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ターナーの絵は未完成なの?・・・ターナー展@東京都美術館 2013.10.8~12.18

昨日は、室内楽のコンサート:モーツァルトとブラームスのクラリネット五重奏曲をポール・メイエとアルティ弦楽四重奏団の演奏で聴きました。そのコンサートを聴く前に、東京都美術館で開催されているターナー展を見てきました。来週でターナー展が終わることに急に気が付いて、あわてて、駆け付けた次第です。ターナーの作品はそのほとんどがロンドンに残っていて、中でもテイト美術館に膨大なコレクションがあります。ターナーを見たければ、ロンドンに行くのが早道ですが、ある理由でsaraiはロンドン行を回避しています。当ブログの古くからの読者のかたはその事情はご存じでしょう(笑い)。まあ、そういうわけで、ターナーの作品に注目しているsaraiとしては、日本で見ることのできるターナーの作品展は見逃せないわけです。ましてや、総本山とも言えるテイト美術館からターナー作品が到来するとなると、ますます価値が高まります。

東京都美術館と言えば、エル・グレコ展を見て以来です。あの美術展も素晴らしかったです。ただ、このターナー展に関しては、事前に見たテレビの紹介番組で解説の女性研究者がターナーの作品について気になるコメントを言っていたので、若干、不安を抱きながらの訪問でした。そのコメントは、ターナー作品の到達点であると信じていた茫洋とした光と空気の表現は、実は単に未完成作品ゆえの描きこみ不足という意味の内容でした。テレビを通して聴いたsaraiの思い違いか、あるいはそれが真実なのか、不安と期待の両方を持って、ターナー展に臨みました。

これがターナー展のポスター。大回顧展と銘打っていますから、彼の生涯にわたっての作品が紹介されるんでしょう。


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チケットを窓口で購入しますが、もう割引チケットなどある筈もなく、配偶者と二人分、一人1600円と大変に高額です。さらにいつも気にいらないのは、何故か、日本の美術館はクレジットカードが使えないこと。ヨーロッパの美術館では、ほとんどクレジットカードが使えます。これは是非、今後、改善してもらいたいものです。これが購入したチケットですが、ポスターとほぼ同じデザインです。


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では、saraiの気に入った作品をご紹介しましょう。

初期の作品からです。
これは《月光、ミルバンクより眺めた習作》です。1797年、ターナー22歳頃の作品です。晩年の作品の萌芽が見られる秀作です。月の光の美しさはどうでしょう。あと足りないものと言えば、空気感だけです。海の風景というのもお得意の題材です。


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画像はありませんが、水彩で描かれた《ノラム城、日の出:色彩の習作》を見て、あっと驚きました。これって、ターナー晩年の名作《ノラム城、日の出》とほぼ同じイメージです。これが1845年、ターナー70歳頃の名作です。


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この名作に先立って、50年ほど前の1797-8年、ターナー22歳頃の青年時代に既にほぼ同じものが描かれていたとは、凄い発見でした。思えば、淡い色彩で描かれた光と空気の油彩画は、水彩画で描かれたイメージをもとにしていたんですね。あのターナーの光と空気の表現は水彩画が原点だと、今回の美術展で初めて知りました。

次は戦時下の作品からです。戦争というのは、ヨーロッパ中を揺るがせたナポレオン戦争です。
これは《スピッドヘッド:ポーツマス港に入る拿捕された2隻のデンマーク船》です。1808年、ターナー33歳頃の作品です。それほど気に入ったわけではありませんが、軍船を多く描いた作品の一つで、手前のダイナミックな海の波の表現が迫力十分で印象的ではあります。


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次はイタリア訪問で描いた作品からです。ターナーは驚くほど、ヨーロッパ各地を旅して、それを絵に残しています。とりわけ、グランド・ツアーの訪問地として名高かったイタリアは繰り返し描かれています。
これは《レグルス》です。1828年、ターナー53歳頃の作品です。9年後の1837年にも補筆して、光をさらに強烈に描きました。レグルスというのは、敵に捕らわれた将軍の名前で、敵が残酷にも彼のまぶたを切り取って、陽光の下に引き出したため、将軍レグルスは一瞬のうちに失明したということです。レグルスが失明の瞬間に見たまばゆい光を描いたのが、この作品です。主役は光そのものですね。ターナーの凄い想像力に感嘆します。


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これは《チャイルド・ハロルドの巡礼―イタリア》です。1832年、ターナー57歳頃の作品です。『チャイルド・ハロルドの巡礼』は詩人バイロンが自身のグランド・ツアーをもとに書いた旅の物語でハロルド青年(少年?)の旅として書かれています。その後、最後の第4編では、バイロンとハロルドが一体化した形でイタリアについて、書いています。この作品はそれにインスピレーションを得た作品です。しかし、そんなことはどうでもよく、この絵を見た瞬間、あっと心の中で叫びました。ここに描かれている笠松って、あの夏目漱石が『坊ちゃん』で書いたいるターナー島の話を連想させます。漱石がロンドン留学中に見たターナー作品って、これじゃないかと思ったら、同じことを思う人もいるようで、絵の横の解説にそのことが触れてありました。これだったかも知れませんね。また、『坊ちゃん』を読み返してみようかな。


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これは《ヴェネツィア、嘆きの橋》です。1840年、ターナー65歳頃の作品です。これはさして、論ずるほどの作品には思えませんが、ターナーもヴェネツィア観光の目玉のようなものを描いているというだけのご紹介です。


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最後に晩年の名作群です。
これは《平和―水葬》です。1842年、ターナー67歳頃の作品です。画家デイヴィッド・ウィルキーは、中東旅行の帰途に船上で死去し、ジブラルタル沖で水葬されました。ターナーはこの画家への哀悼の気持ちを込めて、この作品を描きました。何と言っても、船の中央で炎の爆発のように見える輝かしい夕陽の素晴らしさが印象的です。


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これは《ウォータールー橋上流のテムズ川》です。1830-35年、ターナー55~60歳頃の作品です。テムズ川を描いていますが、主役は大気そのものです。風景を通して、大気、そして、光を描き込んだ傑作です。こういうターナーの作品なしに印象派のモネの存在はなかったでしょう。


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これは《湖に沈む夕陽》です。1840-45年、ターナー65~70歳頃の作品です。これは凄い! ずっと見惚れてしまいました。最後の最後に素晴らしい作品が展示されていました。具象画でありながら、物の形と言ったら、ポツンと点のように見える夕陽だけ。それなのに、心に訴えかけてくるものの大きさはどうでしょう。大変、感銘しました。この作品は専門家の間で、未完成作か完成作か、いまだに議論になっているそうですが、saraiにとってはそんなことはどうでもいいです。この絵が素晴らしいかどうか、そして、見る者に感銘を与えるかどうかが問題です。そして、その答えは自明でしょう。


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テレビの聴いた美術専門家のお話は理解できますが、それは美術を芸術として、感動の対象とする人にとっては、実に的外れなお話でしかありませんでした。やはり、ターナーの光と空気感の傑作群は、芸術を愛する人々に残された大切な宝物でした。

このターナー展は来週の水曜日(18日)までです。まだ、見ていない人は急いで駆け付けましょう。

おまけですが、このテイト美術館からは来年(1.25~4.6)、森アーツセンターギャラリーにラファエル前派の名作群が大挙して、やってきます。これまでも、たびたび、日本にやってきていますが、それだけ、日本でも人気が高いのでしょう。
これがそのパンフレットです。


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やはり、ロセッティは素晴らしいですね。ロセッティの作品が19点も来るそうです。それも名作揃い。
《ベアタ・ベアトリクス》です。妻リジーの死を描いた作品です。


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そして、《プロセルピナ》です。大傑作です。一度見たら、虜になってしまう魔力があります。モデルは愛人関係にあった親友ウィリアム・モリスの妻ジェインです。ファム・ファタールの代表のような女性ですね。


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もちろん、ラファエル前派と言えば、このミレイの《オフィーリア》も欠かせません。この作品もまたまた、来日です。


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配偶者はあきれて、また、同じ絵を見に行くのかって言いましたが、そんな言葉にはめげずにsaraiは行きますよ。ラファエル前派、特にロセッティは大好きですからね。


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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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えりちゃさん、お久しぶりです。saraiです。

なかなか、海外渡航の見通し、立ちませんね。来年あたりはどうでしょうね。長期戦覚悟で我慢するしかありませんね。

こちら

04/10 02:37 sarai

saraiさま、
お久しぶりです!
お元気にコンサートや旅行を楽しんでおられますね!
ブログ、楽しく拝見しています。おフランス、良いね😊
私は春だというのに、仕事と用事以

04/09 05:29 えりちや

気になってたずねても 
誰にも知らんと言われなんやろ
と思いつづけて居ました❗
写真みつけてこれだと思いました❕スッとしました
教えて下さって嬉しいです
ありがとうご

02/13 22:26 みーちゃん

みーちゃんさん、saraiです。

あの謎の建物は雄琴沖総合自動観測所という施設で琵琶湖の水質を測定しているそうです。

https://www.water.go.jp/kansai/biwako/html/repo

02/13 21:40 sarai

ずーと前にうきみどうに行きました
やはり、琵琶湖の真ん中の建物が何なのか気になったままです
分かりましたか
教えてください

02/13 20:54 みーちゃん

五十棲郁子さん、コメントありがとうございます。

水道水のこと、tap waterって言うんですね。知らなかった。単にwaterで通していました。ましてや、フランス語はほとんど

02/11 00:12 sarai

フランスも地方へ行くと英語が通じないでしょう。tap water ぐらいフランス語で言えないとね。

02/10 12:54 五十棲郁子
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