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河村尚子の迸るパトス ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクト Vol.2@紀尾井ホール 2018.11.29

前回、河村尚子が弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴いて、予想以上の演奏内容に驚嘆しました。彼女の演奏の特徴を一言で表現すると、“疾走”でした。文句なしに彼女のベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクトを聴き続けることにして、今日は2回目のリサイタルです。いやはや、前回以上にその素晴らしさに感嘆しました。どれだけ弾き込み、どれだけアナリーゼしたんでしょうか。とんでもない努力と才能の賜物が今日の演奏に結実していました。
(今回、河村尚子をユーザータグに登録しました。本文中で河村尚子にリンクを張ったので、クリックすると、過去、河村尚子が演奏した記事のすべてが表示されます。現在、計7記事です。)

最初の第18番 変ホ長調 Op.31-3はその素晴らし過ぎる演奏に驚愕。出だしこそ、少し硬かったのですが、その後の音の響きの美しさ、タッチの切れのよさ、考え抜かれたアーティキュレーションには圧倒されました。正直なところ、大好きな《テンペスト》を演奏してくれないことは残念でしたが、この第18番がこれほどの完成度で演奏されたことは嬉しいです。とりわけ、第4楽章の圧倒的な迫力には脱帽です。

そして、今日の極め付きだったのは次に演奏されたピアノ・ソナタ 第21番「ワルトシュタイン」です。最初の入りが凄く早いので、大丈夫かなと思っていたら、それでよかったんです。確かに完璧な演奏ではなかったかもしれませんが、音楽って、完璧に演奏すればいいものじゃありません。しかもこれは実演です。彼女の熱いパトスの迸りを感じるためにはこのテンポが必要でした。まさに一期一会とも思える凄い演奏に感動しました。第1楽章も凄かったけど、第3楽章の凄さといったら、言葉では表せません。河村尚子の人生を賭けたような演奏にこちらも人生を賭けて聴き入りました。そこには音楽を超えた何かが確かに存在しました。魂同士がつながるような凄まじい演奏にインスパイアされました。これ以上は書く言葉が見つかりません。しかし、疲れた! 聴いていたsaraiもアドレナリンが出尽くした感じです。河村尚子もそうだったんじゃないでしょうか。

後半はピアノ・ソナタ 第24番「テレーゼ」が美しく演奏されます。アドレナリン不足のsaraiも何とか、ついていけます。パーフェクトとも思える演奏があっと言う間に終わります。拍手を受けた河村尚子はそのままピアノの前に座り、じっと集中した後、ピアノ・ソナタ 第23番「熱情」を弾き始めます。見事な演奏ではありますが、先ほどの「ワルトシュタイン」のパトスは蘇りません。もっとも、こちらのアドレナリンも復活しませんから、集中力に欠けています。フツーに素晴らしい「熱情」でした。

結局、今日は「ワルトシュタイン」の日でした。忘れられない感動の演奏でした。

次回から、いよいよ、後期のピアノ・ソナタに突入します。そして、来年11月の4回目、ラストの後期の大傑作の3曲はどんな演奏になるんでしょう。楽しみですが、不安でもあります。日本人ピアニストでは田部京子という大天才が素晴らしい演奏を聴かせてくれていますが、河村尚子がどこまで肉薄できるでしょうか。

今日のプログラムは以下です。

  <オール・ベートーヴェン・プログラム>

  ピアノ・ソナタ 第18番 変ホ長調 Op.31-3
  ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調 Op.53「ワルトシュタインWaldstein」
   《休憩》

  ピアノ・ソナタ 第24番 嬰ヘ長調 Op.78「テレーゼTherese」
  ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 Op.57「熱情(アパッショナータ)Apassiponata」

   《アンコール》

    バガテル『エリーゼのためにFür Elise』 イ短調 WoO59

最後に予習について、まとめておきます。以下のCDを聴きました。

 エミール・ギレリス 
  ピアノ・ソナタ 第18番 1981年10月録音
  ピアノ・ソナタ 第21番「ワルトシュタイン」1972年1月録音
  ピアノ・ソナタ 第23番「熱情」1973年6月録音
 マウリツィオ・ポリーニ
  ピアノ・ソナタ 第24番「テレーゼ」 2002年録音

予習ではありますが、以前、ピアノ・ソナタ 第23番「熱情」をまとめて、33枚聴いた際に最高と思えた演奏がエミール・ギレリスでした。ですから、今回は楽しみも含めて、彼のピアノで中期のピアノ・ソナタを聴いてみることにしました。しかし、残念ながら、ピアノ・ソナタ 第24番「テレーゼ」は録音を残してくれませんでした。第32番も見録音でしたが、他にこの第24番と第1番, 第9番, 第22番も未録音のまま、68歳で亡くなってしまいました。亡くなる年に録音した第30番、第31番は素晴らしい演奏でしたから、ベートーヴェンの全集を完成できなかったことは誠に残念の極みです。今回聴いた3曲はテクニック、音の響き、タッチ、アーティキュレーションなどどれをとっても最高です。予習というよりも名演鑑賞になってしまいました。で、ピアノ・ソナタ 第24番「テレーゼ」は天才ポリーニにご登場願いました。これはパーフェクトな演奏です。非の打ちどころのない演奏とはこのことです。後でアンドラーシュ・シフも聴けばよかったと思いましたが、また、名演鑑賞会を開きましょう。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       河村尚子,

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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai

まさにマーラー6番な状況です笑

04/11 17:51 kico

お互い、残念でしたね。今年でヨーロッパ遠征を終わりにする予定でしたが、悲劇的な状況になりました。天はまだ我に旅を続けよというご託宣を与えたのでしょうか。1年延期

04/11 03:13 sarai

以前にもコメントさせていただいた者です。来ましたね、楽友協会からのメール。私たちはとりあえず1年延期としましたが、どうでしょうね。困っている人が多い中贅沢な悩み

04/11 00:33 kico

お返事ありがとうございます。
本当に!私もレイルジェットや美術館の手配もしているので、祈るような気持ちです。

03/10 19:06 kico
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