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若きブラームスの狂奔するロマン クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル@横浜みなとみらいホール 2019.3.16

何せ、このリサイタルのチケットは曲目未定で購入したものです。クリスチャン・ツィメルマンなら、何を弾かせてもきっと満足させてくれるだろうと思った由。そして、その通り、素晴らしい演奏でした。悔しかったのはほかのコンサートホールのリサイタルも同じ曲目だろうとにらんでこのみなとみらいホールだけのチケットを購入したら、何と2種類のプログラムになったことです。ほかも聴きたかった! もっとも、ショパンのスケルツォ全4曲は共通プログラムでブラームスのピアノ・ソナタ第3番が聴けないだけですが、やはり、そのブラームスも気になります。

実際、今日はブラームスのピアノ・ソナタ第2番が素晴らしかったんです。ブラームスの若い頃の作品であまり演奏機会はありませんが、名曲であることを実感させてくれるような熱い演奏でした。以前聴いたヤンソンス&バイエルン放送交響楽団とのブラームスのピアノ協奏曲第1番の演奏にも匹敵するような内容でした。若いブラームスのロマンの奔流を感じさせてくれるような燃え上がる演奏でした。このピアノ・ソナタ第2番は番号こそ第2番ですが、これは楽譜の出版の順番であって、実際は最初に書かれた作品です。第1番のソナタより以前の、1852年11月にハンブルクで完成された作品で、ブラームスが19歳のときの作品です。この翌年の1853年にブラームスはデュッセルドルフのシューマン夫妻のもとを訪れます。そして、ロベルト・シューマンに聴かせたピアノ作品はこの年に作曲した第1番のソナタです。演奏の途中で中断させて、クララを呼びにいったほどの気に入りようで、結局、ブラームスはシューマン宅にに1か月も居候することになります。ですから、多分、この第2番のソナタも聴かせたんでしょう。実際、第2番のソナタは1954年に改訂後、クララ・シューマンに献呈することになります。こういう熱情的なロマンはシューマンにはないので、シューマンも感じ入るところが多かったのではないでしょうか。もちろん、ブラームスの晩年の渋くて精神性の深いピアノ作品群は最高に好きですが、この若いころの作品にも目を開かせられました。あえて、晩年の作品ではなく、この最初のピアノ・ソナタをプログラムに入れたツィメルマンの思いを汲み取りました。

ショパンのスケルツォもブラームスに負けずに熱いロマンが迸りますが、ブラームスを聴いた後では、ショパンのお洒落で完成度の高いスケルツォよりもドイツ的なブラームスの武骨さのほうに心が傾きます。無論、ツィメルマンの演奏は素晴らしかったんですけどね。ショパンのスケルツォ全曲をこのレベルで弾けるのは、やはり、ショパンの同郷のツィメルマンならではのことでしょう。迫力もあり、抒情も極まる名演でした。

いつものようにアンコールはなしです。

今日のプログラムは以下です。

  ピアノ:クリスチャン・ツィメルマン

  ショパン:4つのマズルカ Op. 24
   第14番 ト短調 Op. 24-1
   第15番 ハ長調 Op. 24-2
   第16番 変イ長調 Op. 24-3
   第17番 変ロ短調 Op. 24-4

  ブラームス:ピアノ・ソナタ 第2番 嬰へ短調 Op. 2

   《休憩》

  ショパン:スケルツォ全4曲
   第1番 ロ短調 op.20
   第2番 変ロ短調 op.31
   第3番 嬰ハ短調 op.39
   第4番 ホ長調 op.54

   《アンコール》

  なし


最後に予習したCDをまとめておきます。

ショパンの4つのマズルカ Op. 24は以下のCDを聴きました。

 ジャン=マルク・ルイサダ、1985年 ワルシャワ 第11回ショパンコンクール
 サンソン・フランソワ、1956年2月/3月 パリ、サル・ドゥ・ラ・ミュチュアリテ

ジャン=マルク・ルイサダはこの1985年の第11回ショパンコンクールで5位。きっと不本意な結果だったでしょう。この素晴らしい演奏を聴けば分かります。日本の小山実稚恵が4位、そして、優勝はブーニンでした。ルイサダはこの後、1990年~1991年、2008年の2回、マズルカ全曲を録音しています。マズルカと言えば、ルイサダですね。
そして、やはり、ショパンと言えば、サンソン・フランソワ。まさに名人芸としか言えない素晴らしい演奏です。


ブラームスのピアノ・ソナタ 第2番は以下のCDを聴きました。

 ジュリアス・カッチェン、1963年9月 セッション録音 ロンドン デッカ第3スタジオ
 ペーター・レーゼル、1972年 セッション録音 ドイツ ドレスデン ルーカス教会
 クラウディオ・アラウ、1973年6月 セッション録音 ドイツ
 スヴャトスラフ・リヒテル、1986年5月27日 ライヴ録音 イタリア マントヴァ 
 クリスチャン・ツィメルマン、1979年6月 セッション録音 ミュンヘン ヘルクレスザール

ジュリアス・カッチェン、ペーター・レーゼル、クラウディオ・アラウの3人はいずれもブラームスを得意にしたピアニスト。究極の演奏を聴かせてくれます。とりわけ、アラウの美音といったら、その透明感に酔いしれます。しかし、1枚とるのなら、やはり、天才カッチェンを置いて、他はないでしょう。まさにパーフェクトでブラームスの真髄を聴かせてくれます。彼の弾くブラームスはどれも最高の演奏です。巨匠スヴャトスラフ・リヒテルも老境に至って、素晴らしいブラームスを残してくれました。この1986年のマントヴァのライヴの2年後にも、1988年6月19日のフランスのトゥールでのライヴを残してくれました。いずれもブラームス好きには必聴のものです。70代とは思えない素晴らしい響きの演奏です。肝心のクリスチャン・ツィメルマンのCDですが、これは彼が若い頃の演奏です。なかなか素晴らしいのですが、4人の巨匠には及びません。現在のクリスチャン・ツィメルマンが再録音すれば、素晴らしいCDになりそうです。


ショパンのスケルツォ集は以下のCDを聴きました。

 シプリアン・カツァリス、1984年1月 セッション録音 テルデック・スタジオ、ベルリン

これはとても素晴らしい演奏です。これを聴けば、もう、ほかのCDを聴く気になりません。迸る情熱、ロマンティックな抒情、これ以上の演奏はないでしょう。



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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai

まさにマーラー6番な状況です笑

04/11 17:51 kico

お互い、残念でしたね。今年でヨーロッパ遠征を終わりにする予定でしたが、悲劇的な状況になりました。天はまだ我に旅を続けよというご託宣を与えたのでしょうか。1年延期

04/11 03:13 sarai

以前にもコメントさせていただいた者です。来ましたね、楽友協会からのメール。私たちはとりあえず1年延期としましたが、どうでしょうね。困っている人が多い中贅沢な悩み

04/11 00:33 kico

お返事ありがとうございます。
本当に!私もレイルジェットや美術館の手配もしているので、祈るような気持ちです。

03/10 19:06 kico
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