FC2ブログ
 
  

インティメットな表現の極み:クァルテット・ベルリン=トウキョウ@鶴見サルビアホール 2019.2.7

クァルテット・ベルリン=トウキョウの演奏を聴くのはちょうど1年前にこのホールで聴いて以来、2度目です。ヴィオラが前回のケフィン・トライバーからグレゴール・フラーバルに代わっています。元々は日本人奏者だったようです。残りの3人は創設メンバーです。

前回はハイドン、バルトーク、ベートーヴェンでしたが、いずれも素晴らしい演奏で俄かファンになっていました。ですから、今日も大変、期待していました。その期待は見事に報われ、さらに期待以上のものでした。俄かファンから、本格ファンに昇格です。

そもそも、プログラムがいいですね。バッハの傑作に始まり、ベートーヴェンの中期の名作、そして、シューベルトの最後の弦楽四重奏曲で締める。共通したテーマはインティメットな名作で揃えたということで、演奏もそれにふさわしいものでした。

前半の冒頭のバッハのフーガの技法の最後の曲、コントラブンクトゥスXIVは未完の4重フーガです。曲の前半はフーガではありますが、4人の奏者が重なって演奏するとコラールの趣きがあって、心に響きます。うっとりと聴いていると、後半は至高のフーガが始まります。こうして、4本の弦楽器で4声を響かせるとフーガの極みが感じられます。クァルテット・ベルリン=トウキョウの演奏は見事としか言えません。曲の頂点で突如、音が断ち切れます。無残ではありますが、未完の美も感じます。そして、そのまま、コラール「我が心の切なる願い」が静かに始まります。まるで未完のフーガの技法を追悼するがごとく、あの優しい旋律が流れます。マタイ受難曲で受難コラールとして、何度も心を慰撫してくれる最高の旋律です。しかし、このコラールはやはり、合唱で聴くほうが好ましく思えます。クァルテット・ベルリン=トウキョウも美しい演奏なんですが、人間の声を超えるものはありません。全体としては素晴らしいバッハでした。その演奏にふさわしく、そっと拍手を送りました。

前半最後はベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第10番「ハープ」です。それぞれの楽章にふさわしい表現の演奏に納得です。第1楽章は精妙な序奏に続き、明朗闊達な演奏。第2楽章はまさに今日のテーマ、インティメットな表現が心に沁みます。第3楽章も素晴らしい響きで、第4楽章に続きます。第4楽章は多様な表現で考え込まされます。ベートーヴェン自身もこの終楽章でどう締めくくるか、考え込みながらの作曲だったのではないかとsaraiは思っていますが、クァルテット・ベルリン=トウキョウの演奏もそれをそのまま表現するかの如くです。結局、この曲はこれでは終止しないで、後期の作品につながっていくように感じます。であるとすると、クァルテット・ベルリン=トウキョウの次回のコンサートはベートーヴェンの後期の曲のどれかということになりますね。

後半のシューベルトの弦楽四重奏曲 第15番は圧巻の演奏でした。大曲ですが、細部の隅々までじっくりと聴かせてもらいました。パーフェクト!という賛辞を送りましょう。第1楽章と第2楽章は最長であるだけに聴き応え十分でした。聴けば聴くほど、シューベルトの天才ぶりに驚嘆します。晩年に向かうシューベルトの充実ぶりが横溢しています。シューベルトの作品が素晴らしいのか、演奏したクァルテット・ベルリン=トウキョウの表現が素晴らしいのか・・・。まあ、どっちでもいいでしょう。大満足の演奏でした。でも、シューベルトの弦楽四重奏曲がこの曲で最後になったのはいかにも惜しい・・・あと、2曲ほど、遺作のピアノ・ソナタ3曲の後で書いて欲しかったものです。

今日も室内楽を聴く喜びを味わわせてもらいました。クァルテット・ベルリン=トウキョウに感謝です。

今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:クァルテット・ベルリン=トウキョウ
   守屋剛志(vn) モティ・パヴロフ(vn) グレゴール・フラーバル(va) 松本瑠衣子(vc)

   J.S.バッハ:フーガの技法 BWV1080 ~ コントラブンクトゥスXIV
         コラール「我が心の切なる願い」BWV.727
  ベートーヴェン: 弦楽四重奏曲 第10番 変ホ長調 Op.74「ハープ」

   《休憩》

  シューベルト:弦楽四重奏曲 第15番 ト長調 D.887

   《アンコール》
    ハイドン:弦楽四重奏曲第80番 変ホ長調 Hob.III:80 Op.76-6 より、第3楽章 Menuet:presto
    クルターク:オフィチウム・ブレーベ - アンドレア・セルヴァーンスキを追悼して Officium Breve In Memoriam Andreae Szervánszky Op.28 より、最終楽章

最後に予習について触れておきます。
1曲目のJ.S.バッハのフーガの技法 BWV1080は以下のCDを聴きました。

 エマーソン・カルテット 2003年録音 ニューヨーク

完璧な技術に裏打ちされた名演です。バッハの傑作を余すところなく表現しています。


2曲目のバッハのコラール「我が心の切なる願い」は以下のオルガン演奏で聴きました。

 ヘルムート・ヴァルヒャ 1970年9月 新サンピエール教会(サン・ピエール・ル・ジューヌ教会)、ストラスブール ジルバーマンのオルガン

意外にあっさりした演奏ですが、コラールはやはり心に沁みます。


3曲目のベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第10番「ハープ」は予習は今更ですが、以下のCDを聴きました。

 ヴェラー弦楽四重奏団 1964年 ウィーン

前から聴こうと思っていたヴェラー弦楽四重奏団の演奏を聴いてみました。ヴェラー弦楽四重奏団はウィーン・フィルハーモニーのコンサートマスターであったヴァルター・ヴェラーが中心となって、1957年にウィーン・フィルの団員によって組織されましたが、わずか10年ほどで解散してしまいました。いやはや、じっくりと聴き込むとぐっと惹き付けられる名演です。とりわけ、第2楽章の美しさは格別です。


4曲目のシューベルトの弦楽四重奏曲 第15番は以下のCDを聴きました。

 アマデウス弦楽四重奏団 1965年 ハノーファー

期待していたほどの演奏ではありませんが、水準以上の演奏ではあります。



↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!



関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

コメントの投稿

非公開コメント

人気ランキング投票、よろしくね
ページ移動
プロフィール

sarai

Author:sarai
オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

来訪者カウンター
CalendArchive
最新記事
カテゴリ
指揮者

ソプラノ

ピアニスト

ヴァイオリン

室内楽

演奏団体

リンク
Comment Balloon

ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai

まさにマーラー6番な状況です笑

04/11 17:51 kico

お互い、残念でしたね。今年でヨーロッパ遠征を終わりにする予定でしたが、悲劇的な状況になりました。天はまだ我に旅を続けよというご託宣を与えたのでしょうか。1年延期

04/11 03:13 sarai

以前にもコメントさせていただいた者です。来ましたね、楽友協会からのメール。私たちはとりあえず1年延期としましたが、どうでしょうね。困っている人が多い中贅沢な悩み

04/11 00:33 kico

お返事ありがとうございます。
本当に!私もレイルジェットや美術館の手配もしているので、祈るような気持ちです。

03/10 19:06 kico
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR