《ウェルテル》カサロヴァ、テジエ@ウィーン国立歌劇場 2012.4.17
この日の公演では、全編流れるマスネの美しい音楽がウィーン国立歌劇場管弦楽団によって、実に綺麗な響きで演奏されました。特に高音弦と木管の奏でる美しい調べには、茫然とするばかりです。室内オーケストラのような一体感のある整ったアンサンブルには驚嘆します。生でこのオーケストラの響きを聴くだけでも、ここへくる価値があります。カサロヴァはこの役をどんなドスのきいた声で歌うにかと思っていたら、さにあらず、抑えた美しい声で悲しく優しい役柄を歌い切りました。時折、張り上げる劇的な表現にも心を打たれます。静かな表現でも声がよく通っており、生で聴くカサロヴァの素晴らしさを再認識させられました。姿形や若さではガランチャに及ばないわけですが、音楽的な表現では、拮抗しているという感じです。来年、4月はこのウィーン国立歌劇場でガランチャが《ウェルテル》を歌う予定なので、是非、聴き比べてみたい思いです。
バリトンのテジエですが、やはり、いつも彼らしく、少しクールで冷たい感じですが、声の響きは大変素晴らしい。素晴らしくて、堂々としているところが、このナイーブなウェルテル役とのギャップを感じてしまいます。どうしてもテノールのほうが愛の情熱に打ち震える青年の心にあいそうです。それでも、バリトンでも、もっと線の細い表現ならば、それなりに死ぬほど女性を恋い焦がれる心情にあったかもしれません。辛目の言い方になりましたが、さすがに素晴らしいバリトンで第3幕、第4幕のリリカルな歌唱も巧みに歌い、聴衆の心を揺さぶってはくれました。
今夜のキャストは以下です。
指揮:ミカエル・ギュットラー
演出:アンドレイ・セルバン
管弦楽:ウィーン国立歌劇場管弦楽団
ウェルテル:ルドヴィク・テジエ
アルベール:ター=ヨーン・ヤン
大法官:アンドレアス・ヘルル
シャルロッテ:ヴェッセリーナ・カサロヴァ
ソフィー:ダニエラ・ファリー
シュミット:ペーター・イェロシッツ
ヨハン:ジェイムズ・ロザー
特に続けて演奏される第3幕~第4幕には、心を打たれました。オーケストラの素晴らしさはもちろんですが、カサロヴァの円熟した歌唱力によって、とても感動しました。バリトンのテジエもオシアンの歌ではさすがに聴かせてくれました。フィナーレでは思わず、胸にジーンとくるものがありました。こういう1流の布陣で聴くオペラは生の迫力で素晴らしいです。やはり、オペラを生で聴くのは最高です。
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