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聖金曜日の感動のマタイ受難曲、再び バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル 2019.4.19

いくら聴いても奥が深いマタイ受難曲。なかなか分かったとは言えませんが、今日の素晴らしい演奏で少し分かりかけてきたような気がします。ブルーノ・ワルターでさえ、このマタイ受難曲は演奏が難しいと言ったそうですが、聴く側も素人のsaraiには荷が重い作品です。でも、演奏が素晴らしければ、その本質がつかみやすいことは事実です。よく、このマタイ受難曲は西欧音楽の最高峰だと言われます。その真贋は判断が難しいのですが、これだけは言えます。人生の最後で1曲しか聴けないとしたら、躊躇なくマタイ受難曲を選ぶでしょう。そう感じさせるような最高の演奏でした。(でも、人生の最後にはマーラーの9番も聴きたいと思う意思薄弱なsaraiです。)

何が素晴らしかったと言えば、あまりに聴きどころが多くて、とても書き切れません。ぐっと絞って書いてみましょう。(以下、カッコ内の番号は旧全集の番号)

まずは5回登場する受難コラールを挙げないといけないでしょう。とりわけ、3回目に登場した第44曲(第53曲) コラール「汝の行くべき道と」を聴いて、強い感動の念を覚えました。総督ピラトがイエスを訊問しても、イエスが口を閉ざしたままのとき、イエスは自分の運命を神を託したこと、すなわち、受難の道を進むことをこのコラールは優しく慰めます。さらに第54曲(第63曲)のコラール「おお、血と涙にまみれし御頭」はこのマタイ受難曲の中心の位置を占める重要なものです。このコラールの前半はあえて強く歌い、後半の清澄な歌唱と対比を作り出します。この清澄なコラールを聴いて感銘を受けない人はいないでしょう。バッハ・コレギウム・ジャパン(以下、BCJと略します)の合唱団の精華とも言える極上の美しい歌唱です。そして、最後の受難コラールはイエスが息絶えた直後に歌われます。第62曲(第72曲)の コラール「いつの日かわれ去り逝くとき」です。フリギア旋法で歌われるコラールは慰撫の念でそっと歌われます。それでいいのです。大袈裟にするものではないでしょう。極論すると、マタイ受難曲はこの受難コラールを中心にした数々のコラール群が素晴らしければ、それで満足です。十分に感動できます。BCJの素晴らしいオーケストラの名人たちとコーラスは今回も見事な演奏を聴かせてくれました。

そう、BCJのオーケストラの名人たちと言えば、名アリアと寄り添うオブリガートの演奏も素晴らしいです。ある意味、アリアの歌唱よりもオブリガートの演奏のほうが主役とも思えます。バッハも言葉で語り尽くせないものを楽器演奏に託したのではないかと思うほどに彼らの演奏は見事です。
まず、菅きよみのフラウト・トラヴェルソはいつも感銘を受けます。第49曲(第58曲)のアリアでは菅きよみのフラウト・トラヴェルソのソロが主導して、アウス・リーベAus Liebe、ヴィル・マイン・ハイラント・シュテルベンWill Mein Heiland Sterben(愛故にわが救い主は死にたまわんとす)とソプラノのキャロリン・サンプソンが歌い上げます。「アウス・リーベ」(愛故に)が幾度も繰り返されますが、それが実に感動的でした。それ以上に菅きよみのフラウト・トラヴェルソの朴訥とした響きは胸を打ちました。このアリアの後、少しの間があります。この間のいかに素晴らしかったか。さすがに鈴木雅明の指揮は見事です。
第39曲(第47曲)のアリアだけはなかなか素晴らしかったです。この曲は「マタイ受難曲」中、最高の名曲、いや、もう古今東西、名曲中の最高の名曲です。エルバルメ・ディッヒErbarme dich、マイン・ゴットMein Gott(憐れみたまえ、我が神よ)とアルト(カウンターテナー)のダミアン・ギヨンが清澄に歌い上げてくれました。それ以上に素晴らしかったのは寺神戸 亮のオブリガート・ヴァイオリンの演奏。さすがです。
第52曲(第61曲)のアリアは第39曲のアリアに次ぐ名曲「わが頬の涙」ですが、アルト(カウンターテナー)のクリント・ファン・デア・リンデが熱唱しました。ケンネン・トレーネンKönnen Tränen、マイナー・ヴァンゲンmeiner Wangenという歌詞が繰り返し、歌われ、ここでも感銘を受けます。若松夏美の独奏ヴァイオリンも素晴らしい響きで、寺神戸 亮のオブリガート・ヴァイオリン以上の名演奏でした。
三宮正満のオーボエも素晴らしい響き。ヴィオラ・ダ・ガンバのジェローム・アンタイは第57曲(第66曲)の アリア「来たれ、甘き十字架」で見事な演奏を聴かせてくれました。後ろのほうで誰か素晴らしいチェロを弾いているなと思っていたら(saraiの席からはお顔が見えませんでした)、何と巨匠の鈴木秀美でした。BCJで彼が演奏するのを聴いたのはこれが初めてのような気がします。
彼ら、素晴らしい名人たちの饗宴、saraiにとってはスーパースター軍団みたいなものです。それを取り仕切るのが御大、鈴木雅明。今日はとても熱い指揮でした。
そうそう、新しいオルガンはもちろん、鈴木優人。盤石の体制です。

独唱にも触れておきましょう。何と言っても、エヴァンゲリストの櫻田亮の素晴らしい美声と節度のある表現。最高のエヴァンゲリストです。第38曲(第46曲)のペテロの否みで、最後のビターリッヒBitterlichを見事に歌い上げ、大きな感動を覚えました。その後がさきほどの第49曲(第58曲)のアリアでの菅きよみのフラウト・トラヴェルソですから、このあたりは痺れます。
イエスを歌ったクリスティアン・イムラーも威厳のある堂々とした歌唱で感銘を覚えました。

という具合に聴き所満載でとてもすべてを書き切れません。感想はこのくらいにしておきましょう。

今日は聖金曜日ですが、この日は世界中でこのマタイ受難曲が演奏されます。しかし、最初に聖金曜日の夜を迎えるのは我が日本ですから、今日も世界に先駆けてのマタイ受難曲の演奏になりますね。これを皮切りにヨーロッパ、アメリカでも一斉にこのマタイ受難曲が演奏されると想像すると感無量です。このマタイ受難曲が世界に愛と平和をもたらすことを願わずにはいられません。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:鈴木雅明
  福音史家/テノール: 櫻田亮
  イエス/バス: クリスティアン・イムラー
  ソプラノ: キャロリン・サンプソン、松井 亜希
  アルト: ダミアン・ギヨン、クリント・ファン・デア・リンデ
  テノール:ザッカリー・ワイルダー
  バス:加耒 徹
  合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン
   コンサート・マスター:寺神戸 亮、若松夏美(第2オーケストラ)
   フラウト・トラヴェルソ:菅きよみ
   オーボエ/オーボエダモーレ/オーボエ ダ カッチャ:三宮正満
   チェロ:鈴木秀美
   ヴィオラ・ダ・ガンバ:ジェローム・アンタイ
   オルガン:鈴木優人

  J.S.バッハ:マタイ受難曲BWV244

   1部と2部の間に《休憩》

最後に予習ですが、鈴木雅明指揮のBCJの抜粋盤を聴きました。素晴らしい演奏です。そのうちに全曲盤を聴きましょう。来年には今日のキャストでの新録音盤が出るんですね。楽しみです。



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ジャンル : 音楽

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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai

まさにマーラー6番な状況です笑

04/11 17:51 kico

お互い、残念でしたね。今年でヨーロッパ遠征を終わりにする予定でしたが、悲劇的な状況になりました。天はまだ我に旅を続けよというご託宣を与えたのでしょうか。1年延期

04/11 03:13 sarai

以前にもコメントさせていただいた者です。来ましたね、楽友協会からのメール。私たちはとりあえず1年延期としましたが、どうでしょうね。困っている人が多い中贅沢な悩み

04/11 00:33 kico

お返事ありがとうございます。
本当に!私もレイルジェットや美術館の手配もしているので、祈るような気持ちです。

03/10 19:06 kico
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