ナビル・シェハタ コントラバス・リサイタル@横浜上大岡ひまわりの郷ホール 2018.11.18
まずはバッハの無伴奏チェロ組曲 第1番です。原曲のト長調よりも2度上(7度下)のイ長調で弾きましたが、そのせいか、原曲よりも穏やかに感じます。もっとも穏やかに感じたのはその演奏によるものだったのかもしれません。温厚なお人柄のとおり、激しく突っ込んだ演奏ではありません。チェロに比べて、演奏は難しいでしょうが、微塵もそれを感じさせない演奏です。ある意味、物足りなさも残りますが、こういうおおらかな演奏もいいでしょう。テンポは普通でした。
ボッテジーニの2曲はコントラバス用に書かれた技巧的な作品だそうですが、これもなんなく弾きこなします。これみよがしな技巧などはこれっぽちもひけらかさない自然で穏やかな演奏です。「夢遊病の女」の有名なアリアのところは楽しく聴かせてもらいました。
後半はベートーヴェンのホルン・ソナタをコントラバスに置き換えたものです。原曲のホルンソナタよりも、ベートーヴェン初期のヴァイオリンソナタを想起させられるような演奏です。楽器が変われば、ずいぶん印象が変わります。ピアノの実兄のカリム・シェハタの切れのいい演奏が光りました。
ブルッフのコル・ニドライは抒情的な美しい演奏。クーセヴィツキーの小さなワルツは滑らかで気持ちよく聴けました。グリエールの間奏曲とタランテラも余裕たっぷりな落ち着いた演奏です。アンコールのアヴェマリアはとても美しい曲で誰の曲かと思っていたら、なんとピアソラとのこと。ピアソラもこんな抒情的な作品を書いたんですね。原曲は歌曲で、後に映画音楽として、オーボエ用に編曲したものだそうです。それをコントラバスに編曲したんですね。イタリアの歌姫ミルヴァが歌っているそうですから、一度聴いてみましょう。
この日のプログラムは以下の内容です。
コントラバス:ナビル・シェハタ
ピアノ:カリム・シェハタ
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第1番 BWV1007(コントラバス版 イ長調)
ボッテジーニ:グランド・アレグロ「メンデルスゾーン風協奏曲」
ボッテジーニ:ベッリーニのオペラ「夢遊病の女」による幻想曲
《休憩》
ベートーヴェン:ホルン・ソナタ ヘ長調 Op.17(コントラバス版)
ブルッフ:コル・ニドライ Op.47
クーセヴィツキー:小さなワルツ Op.1-2
グリエール:間奏曲とタランテラ Op.9
《アンコール》
ピアソラ:アヴェマリア(コントラバス版)
最後に予習について触れておきます。
1曲目のJ.S.バッハの無伴奏チェロ組曲 第1番は以下のCDで予習をしました。
エドガー・メイヤー 2000年録音
これは聴き惚れました。チェロでの演奏に並ぶ名演です。チェロに比べて、深い響きがします。音楽性も優れています。
4曲目のベートーヴェンはホルン・ソナタは以下のCDで予習をしました。なお、2,3曲目は予習していません。
バリー・タックウェル(ホルン)、ヴラディーミル・アシュケナージ(ピアノ) 1974年録音 イギリス
この曲は原曲のホルン版しか入手できなかったので、タックウェルのホルンで聴きました。ホルンもいいのですが、アシュケナージのピアノが冴え渡っていました。とてもよい演奏です。
5曲目のブルッフのコル・ニドライは以下のCDで予習をしました。
ピエール・フルニエ(チェロ)、ジャン・マルティノン指揮コンセール・ラムルー管弦楽団 1960年5月録音 パリ
これもオリジナルのチェロ版で聴きました。予想通り、フルニエの格調高い演奏ですが、静かな中に熱さも秘めた演奏です。
7曲目のグリエールの間奏曲とタランテラは以下のCDで予習をしました。6曲目はCDが入手できずに聴いていません。
ウィース・ド・ブフWies de Boevé (コントラバス)、高橋朋子(ピアノ) 2015年11月録音 ベルリン
ウィース・デ・ブーフェは2016年のミュンヘン国際音楽コンクールとボッテジーニコンクールの両方で優勝した逸材です。演奏もコントラバスとは思えない素晴らしいテクニックで、美しい響きの演奏です。
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