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これぞ、ベートーヴェンの最高傑作Op.131:関西弦楽四重奏団@鶴見サルビアホール 2019.4.15

鶴見サルビアホールで聴く弦楽四重奏シリーズでは毎回、発見があります。これも運営している平井さんのご努力の賜物でしょう。
今日は正直言って、あまり期待していませんでした。だって、関西弦楽四重奏団って、いかにもネーミングが・・・。しかし、聴いてみないと分からないものです。前半のベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第16番 ヘ長調 Op.135はいかにも無理のない演奏でとても好感が持てます。しかし、もうちょっと頑張ってみてもいいんじゃないという感覚もあり、8割くらいの満足度。第1楽章は美しくて魅力的な演奏でしたが、第3楽章以降が満足しつつも、若干の退屈感もあり、微妙なところだったんです。そうそう、パーフェクトに近い演奏でありながらも優等生過ぎる演奏と言えばいいのでしょうか。チェロがとても素晴らしく、ヴィオラもヴァイオリンも美しい響き。日本人の弦のレベルの高さを感じさせる演奏です。それにこのよく響く鶴見サルビアホールでは、彼らのサロン的とも思える無理のない演奏が活きてくるような気もします。もっと大きなホールでは彼らの繊細な演奏のよさが伝わらないかもしれません。

後半はベートーヴェンの弦楽四重奏曲の最高峰、もっと言えば、ベートーヴェンの音楽の最高峰とも思える弦楽四重奏曲 第14番 嬰ハ短調 Op.131です。最近は大フーガ付きの第13番のほうに心が傾くことも多いのですが、今日ばかりは関西弦楽四重奏団の演奏を聴いて、これこそ、ベートーヴェンの音楽の最高峰であることを再確認しました。第1楽章の冒頭からぐっと心を惹き付けられます。もっとも、演奏者も緊張していたのか、出だしの第1ヴァイオリンの響きは万全でなく、少しかすれ気味。そこを除けば、あっと言う間に第1楽章が終わってしまった感覚になるほど、魅惑に満ちた演奏です。4人の奏者のバランスがよく、音の響き具合が見事で、うっとりと聴き入ります。《長い旅の果て》という単語が頭に浮かび上がります。ベートーヴェンが生涯をかけて追い求めてきた音楽・・・それが最後に結実したような最終到達点。傑作の森と形容された中期の勢いのある輝かしい音楽を経て、苦悩の果てにベートーヴェンがたどり着いた地平は哀愁と言うか、諦念と言うか、とても不思議に安らぐ美的音楽空間です。それを若い彼らは力むことなく、ある意味、素直に表現していきます。第2楽章はもう少し勢いのある音楽に変わりますが、無理に盛り上がることはなく、美しいアンサンブルの響きが続きます。そして、長大な第4楽章に入ります。ベートーヴェンが心の中を吐露するような音楽がインティメットな表現で演奏されていきます。ここに至って、自分が感じているのは耳で聴いている美しい響きの音楽か、あるいは心の移ろいとも思える幻影のような感覚なのか、判別しがたい状態に陥ります。時として、音が遠のいて、茫洋とした感覚になります。音の響きが契機になって、ベートーヴェンの心の声と対話しているかのようです。しかし、それも波があって、時折、音楽の響きに手繰り寄せられたりもします。音楽と心の対話が波のように寄せたり、引いたりします。第4楽章の終盤は音楽が高潮していき、また、純粋な音楽の世界に回帰していきます。第5楽章は高潮した音楽が続きます。第6楽章ではまた、抒情に満ちた世界を味わいます。心の安寧を感じます。一転して、推進力のある音楽に変わります。最後の第7楽章です。心に蔓延する悩みや苦しみからの解放。心が浮き立つというのではなく、人は最後まで生き抜いていくという決意、心構えを芯にすえた音楽、あるいはメッセージです。何故か、底面に哀しみを秘めていますが、英雄的とも思える前進の音楽が基調にあります。もちろん、中期の祭典のような推進力ではなく、人生の最後に残る気力を奮い立たせるような推進力です。音楽がどんどん高潮していき、saraiも強い感銘を感じつつ、フィナーレ。この終楽章こそ、ベートーヴェンが作り上げてきた音楽の総決算があったのだと悟ります。いやはや、関西弦楽四重奏団は見事にベートーヴェンの最高峰の音楽を演奏・表現してくれました。まさに会心の演奏でした。

彼らの演奏でベートーヴェンの後期をすべて聴いてみたいものです。特に第13番(大フーガ付き)と第15番。 → 平井さん


今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:関西弦楽四重奏団
    林 七奈vn  田村 安祐美vn  小峰 航一va  上森 祥平vc


  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第16番 ヘ長調 Op.135 (第1ヴァイオリンは林 七奈)

   《休憩》

  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第14番 嬰ハ短調 Op.131 (第1ヴァイオリンは田村 安祐美)

   《アンコール》
    なし

最後に予習について触れておきます。

2曲とも以下のCDを聴きました。

 ゲヴァントハウス弦楽四重奏団
   第16番:1998年2月録音 セッション録音
   第14番:1996年5月-1997年1月録音 セッション録音
 東京クヮルテット(第1ヴァイオリン:ピーター・ウンジャン) 1989~1992年録音 プリストン大学リチャードソン・ホール セッション録音
 東京クヮルテット(第1ヴァイオリン:マーティン・ビーヴァー)
   第16番:2007年11月録音 ニューヨーク、アカデミー・オブ・アーツ&レターズ セッション録音
   第14番:2008年5月録音 バード大学フィッシャー・センター・フォー・ザ・パフォーマンツ セッション録音

ゲヴァントハウス弦楽四重奏団はとても完成度の高い演奏ですが、とりわけ、第16番の演奏が素晴らしいです。
東京クヮルテットは第1ヴァイオリンがピーター・ウンジャンの第3期メンバーによる演奏も素晴らしいのですが、第1ヴァイオリンがマーティン・ビーヴァーの第7期メンバー(最終メンバー)による演奏は格別に素晴らしく、特に第14番はsaraiが最高だと思っているブッシュ弦楽四重奏団に迫るほどの演奏ですっかり聴き惚れてしまいました。第16番もこの最終メンバーによる演奏が素晴らしい出来です。今回の予習で東京クヮルテットの素晴らしさを知ることができて、大きな収穫になりました。後期の弦楽四重奏曲をすべて聴いてみましょう。やはり、自分の耳で聴いてみないと分からないものです。



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