秋の夜のブラームスに酔う:フォーレ四重奏団@トッパンホール 2018.10.5
前半のラフマニノフの絵画的練習曲集《音の絵》はフォーレ四重奏団のピアノ奏者のディルク・モメルツがレスピーギのオーケストラ編曲版に基づいて、ピアノ四重奏にために編曲したものです。なかなかよい編曲ではありますが、後述するように予習した原曲のピアノ独奏版が凄い演奏だったので、こういう編曲版を聴いても心に迫ってきません。へーっと思いながら、聴いていただけでした。
フォーレのピアノ四重奏曲第1番は部分的にはとても美しい響きに魅了されましたが、全体として、曲自体の魅力が今一つ。フォーレ四重奏団は何故、フォーレの名前を冠したのか、理解できません。第3楽章のアダージョの美しい演奏はよかったのですが・・・。
ブラームスのピアノ四重奏曲第1番は冒頭から素晴らしい演奏。しかし、圧巻だったのは、第3楽章のアンダンテ・コン・モートと第4楽章のツィゴイナー風のロンドとプレストです。第3楽章の美しく、抒情的なメロディーには酔わされて、感動しました。そして、第4楽章の終盤でジプシー風のメロディーがテンポを落として、弦楽器だけで王朝風に奏されると、心が砕けそうになります。個々の奏者の音が立って、美しい上に、奏者間の音のバランスが絶妙で、室内楽の極上の素晴らしさを味わえました。フォーレ四重奏団の演奏は昔日の名演、ブッシュ弦楽四重奏団員&ルドルフ・ゼルキンにも匹敵できるレベルに達しました。まさに奇跡の名演と称えたいと思います。
今日のプログラムを紹介しておきます。
ピアノ四重奏:フォーレ四重奏団
ヴァイオリン:エリカ・ゲルトゼッツァー
ヴィオラ:サーシャ・フレンブリング
チェロ:コンスタンティン・ハイドリッヒ
ピアノ: ディルク・モメルツ
ラフマニノフ(モメルツ編):絵画的練習曲集《音の絵》Op.39より 第2番 イ短調/第6番 イ短調
ラフマニノフ(モメルツ編):絵画的練習曲集《音の絵》Op.33より 第7番 変ホ長調
フォーレ:ピアノ四重奏曲第1番 ハ短調 Op.15
《休憩》
ブラームス:ピアノ四重奏曲第1番 ト短調 Op.25
《アンコール》
ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」(編曲:フォーレ四重奏団&グリゴリー・グルツマン)より
第7曲:リモージュの市場
第9曲:鶏の足の上に建つ小屋 - バーバ・ヤガー
最後に予習について、まとめておきます。
ラフマニノフの絵画的練習曲集《音の絵》を予習したCDは以下です。
ピアノ独奏(原曲)
ニコライ・ルガンスキー 1992年録音 ロシア音楽アカデミー、モスクワ
オーケストラ編曲版(レスピーギ)
大植英次指揮ミネソタ管弦楽団 2001年録音 ミネアポリス、オーケストラホール
まず、ルガンスキーのピアノ独奏ですが、これは素晴らしい演奏。最高のラフマニノフが聴けます。これを聴いてしまうと、ピアノ独奏でしか、聴きたくなってしまいます。悪いものを予習しました。で、レスピーギのオーケストラ編曲版の大植英次指揮ミネソタ管弦楽団の演奏ですが、ルガンスキーの凄い演奏を先に聴いてしまったので、ほとんど、拒否反応。そんな風に編曲したのねとしか、聴きようがありません。演奏のいい、悪いではありません。大植さん、ごめんなさい。
フォーレのピアノ四重奏曲第1番を予習したCDは以下です。
ジャン・ユボー、レイモン・ガロワ・モンブラン、コレット・ルキアン、アンドレ・ナヴァラ 1969年録音
とても美しい演奏で、フランスの香りも満喫できます。しかし、saraiがフォーレの音楽を理解できないので、音楽を評価しきれません。まだまだ、聴き込み不足ですね。
ブラームスのピアノ四重奏曲第1番を予習したCDは以下です。
フォーレ四重奏団 2007年録音 ベルリン、シーメンスヴィラ
ブッシュ弦楽四重奏団員、ルドルフ・ゼルキン 1949年録音
フォーレ四重奏団はよい演奏ですが、実演のレベルには達していません。再録音が望まれます。一方、ブッシュ弦楽四重奏団は古い音質ながら、ブラームスの本質を突く最高の演奏です。いつもながら、アドルフ・ブッシュのヴァイオリンの物悲しい音色には泣かされます。バリリ弦楽四重奏団&イエルク・デムスの演奏も聴こうと準備していましたが、所用で聴けず、残念。
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