ヴェルター湖:マイアーニックのマーラーの作曲小屋での感動的な時間
マーラーの跡を訪ねる小旅行でヴェルター湖Wörtherseeを訪ねています。
クラーゲンフルトKlagenfurtに着き、マーラーの作曲小屋のあるマイアーニックMaierniggにタクシーで急行し、降車後、山道を歩いて、作曲小屋を目指しています。
路傍では夏の野草が小さな花を咲かせています。

今度は山道が下りになります。

小さな木橋を渡ります。もう、作曲小屋は近いでしょう。心がはやります。

少し開けた場所に出てきて、道の向こうに何か見えてきます。

マーラーの作曲小屋です。ここまで山道を歩くこと、10分ほどでした。

saraiはまずは小屋の前で写真を撮ります。

若い女性スタッフがその気配に気付いたようで、わざわざ外に出て出迎えてくれます。

女性スタッフに招き入れられるように小屋の中に足を踏み入れます。入り口の扉にはマーラーの有名な写真のポスターが張ってあります。

作曲小屋の中は誰も訪れている人はいません。日本から来たと言うと、遠くから来たのねと言われます。入場料は一人3ユーロです。

支払うと、説明は英語とドイツ語のどちらがいいのって訊かれます。もちろん、英語と応えると、立派な英語の資料を手渡されます。

資料の中心は4ページにわたる、マーラーがこのマイアーニックで作曲した作品の説明です。

小屋の入り口の扉に張ってあったマーラーの写真も資料の1枚です。

写真の裏にはマーラーの年表が書かれています。

この資料を渡された上で、分かりやすい英語で詳細な説明が始まります。ちょうどCDでマーラーの音楽が流れているので、この曲は何?って訊くと、バースタイン指揮ニューヨーク・フィルの演奏でマーラーの交響曲第6番でした。熟知している筈の曲ですが、とっさには分かりませんね。もちろん、この小屋で作曲された作品です。そのマーラーの音楽をバックに彼女のマーラーストーリーは続きます。もちろん、このマイアーニック時代の話が中心ですが、その時代のしめくくりは娘のアンナ・マリアの死とその思い出の辛さから、マーラーはもう2度とこの地を踏むことはなかったという悲しい話です。心なしか、説明する彼女も悲しそうでした。その後のマーラーが死に至るまでの話までしてくれました。もちろん、ほとんどは知っている話ではありますが、マーラーが作曲家として大成した、この作曲小屋で聞くと、なんだか、感慨深く感じます。
この作曲小屋はアッター湖Atterseeの作曲小屋に比べると広くて立派な作曲小屋です。

ここに作曲用のグランドピアノを運び込んでいたそうです。壁には金庫まで備え付けられていましたが、これは火事への対策だそうです。大切な作曲中の楽譜が焼けては困りますからね。

マーラーの創作活動には、こういう自然の中にいることが必須だったようです。ハイキング、湖でのボート遊び、登山(山を越えて、スロヴェニアまで遠征したそうです)など、自然の中から創作の素材を得ていたようです。いつもかかさずノートブックを持って歩いていたそうです。一通りの話が終わったところで、彼女にアダージェットを流してくれるようにお願いします。バーンスタインのニューヨーク・フィルとの交響曲全集があるのが分かっていたのでお願いしたんです。彼女は即座にアルマとの思い出の曲ねって、反応してくれました。彼女もマーラーについてはなかなか分かっているようです。ちなみにここでマーラーが作曲したのは、交響曲第4番~第8番、リュッケルト歌曲集、亡き子をしのぶ歌です。この地を去った後、自分の死期を悟り、作曲したのはわずかに3曲。大地、すなわち、人生との告別を込めた不朽の名作群、大地の歌、交響曲第9番、交響曲第10番(未完)です。
椅子に腰かけて、ボリュームを上げてもらって、3人(sarai、彼女、配偶者)で静かに美しいアダージェット(交響曲第5番第4楽章)に耳を傾けます。アルマへの思いが詰まった音楽が、作曲された場所で流れます。saraiはただただ深く感動するのみです。このバーンスタインの演奏はマーラーの音楽がブームになった端緒とも言えるものです。久しぶりに聴きましたが、とても素晴らしいです。演奏が終わっても、しばらくはみんな、沈黙して、saraiが音楽の余韻に浸る時間を与えてくれました。この静かな時間こそ、マーラーの音楽には一番必要なものです。深い感銘を受けて、最高の時間を持てました。こんな幸せはありません。ふと、脳裏にヴィスコンティの名作≪ヴェニスに死す≫の1シーンがよぎります。老作曲家アッシェンバッハ(マーラーがモデル)が妻と娘とヴィラで幸せに過ごしたシーン、娘が亡くなり棺に納めるシーン。これらは映画ではアッシェンバッハが過去を回想するフラッシュバックになっていますが、これはまさにこのマイアーニックの作曲小屋での出来事ですね。saraiがこの映画を見たときにはマイアーニックの作曲小屋の存在など知りませんでしたが、今、急に脳裏を横切りました。もう一度、あのヴィスコンティの名作を見たくなりました。
しばし、作曲小屋の中を見て歩きます。
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