大フーガはウィーンの響き:シュトイデ・クァルテット@鶴見サルビアホール 2018.10.18
前半のホフシュテッターの弦楽四重奏曲は第2楽章が有名な「ハイドンのセレナード」です。子供の頃に、有名なセレナードを集めたアルバムでよく聴いていた思い出があります。実演で聴くのは初めてではないかしら。ホフシュテッターというのは本業は修道士でアマチュアの作曲家だったんですね。まるで本物のハイドンが作曲したような見事な作品です。シュトイデ・クァルテットは第2ヴァイオリンのホルガー・グローが体調不良で来日できずに代わりに同じウィーン・フィルの女性ヴァイオリニストが参加していましたが、きっちり息の合ったアンサンブルを聴かせてくれました。「ハイドンのセレナード」は他の3人の伴奏でシュトイデの一人舞台でしたが、ヴァイオリンの音色の美しさに魅了されました。
続く2曲目のツェムリンスキーの《弦楽四重奏のための2つの小品》はまさにウィーン風の魅惑的な美しさ。新ウィーン学派に似た曲ですが、ウィーンらしい熱っぽさよりも甘美さが優る官能的な作品です。とりわけ、第1楽章の序奏部や第2楽章のやるせない思いを感じさせられるところは何とも魅惑的です。夢の中にいるような気分で聴き入りました。ツェムリンスキーの弦楽四重奏曲がこんなに美しいとは思っていませんでした。よいものを聴きました。
後半のベートーヴェンは後期の作品。第13番、第14番、第15番はピアノソナタの後期3曲とともに、saraiにとって特別な曲です。この鶴見サルビアホールでも、よく演奏されますが、ロータス・カルテットの素晴らしい演奏は忘れられない名演でした。さすがにあれを超える演奏はいかにウィーン・フィルのメンバーでも難しいようです。カヴァティーナも美しい演奏でしたが、ロータス・カルテットの最高の演奏には及びませんでした。むしろ、終楽章の大フーガはまるでウィーン・フィルが演奏しているような迫力に満ちた演奏。その白熱した演奏に圧倒されました。大フーガが今日の一番の演奏でした。
アンコールのボロディンは冒頭のチェロで奏される有名なメロディーの美しさにうっとりします。シュトイデのヴァイオリンの高音で引き継がれて、さらにうっとり。全編、美しい演奏に満足です。これでこそ、アンコール曲ですね。
今日のプログラムは以下です。
弦楽四重奏:シュトイデ・クァルテット
フォルクハルト・シュトイデ vn アデラ・フレシネアヌ vn エルマー・ランデラー va ヴォルフガンク・ヘルテル vc
ホフシュテッター(伝ハイドン): 弦楽四重奏曲ヘ長調(ハイドンOp.3-5)「セレナード」
ツェムリンスキー: 弦楽四重奏のための2つの小品
《休憩》
ベートーヴェン: 弦楽四重奏曲 第13番変ロ長調 Op.130+133「大フーガ付」
《アンコール》
ボロディン:弦楽四重奏曲 第2番 ニ長調 から、第3楽章 ノクターン
最後に予習について触れておきます。
1曲目のホフシュテッターの弦楽四重奏曲ヘ長調「セレナード」は以下のCDを聴きました。
コダーイ弦楽四重奏団 2000年録音 ブダペスト、フェニックス・スタジオ
これはNAXOSから出ている25枚組のハイドン弦楽四重奏曲全集の1枚です。無論、ハイドンの作曲ではないのですが、ハイドンの作品番号の作品3が付けられているので、全集に含めてもいいでしょう。そんなに有名な団体ではありませんが、美しい演奏を聴かせてくれています。
2曲目のツェムリンスキーの《弦楽四重奏のための2つの小品》は以下のCDで予習をしました。
シェーンベルク四重奏団 1994年録音 オランダ、レンスワウデ、オランダ改革派教会
これはあまりCDがありません。CHANDOSレーベルから出ているシェーンベルク四重奏団の2枚組のツェムリンスキーの弦楽四重奏曲全集の中に含まれています。演奏は素晴らしいです。バルトークの弦楽四重奏曲に甘美さを加えたような演奏に思えて、とても楽しめます。ツェムリンスキーって、こんなに美しい曲を書いているんですね。オーケストラ曲よりも弦楽四重奏曲のほうがよいくらいです。
3曲目のベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第13番は以下のCDを聴きました。
ハーゲン弦楽四重奏団 2001年録音 オーストリア、ザルツカンマーグート、モントゼー
ハーゲン弦楽四重奏団の新鮮なアプローチが光りますが、実演で聴いた演奏には及びません。ベートーヴェンの全集盤の録音が望まれます。
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