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「カルメン」@チューリッヒ歌劇場 2010.7.8

今夜もチューリッヒ歌劇場で3夜目のオペラなので、散策は早めに打ち切って、トラムでホテルに戻り、休養。
テイクアウェイのお寿司(チューリッヒは寿司ブームらしく街中のいろんな所で見かけました)をホテルの部屋で少しつまんで、いざ、チューリッヒ歌劇場。

チューリッヒ歌劇場は今日でオシマイ。ぜひ、よい公演を聴きたいものです。これまでの「魔弾の射手」、「薔薇の騎士」は完全燃焼とはいきませんでしたからね。

今夜のオペラはビゼーの「カルメン」。カルメンはカサロヴァ、ドン・ホセはマッシモ・ジョルダーノ。
最初に結果を言ってしまうと、今夜の出来は最高。どちらかと言えば、昨日までの2回のオペラはチューリッヒ歌劇場ってこんなものという感も否めなかったのですが、今夜ですっかり評価が変わりました。これまで見た「カルメン」のなかで最高でした。
とりわけ、カサロヴァのどすの利いた節回しの個性的なカルメンとジョルダーノの生きのいいテノールは素晴らしかったし、オーケストラも演出も合唱もすべてがうまく機能していました。

今回の公演に向けての予習したのは以下。

 ・チューリッヒ歌劇場
   指揮:フランツ・ウェルザー・メスト   演出:マティアス・ハルトマン
   カルメン:ヴェッセリーナ・カサロヴァ  ミカエラ:イサベル・レイ
   ドン・ホセ:ヨナス・カウフマン     エスカミーリョ :ミケーレ・ペルトゥージ

 これはカサロヴァの一皮むけたともいっていいカルメンが最高、今夜と同じ演出の筈です。

今回のキャストは以下。

   指揮:ツォルト・ハマー
   演出:マティアス・ハルトマン
   カルメン:ヴェッセリーナ・カサロヴァ
   ミカエラ:サンドラ・トラットニック
   ドン・ホセ:マッシモ・ジョルダーノ
   エスカミーリョ :マッシモ・カヴァレッティ

席は平土間の10列目の中央。「魔弾の射手」のときより、すこし後ろですが、場所はよいでしょう。音の左右のバランスや響きもこれまでより、よさそうです。

まずは前奏曲が始まります。えっ、昨日までと違い、音に輝かしさが加わり、ダイナミックで歯切れがいい。まさにカルメン。
で、1幕目の聴きどころ、ハヴァネラです。カサロヴァが深い低音と張りのある高音で歌いまわします。まるでシャンソンの名歌唱を聴いている感じでもあります。
大変、個性の強い歌唱で好き好きはあるでしょうが、saraiはまったく魅了されて、引き込まれてしまいます。
昔、ウィーンで聴いたバルツァと比較しても、よっぽど、大好きなハヴァネラです。
最近はカルメンといえば、今をときめくガランチャが話題ですが、こんなに個性の強いカサロヴァの歌唱ですから、簡単に比較するのは困難でしょうね。いずれ、ガランチャを聴いて判断したいところですが、ガランチャはあまりカルメンで聴きたい歌手ではありませんね。「チェネレントラ」とか「ウェルテル」は素晴らしいので、生の歌唱はそちらのほうがいいんですが・・・・

ともあれ、ドン・ホセ役のジョルダーノも好調でカサロヴァと絡みながら、素晴らしく盛り上がります。
このイタリア出身のテノールもなかなか聴かせます。
エスカミーリョ役のカヴァレッティですが、彼の実力からいえば、順当なところの出来。もうひとつ存在感を出してもらいかったというのが辛目の注文。
ミカエラ役のトラットニックは初めて聴きましたが、なかなかうっとりする歌唱で好感。ただ、この役は意外にもうけ役で、主役も食いかねないと思いますが、さすがにそのレベルまではいってなかったと思います。まあ、カサロヴァが良すぎましたからね。

舞台はチューリッヒ歌劇場らしくシンプルなものですが、なかなか良い演出だと思います。
DVDと違うのはカサロヴァの衣装。DVDでは花柄の衣装でしたが、今夜は黒い絵柄のない衣装。
舞台と合いまって、シンプルな衣装もいいのではないでしょうか。

1回休憩をはさみ、緊張感を保ったまま、フィナーレへ。
2人の愛憎劇はすさまじく、そのまま、カルメンの死で幕。
いやあ、素晴らしい!!
こんなに見飽きたようなオペラでもここまでやれるとは驚きでした。
最高の歌劇「カルメン」、最高のカルメンを演じたカサロヴァ。まったく脱帽です!
いままではあまり好みでなかったカサロヴァの魅力を初体験した日にもなりました。
また、ジョルダーノの若手テノールとしてますます今後が楽しみです。
それにチューリッヒのオーケストラも結構やれるじゃないかと思いました。
指揮のハマーもうまくオーケストラと歌手をコントロール。今後が期待できる指揮者です。

なお、この日の終幕でのカルメンの死はビデオで見た演出に比べると、かなり、あっさりとした死に手直しされており、よりよい改善がなされていた印象です。こういう細かい演出上の改良を少しずつ加え、次第に高い芸術性を実現しているようです。そういうオペラハウスの不断の努力は評価したいと思います。

3日目にして、よい公演に出会え、大満足。
でも、聴衆の反応は疑問あり。saraiの感覚とかなり違っていたことを指摘しておきます。
昨日同様、バカンスシーズンで観光客が多く、地元の目の肥えたファンが少なかったんだろうと信じておきます。

3日間のチューリッヒ歌劇場を聴いた総括は、キャストがともかく粒揃いでよく、演出は公演によってばらつきがあるももの、それなりのレベル。
今後の最大の課題はオーケストラの底上げでしょうか。オーストリア、ドイツのオペラハウスのオーケストラのレベルに追い付いてもらいたいものです。
いずれにせよ、また、しばらくして、どう変化したか聴きたいオペラハウスです。

あと、夏の暑いシーズンは環境が悪く、観光客も多そうなので、それ以外のシーズンに聴いたほうがいいかなという印象です。
それでも最初の2日間に比べると、最後の3日目は少しエアコンが効いていて、まだしも暑さがしのげました。暑さ対策にオペラハウス管理者のかたも少しは気を使ってくれているのかなとも思います。今後ともオペラハウスの運営も細心の注意のもとに努力願えればと思います。


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