はじけるようなユジャ・ワンのプロコフィエフ ゲルギエフ&ミュンヘン・フィル@サントリーホール 2018.12.2
前半のユジャ・ワンのプロコフィエフが大変よかったので、後半のゲルギエフ&ミュンヘン・フィルのブルックナーの交響曲第9番も大変、期待します。ミュンヘン・フィルと言えば、ブルックナーの名演の数々を残してきた名門オーケストラだし、指揮は天下のゲルギエフですからね。しかし、結果はがっくり。第1楽章はまるでパステル画のような淡い色彩の演奏で、特に弦の音が響かずに薄い響きです。第2楽章はようやく響きが轟き始まますが、悪く言えば、賑やかなだけで退屈です。しかし、第3楽章に至り、ようやく、美しい弦の響きが聴けるようになります。終始、金管は響いていましたから、バランスのとれた美しいフレージングの演奏です。ぐっと前のめりになって聴き入ります。しかし、響きは美しいのに心に感動の気持ちが沸いてきません。ゲルギエフの指揮にはブルックナーへのシンパシーが欠けているような気がします。ブルックナーが神に捧げる愛を音楽に込めたのに、指揮しているゲルギエフが無機的な美しさしか表現していないとしか思えません。ゲルギエフはブルックナーに向いていないのでしょうか。とても残念な演奏でした。会場のみなさんは大きな拍手を送っていましたが、オーケストラが退場しようとするとさっさと拍手は終了。みなさんもそんな感じだったのですね。
今日のプログラムは以下です。
指揮:ワレリー・ゲルギエフ
ピアノ:ユジャ・ワン
管弦楽:ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 op.26
《アンコール》 プロコフィエフ:トッカータ ニ短調 Op.11
モーツァルト(ヴォロドス、サイ、ユジャ・ワン編):トルコ行進曲
《休憩》
ブルックナー:交響曲第9番 ニ短調
最後に予習について、まとめておきます。以下のヴィデオを見て、そして、聴きました。
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番
ユジャ・ワン、クラウディオ・アバド指揮ルツェルン祝祭管弦楽団 2009年8月11-15日、ルツェルン音楽祭 Blu-ray
今から9年前、ユジャ・ワンが若干22歳だった頃、ルツェルン音楽祭の大舞台で巨匠クラウディオ・アバドに憶することなく、会心の演奏を聴かせてくれています。当時、このヴィデオを見たsaraiは末恐ろしいピアニストが出現したと思ったことを覚えています。今、見直すと、既に現在のユジャ・ワンと変わらぬ演奏がそこにありました。変わったのは今よりもとても若かったことくらいです。彼女の演奏は耳で聴くだけでなく、目で見るとさらに価値が増します。
ブルックナー:交響曲第9番
ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送交響楽団 2001年7月8日 ムジーク&コングレス・ハレ(リューベック) ライヴ収録 DVD
ギュンター・ヴァント89歳、亡くなる半年前の貴重な演奏の映像記録です。ドイツのリューベックで開催されたシュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭のコンサートを収録したものです。このコンサートに先立つ半年前の2000年11月には同じコンビの伝説的な来日公演がありました。それもヴィデオ化されていますが、saraiは未聴です。このリューベック公演は素晴らしい演奏です。あの最盛期のミュンヘン・フィルと優劣つけ難い美しい響きの演奏を聴かせてくれます。冒頭ではさすがに老人の表情を見せているヴァントが第3楽章では鋭い目の表情で若々しくもあるのがとても印象的です。素晴らしい指揮です。ヴァントの数々のブルックナー演奏の中でも出色の出来です。今日のゲルギエフ&ミュンヘン・フィルの演奏はもうひとつでしたが、予習でこのDVDに出会えたのが大きな収穫でした。
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