:45 sarai

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04/11 00:33 kico

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03/10 19:06 kico
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